第9話 隠れ最強は戦闘狂と仲良くなる

 俺は赤黒い魔力を纏うサタンを見ながらドン引き。


 遂に本気モードに入りやがったぞ……このバカ、頭おかしいんじゃ———どう考えてもおかしいな。

 これだから戦闘狂とは戦いたく無いんだよ。


「あぁ……久し振りに苛つくぜ楽しくなってきたぜ……なぁ、クソジジイの契約者よぉ……?」

「バレてんのかよ……」


 俺は立て続けにバレていることに辟易しながら、更に魔力を雷電に変換して身体の強化率を上げる。

 幾ら憑依が元の50パーセントしか能力を使えないと言っても普通に強い。

 大悪魔の中でも『傲慢』に並んで戦闘能力が高いので、俺も本気で行かなければやられる。


「此処からは……俺の得意分野で戦うからな」

「好きにしろ」

「《雷轟》」


 俺は許可の言葉と同時に魔法を発動。

 雷鳴を轟かせる一条の雷が、刹那の内にサタンに直撃。

 爆発音と共に爆煙が上がり視界が塞がる。

 

「《迅雷》《雷槍》《電磁波》《落雷》」

 

 俺は魔力感知で奴の位置を特定すると、即座に複数の魔法を展開、即時発動。

 数多の姿をした雷が、焼き殺さんとサタンへ迫る。

 しかし———赤黒い魔力が爆煙を振り解いて俺の放った全ての魔法を掻き消した。


「ガハハハハッ!! 貴様強いな!」

「ノーダメージの奴に言われたくねぇよッ!」


 俺は牽制として低威力、速度重視の魔法を連発。

 しかし即座に対応したサタンは、赤黒い魔力を拳に纏って雷を殴り飛ばした。

 

「いやいやいやいや……」


 自然で1番攻撃力高いと言っても過言では無い雷を殴り飛ばすとか人間辞めてるじゃないか。


「くそ面倒だな……《雷装》《百雷》」


 俺は身体の周りを雷で覆った後、100の雷をサタン目掛けて乱れ撃つ。

 しかし、先程と同じ様に上空から降ってくる雷を器用に全て殴り飛ばすサタンは、更に楽しそうに笑った。


「ガハハハハッ!! 痛いぞ! 久し振りに痛い!」

「———ならもっと痛くしてやるよッ!!」

「———ぐ……!?」


 俺は雷に紛れてサタンに数メートルまで忍び寄ると、一気に雷速まで加速して飛び蹴りをお見舞いする。

 雷は初速からMAXスピードなので、こうした近距離の時ほどその真価を発揮するのだ。

 生物の限界を遥かに超えた速度で放たれた飛び蹴りをモロに食らったサタンはまるでスーパーボールの様に吹き飛ぶ。


 しかし此処で攻撃を止めてはならない。


「ふっ———はぁああああああ!!」


 軽く息を吐いて一条の雷となって空を駆ける。

 刹那の時を経て先回りすると、雷電を纏った拳を全力で振り抜いてサタンを上空に方向転換させる。

 辺りに何度も鳴り響く轟音。

 攻撃する度に衝撃波が発生して空間を揺らし、俺が通った後には雷雲が次々と発生して雷を降らす。

 

 さて———準備は整った。

  

 俺は再び空を蹴ってサタンの吹き飛ぶ場所に先回りすると、手に雷電を集結させて大きさ数十メートルにも及ぶ巨大な雷のハンマーを創造する。

 その巨大なハンマーは辺りの雷を吸収してより巨大に、より破壊性を高めて君臨する。


 俺は神のハンマーを振り被り———此方に高速で飛んでくるサタンを打ち抜いた。



「———《雷神の雷鎚トールハンマー》ッッ!!」



 瞬間———空一面を雷が埋め尽くし、その全てがサタン目掛けて降り注ぐ。

 轟音と雷鳴が幾重にも重なって辺りに響き渡り、ハンマーがサタンに当たった衝撃波が亜空間全体を揺らす。

 

 この魔法は前世の知識を頼りに爺さん監修の下、共同で作り上げた《神雷》をも超える威力を持った謂わば必殺技だ。

 ただ普通に使うにはあまりにも威力が高すぎたためボツとなった技でもある。

 

「ふぅ……やっと終わったか……」


 赤黒い魔力を霧散させて意識を失ったヴィルヘルムを見ながら、大きく息を吐いて全ての魔法を解いた。

 

『よくやったのう……結局儂の出る幕はなかった様じゃな』

「全部見てやがったのかよ……全く……性格の悪いジジイだな……」


 俺はそう毒付いていると———


「———シンッ!! お前、物凄く強いな! 人生で初めて負けたぞ!!」

「……っ、ヴィルヘルム……」


 ボロボロながら、物凄く満足した様子で笑うヴィルヘルムの姿があった。


 お前……復活早すぎるだろ……。

 原型留めているだけでも凄いのに、あれを食らってそんなピンピンしてるのは流石に人外過ぎないか?


「やった本人の俺が言うのも何だが……身体大丈夫なのか?」

「ガハハハハッ! 大丈夫だ! いつもよりは大分マシだぞ! 10本くらい骨は折れているがな!」

「何が大丈夫なんだよ!? 幾ら回復能力高い魔族でもそれは重傷だろ?」

「まぁ俺の身体はそこらの魔族とはレベルが違うんだよ!」


 そうだろうな。

 お前が魔族の中で通常だったらこの世界既に魔族に掌握されとるわな。


「あ、そうだ、これやるよ」


 浅ましいとは思うが、ヘラがいる手前、少しカッコ付けたかったので、エリクサーを渡す。  

 ヘラ用の20個、予備の10個は別に分けてあるのでこれは言えば、予備の予備的な物なので、1つ渡すくらいは特に問題ない。

 ヴィルヘルムは俺から貰った瓶を数秒間見つめた後で、大きく目を見開いた。


「こ、これは———エリクサーじゃないか!? 国一つ買えるくらいの代物を俺にくれるのか!?」

  

 どうやら戦闘狂のヴィルヘルムでもエリクサーの価値は知っているらしい。

 ただ、国一つ買えると言うのは流石に大袈裟過ぎるとは思うが。


「別にいいぞ。後3個までは誰にでも渡せる程度には持っているからな」


 俺がカッコつけて(まぁ事実なのだが)言うと、ヴィルヘルムが衝撃的な一言を発した。


「———ありがとうな、親友!!」

「お、おう……」


 …………俺はどうやらゲーム内1位の戦闘狂と親友になった様だ。

 

————————————————————————

 今日は1話でごめんなさい。

 普通に夏期講習がありました。

 明日もあるので2話は厳しいかもしれませんが、出来る限り頑張ります。


 現在、作者が力尽きるまで1日2話投稿をしています。

 なので、頑張って欲しい、ヘラ可愛いなど思って下されば、☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!

 作者の執筆の原動力となりますので! 

  

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