第10話 班員その3———狂人研究員

「———それで……一体これはどういう状況なのかな……?」


 アーサーが困惑した様子で、特に許可してないが、勝手に俺と肩を組んで笑うヴィルヘルムを見る。

 普段なら速攻で振り解くのだが……コイツは普通に大変で面倒なので放って敢えて放っている。

 その内止めるだろうという淡い期待を持ちながら。


「お前が親友の親友のアーサーか?」

「あ、うん、そうだよ。宜しくね」

「おう、よろしく! 親友の親友なら俺の親友だ! 俺のことは気軽にヴィルと呼んでくれ!」

「う、うん……こちらこそ宜しくね」


 完璧な友人キャラですら、脳筋キャラにはタジタジな様だ。

 そんなアーサーだったが、ヴィルに何やら耳元で話していたかと思うと、此方に足早にやって来た。


「どうし———」

「一体今度は何をしたんだい? あの懐きっぷりは幾ら何でもおかし過ぎるよ」

「ちょ、落ち着けって。俺だっていまだに困惑してんだから」


 珍しく本当に意味が分からないと言った表情で俺の身体をシェイクするアーサー。

 そんなアーサーに俺は死ぬほど分かり易く説明した。


「ヘラの代わりに戦って、勝って、エリクサー渡したら親友になった」

「うん、意味が分からないな。特にヘラ様の代わりっていう所とエリクサー渡したらの所だね。まずエリクサーを渡すなんて馬鹿なんじゃないのかい?」

「いや、だからな———」


 俺はどうして戦う事になったのか、という経緯と、なぜヴィルヘルムにエリクサーを渡す事になったのかという経緯を詳しく話す。

 するとやっと分かってくれたのか、大きく溜息を吐いた。


「なるほど……ね。本当に成り行きでこうなったわけなんだね……それはそれで凄いけど……。後、骨折程度にエリクサーを使う意味は未だに分からないかな」


 どうやらこの世界でのエリクサーの価値は俺が思っている以上に高いらしい。

 次からは迂闊に出さない様にするか。


「でも……彼を仲間に引き入れる事が出来たのは、僕達にとって物凄いアドバンテージになるね」

「ああ」


 アイツ自身のスペックは勿論、契約している憤怒の大悪魔であるサタンも頭おかしいくらい強いので、味方だと本当に心強い。

 ゲームでも3大最強キャラと言われるだけある。


 因みにゲームでの3大最強キャラは、覚醒したアリア、俺、ヴィルヘルム&サタンコンビだ。

 ただ、この世界のアリアはあまり強く無く、どちらかと言えばヘラの方が圧倒的に強くなっている気がするが。


 まぁヘラは最強なんでね。

 可愛くて健気で努力家で才能もあるヘラが3大最強キャラに入っていないのがおかしいんだよ。

 もうアリアとかいいからヘラにチェンジしろよな。


「そう言えば……」


 ふと、何かを思い出したかの様にアーサーが呟いた。


「1番の危険人物は何処に行ったのかな?」


 アーサーにそう言われて、俺は周りに視線を巡らせる。


 俺の周りにはアーサー、ヘラ、ミレイユ、ヴィルヘルム……おい、あのゴミ屑クルトは何処にいる?


「———チッ……アーサー、コイツらの事頼む。それと———ヴィルヘルム」

「おう、なんだ親友!」

「少しの間、アーサーと一緒にヘラ達を護っていてくれ」

「任せろ! 殺気だってくる奴をボコせばいいんだろう?」

「まぁその解釈で構わない。ただ殺すなよ」

「勿論だ!」


 俺はゴミ屑クルトが居るであろう場所へと足早に向かった。









「……相変わらず気持ち悪いくらいの防衛設備だな」


 俺がやって来たのは悪魔学園の本館にある研究室の一角だ。

 此処はクルトも在籍する研究部とかいう部活がある。

 部員はクルトがいるせいで3人程度と我が武術部並みに少ないが。


 そして俺は現在クルトの隠し研究室に続く階段がある壁を探し当てた所で、目の前に暗証番号と指紋認証の画面が表示されている。

 暗証番号は知っているが、流石に指紋までは変化させることは出来ないので……雷電流してぶっ壊してやった。

 これを機にバレて退学して仕舞えばいい。

 そうすればぶっ殺してやるから。


「さて……行くか」


 俺は此方に向けて放たれた防衛用のレーザーを剣で反射させて綺麗に壁を切り抜くと、中に侵入する。

 初っ端から防衛用とはいえ、殺傷力のある攻撃をしてくる所がイかれたゴミ屑クルトらしい。


 階段は当たり前だが下に向かって作られており、灯りが松明の様な魔導具しかないので薄暗い。

 更には、数歩歩いただけで、先程のレーザーが壁一面———およそ20ヶ所から俺目掛けて発射される。


 しかし俺は、魔力障壁で全身を覆いノーダメージで下に降りていく。

 なんなら此処で大暴れしてクルトを呼び出すのもいいのだが……多分校舎が崩れるのでやめておいた。


「お、やっときた。実験モンスター」


 俺が1分ほど降りると少し開けた場所に辿り着き、反対側の階段を遮る様にして目の前に現れた、複数のモンスターの部位を取り付けられ、その繋ぎ目を機械で接合された悲惨な姿をしたゴブリン達。

 そのゴブリン達の目は錯乱していて、とてもじゃないが正気の状態ではない。


「可哀想な奴だな……アイツ麻酔も射たねぇから絶対痛いだろうに。安心しろ。すぐに楽にしてやる」


 俺は学園に借りた鋼鉄製の剣で、ゴブリンとのすれ違い様に一閃。

 次の瞬間にはゴブリン首がズレ落ち、血を噴き出して倒れた。

 しかしゴブリンは、殺されたというのにその顔は酷く安堵した様な表情をしていた。


「……他の奴らも直ぐに屈辱と痛みから解放してやるからな」


 俺はゴブリン達の下に飛び込み、全て一閃で首を切り、頭を両断して斬り殺した。


「……さて、次行くか……。———覚悟しとけよクルト? ゴミ屑はゴミ屑らしくゴミ箱に入れてやるよ。地獄というゴミ箱にな」

 

 俺はこの光景を見ているであろうゴミ屑クルトに向かってそう言った後、再び階段を下り始めた。







「な、何なんだよ……あの化け物は……」


 

————————————————————————

 今日は1話になるかも。

 夜10時までに投稿されなかったらないという事で。


 現在、作者が力尽きるまで1日2話投稿をしています。

 なので、頑張って欲しい、ヘラ可愛いなど思って下されば、☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!

 作者の執筆の原動力となりますので! 

  

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