第3章 精霊と悪魔の狂騒
第1話 新たな主人公
「———シン、大変な事が起きてるよ」
「どうしたんだ?」
学園が再開した日の朝のSHR前、アーサーが困惑の表情を浮かべて言った。
「———Fクラスの人数が変わってないんだ」
「…………何? カイが居ないから減っている筈だぞ?」
「その筈なんだけど……事実、Fクラスの人数は変わっていないんだよ」
更に。とアーサーは続けて言う。
「誰もカイの事を覚えていないんだよ。僕とシンとヘラ様以外は。皆、突然邪神が現れたと言うんだ」
「そんな馬鹿な……」
アーサーが言うには俺達が消えた後で、フードを被って顔を隠した1人の謎の人物が現れて何かの粉塵が散らばる魔法を国中に掛けたらしい。
アーサーは謎の人物に気がついた瞬間から胸騒ぎが収まらなかったため、自分の体を精霊の力で保護していたらしく、何とか魔法に掛からずに済んだのだとか。
俺とヘラはそもそも国外に居たので論外。
始めはアーサー自身、何をされたのか不明だったらしいが、休業中にクラスの人と遊んだ際、カイの事を誰も知らなかったらしく、家に調べさせたのだとか。
もしかして……所謂、ゲーム世界転生あるあるの矯正力ってやつなのだろうか?
そしてその謎の人物が代行者的な何かか?
「因みにカイの代わりにいる奴は?」
「家が調べた所、ルイと言うらしい。顔とかは分からないけど、その少年がカイの代わりに学園に居るらしいよ」
ルイね……何者だろうなソイツ。
俺の記憶にはそんなキャラ存在しないが。
「でも、顔すら分からないから今考えても仕方ないな。取り敢えず、後でFクラスを見に行こう」
「そうだね」
俺達は険しい顔そう言い合った後、教室に入って来たエマ先生に視線を向けた。
———昼休憩。
俺は、早速Fクラスへとアーサーと共に向かう。
珍しい事にFクラスには人が集まっており、少し騒がしかった。
「あ、見えたよ———っ!?」
アーサーが転校生を見つけたらしいのだが……直ぐに驚いた様に瞠目するが、直ぐに何故か納得したような表情をした。
そんなアーサーを不思議に思いながら、アーサーの見る方に視線を向けると———俺はアーサー同様、目を見開いて戦慄する。
———容姿がカイと瓜二つなのだ。
違う所と言えば瞳が片方紫色な所くらいで、あとは背丈も合わせて殆ど同じように見える。
しかも更に驚きなのは、何故か転校初日の筈なのに、既にヒロインのアリア、シンシア、更には俺っ娘のセアラとも仲が良さげに話している事だ。
「アーサー、奴は何者だ? ルイって言ったな? 何でカイと瓜二つなんだ?」
「……さっきまでは確証がなかったから言わなかったけど———実は、ルイは調べた所によると、入学時から居るらしいんだよ。それも実の双子の兄であるカイの行方を探すために学園に来たらしい。ルイは小さい時に捨てられた子供なんだって」
「……そんな設定あったか……? と言うか入学からいる筈ないだろ。カイが居たんだから」
「でもそうなっているんだよ。そして、学園の侵入者を倒したという功績で、ヘラ様と同じく十傑に入ったらしい。第9席だって」
だからこんなに人が集まっているのか?
もう意味が分からない。
一体全体どうなってんだよ。
そもそも主人公に双子の弟が居たなんて、ファンブックにもそんな事は書かれていなかったはずだ。
そもそも主人公は1人っ子だった筈だが……もしかしてあの謎の人物の仕業か?
あー頭が混乱するな……ヘラのお姿で癒されたい……。
俺が頭を押さえていると、アーサーが『これはあくまで僕の予測だけど』と前置きした後で言った。
「……僕は皆の記憶を消した人物の仕業だと考えているよ」
「…………ん? ———ああ……そうか、そう言うことか」
アーサーの言葉で、俺の頭の中で無数に絡まっていた謎が1本の線となって繋がった。
俺の推測では……恐らくこんな感じだ。
主人公が俺の手によって消滅させられた。
そこでおそらくこの世界の裏側で暗躍している例の人物———俺の予想ではコイツも転生者だ———が、この世界で1つだけ存在する神器で新たな設定を2つ作ったのだ。
その神器の名は———
全クリ後に手に入る、ストーリーの中で自分がクリアした好きな所を再びプレイ出来たり、ムービーを見れたりするだけの能力を持った神器。
しかしこの神器の説明には、『世界の全てが記された禁書。これを手にした者は世界に干渉する力を得る』と書いてあるのだ。
つまり———この禁忌目録を知っている転生者が、これを使って原作通りに進めようとしているのだろう。
そしてルイを主人公にするには、恐らくカイとの類似点がないといけなかったのだ。
だからカイを双子の兄にし、行方不明と言う理由付けのために、皆の記憶を改竄して辻褄を合わせたのだ。
そのついででルイを入学当初から在籍していた事にしたんだろう。
血縁ならば同じ力を持っていてもおかしく無いし、カイの代役ともなり得るからな。
それで俺が敢えて正体がバレないように襲撃者を倒したので、改変し易かったはずだ。
「はぁ……今度の転生者は原作厨かよ……まさしく俺の敵じゃないか……」
何せ、俺はヘラを救おうとストーリーを改変しようとしているのだから、原作厨にとっては1番の邪魔者だろうな。
だがな———原作厨。
「———絶対にお前の好きにはさせねぇぞ」
お前の思惑も全てぶち壊してやる。
全てはヘラのために———。
—————————————————————————
はい。
と言う事で第3章開幕です。
それと作者がシリアスに疲れたんで次はヘラとのほんわか回です。
現在、作者が力尽きるまで1日2話投稿をしています。
なので、頑張って欲しい、面白いなど思って下されば、☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!
作者の執筆の原動力となりますので!
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