12月26日はさすがに光らない

case.1「1年でいちばん暇な日」

朝6時。

うるさすぎるアラームを止めた。

ほんっと憂鬱。

なんで、ここまで憂鬱なのか、

それは、今日が12月26日だからだ。

僕はこの日が1年で1番憂鬱。

クリスマスが終わった次の日。

そして、仕事納めが大体27日。

この間の変な1日だから、そもそもこちらも

1年で1番やる気がない1日だから。

僕の仕事は特にそうだ。

あ、あと自己紹介がまだだった。

僕の名前は加藤慎吾。

東京ドリームランドでキャストをしている。

11月後半から特に忙しかった。

それは、クリスマスナイトというイベントがあっていたから。

どこのテーマパークもそうだけど、

大体、11月後半や12月頭から巨大イルミネーションが出現して

園内を輝かせまくる。

その期間は忙しくても、ある程度はやり遂げれる。

少しぐらい忙しい方が働いてて楽しいし

お客さんもみんな笑顔だ。

何より夜のパレードはキャストも感動するほどのクオリティだからだ。

何十回と見たけど感動する。

そんなパレードも今夜は行われない。

そう、今僕が思ってるのはひとつ。

『今日行く意味ある？』

大体、毎年この日は客もほぼほぼいない

1日通して50人来るかどうか

はぁ、憂鬱。

絶対に26日をどの企業も納めにするべき。

この1日がマジで意味わからない。

今日を納めにした場合

クリスマスが終わった夜、

『あー明日納めだ！あと1日頑張ろ！』って思えるはず。

しかし、27日が大体納めだから

ほとんどの人が『何だこの1日』って思ってるはず。

ほんとなんなんだこの26日。

ほんと1年で1番ムカつくこの日。

あーうざ、ドリームランド潰れないかな。

だけど行くしかない、、、

寝ようかな、、、いやクビになる、そんなことしたら

僕は重い腰を上げた。

8時前にドリームランドに到着。

「おはよ」

「おはようございます、柴田さんも出勤だったんすね」

彼は、先輩の柴田さん。

僕より4年ほど先輩、歳も4つほど上。

「今日ほど客来ない日ないぞ」

「え、ですよね？絶対に今日を納める日ですよね？」

「あーそれいいね、納めよ」

そう、だって納めると言ったらお客さんは

年内最後の開園日だからまあまあ来る。

一応冬休み中ではあるから来ようと思えば来れる。だから毎年、明日は忙しい。

じゃ、なおさらいっそのこと今日開く意味がまじで意味わからない。

「てか、聞いた？加藤と俺、今日エンジョイサイクル担当だって」

「え！？嫌だ嫌だ！！！なんで1番暇な日にそもそもの人気がないアトラクション担当なんですか！」

「今日客少ねえのに、キャスト多すぎんだよ」

「そういうことですか·····」

開園5分前。

僕らはエンジョイサイクルの位置に着いた。

「これまじ1日来ない可能性ありますよ」

「あるな」

「うわぁほんとやだ」

そして、26日の

東京ドリームランド開園。

開園、30分。

やっぱり誰も来ない。

そりゃそうだよな、来るわけない

そもそも人気ないんだから

「ジャングルパニックが良かったっす」

「あーいいね、俺ならバベルのデンジャータワーかな」

「ですよね、だってエンジョイサイクル子供だまし過ぎますもん。これほぼレンタルサイクルと変わんないんすよ」

「ここ来て、レンタルサイクルしようとは思わないもんね」

「そうなんですよ」

「ほんと暇だな、今田美桜とか来ねえかな」

「うわ、いいな」

「誰かツイートしたら一瞬で大騒ぎだぞここ」

「それぐらい忙しい方がいいですよ」

あーほんと嫌だ！12月26日！

去年、年上の彼女に振られたのも

12月26日だった。

10年前、サンタがいないって知ったのも

12月26日だった。

私情で申し訳ないけど、色んな意味で

ほんとにやだこの日。

そして、1人も来ないままお昼を迎えた。

巨大イルミネーションは朝の時点でもう無い。

それはそのはず、実はあれはキャストで

準備・片付けしているのではなく、

あれの作業だけの業者を呼んでいる。

だから、昨日の閉園後、業者がやってきて

朝方にはもう全部取り外されてる。

素晴らしいスピードだ。

これ、残してくれた方が良くね？

だったら暇じゃなかったじゃん。

「昼休憩行ってくるわー」

「あ、おけっす」

「あのホットドッグでいっかな」

「え、昨日ケバブでしたよ？まさか今日1日のために違うキッチンカー来てるんですか？」

「みたいよ」

「もったいな」

「とりま行ってくるわ」

あー柴田さんも行っちゃったからほんとに

今から1時間くそ暇だ。

あーーーーーー！！！！！！！

「あのーーー、、？」

その時だった、僕の暇な1日が終わりを迎えたのは。