第13の2話 怪獣大決戦とゴッドチェンジ 死亡5回目


「グワォーーーーーーーーーーーーーーーー」

 これが神様とX教官と神様が俺達にくれたプレゼントの正体である。

 ここは周囲数百㎞に渡って地面が広がっているだけの所。∞の塔内にあるここには遮蔽物が全くなく、軍隊が己の実力を確かめるのに最適な軍事演習場となっている。この場所で一体なにが貰えるんだろう? と期待しながら俺達は待機していた。

 そして予定通り昼の1時00分になると、離れた所の空がグニャリと歪んで渦を巻きいてそこからビルのように巨大な物体が降って来た。それに対してフィリアだけは喜び他の皆は「こんな物いらないわ!」「ワンワンワン!」「ウキキィー」って怒りだす。

 あれがドーーンって着地したら地面が少しグラグラする。

 〔此れから怪獣ハンター専用の訓練クエストを開始します〕

 〔相手は怪獣の中でも弱い方になる【ティラガガガガドン】だぜ〕

 〔何ごとも経験じゃ、好きなように戦ってみるがよい〕

「ワンワワンワンワーーン!!!」(いきなり怪獣と戦わせるなアホーーーー)

 予備知識なし! 勿論だが何も準備をしていない! こんなの無理ーーーーーせめて事前に教えとけーーーーー!!! って、空に向いた俺達は一斉に怒るも神様達は

 〔サプライズを事前に教えたら面白くねぇだろうが、なぁ?〕

 〔その通りです〕

 〔怪獣を倒せるまでお主らは演習場の外に出さぬぞ、頑張って倒すのじゃ〕って

 【全く取り合ってくれなかった!!!】(わーーーお)

 (X教官ーーーーーーーーーーーーーー)

 王冠マーク持ちなら怪獣に対抗できる筈だ! ってSペンダントの通信機能から連絡してみるも繋がらず、続いて軍の総司令官、電子妖精ミリィ様へ掛けてみる。

「誰なの?」「ワンワンワン」

「私は忙しいの! 下らない電話を掛けて来ないで」と即プツン。

 もう嫌だこの世界、(スパルタ教育は時代遅れなんだからなーーーーーーーーー)

 〔彼奴がどれだけでけぇか分かるかお前ら?〕

 【全高:45m、体重:2万トン以上の身体に、長くて太い尻尾が付いている。ティラノザウルスを数倍拡大して、太らせたような怖い怪獣さんであるらしい。その怪獣のEPは82万と魔王4~6体分もあるそうだ。】

 あれだ15階建てのビルが、動いて襲って来るとか言うとんでもない状況だぞ。怪獣ハンターを目指している俺達にとっては、これ以上ない位の素晴らしいプレゼントになんだろけどさぁーーーーーー。(神を信じよーーー、信じる者は救われるーーーーー)

「私達はどう戦えばいいの?」

「ポチさん達には対抗手段がないかも知れませんが……」

 その通り! 幾らクラスチェンジしたとはいえ怪獣さんにとって俺やアネラスがする攻撃は、水鉄砲で撃たれるよりも更に軽い程度の攻撃に過ぎないのだ。

「私とウッキーには対抗策があります。後ろで黙って見ていてください」

 (おーーーーーーー凄いぞゾフィリア! 何か知らんがとにかく凄い)

 ならお任せでという訳で、メカウルフに変身しアネラスを背に載せた俺は、フィリアから50m位ずーーっと後ろに下がって2人を見守ることにする。

「そんなに信用ありませんか私達?」

「しょうがないじゃない」

「ガウガウガウッ」(頑張れよー2人とも)

「じゃあ行きますよーーーーーーーーーーーーーーーーーー、えーーーい」

 何を考えているのかフィリアは両手を天高く掲げる、するとEPバーが急激に減って彼女の頭上が明るく輝き始めた。

 ドッシィン、ドッシィンと怪獣さんが地面に足形を刻みつつ、俺達に近づいて来ると長く突き出した口と目を下に向けて適度な距離で停止する。(フィリアを警戒しているのかな? 怪獣さんにも知能があるみたいだけど面倒だなぁこれ)

「ウィルオーウィスプ召喚!」

 かなりのEPを消費して呼び出される光の大精霊、光の粒子が固まって作られた女の人のような精霊は乗用車2台分ぐらいと大きめのサイズだ。

「はぁぁぁーーーーーーーー」

 大精霊を呼び出したフィリアは両足を軽く開くと、両拳を握って気を練り始め光の巨人も両手を前に突き出すと攻撃魔法の準備を始める。

「ウッホウッホウッホッホーーー」

 大猿になって掲げたウッキーの両手には、MAXファイヤーボールが2発作られいて彼女らが何をするつもりなのか大体わかってきた。

「ここからもっと離れた方がいいわポチ。ほらあれ」

 アネラスが指さした斜め上空では怪獣さんが口を開けて、後方に下がりつつエネルギー光線のチャージを始めている。俺が後ろに下がろうとすると「そうじゃないでしょ」って言われるから指示通りに左を向いて歩き始めた。

 フィリアが負けるとは思っていないが、彼女達が負けた場合ただ下がるだけでは直線攻撃に当たってしまうので、横に移動して軸をずらさなければならない。

「さぁ撃って来なさいティラガガガガドン、私達が返り討ちにしてあげます!」 

 自分の攻撃に余ほどの自信があるのかフィリアは怪獣をまっすぐ見上げていて暫くすると、フィリアチームとティラガガガガドンはお互いに魔法をぶつけ合う。

 【フィリアチームの魔法はこれ。】

 ウィルオーウィスプとフィリアがそれぞれ使う、〘メガブレス2発+MAXファイヤーボール2発〙で、炎を纏ったエネルギー光線が怪獣の顔を目掛けて飛んで行く。

 対する怪獣さんの魔法は【ギガブレス】だ。

 大きく息を吸って3万近くのEPを消費しながら、一軒家を消し去れそうな程にぶっといエネルギー光線を吐いて来る。

 両者の魔法はほぼ互角で押し合いはじめ、怪獣とタメを張れる彼女たちへ俺は素直に称賛を送ったのが直ぐに此れはフィリア達が負けると理解した。

 【怪獣さんのEP82万 VS フィリアチーム5万弱、誰でも分かるこの数】。

 【怪獣と正面から撃ち合ってはいけない! それが伝説級の勇者や魔王でもだ。粗100%確実に撃ち負けてこの様になってしまう】。

 最初こそ踏ん張れた彼女達だったが、時間が経つとまずフィリアのEPが枯渇しEPコンバーターで此れを補填したウッキーのEPも尽きて、何かこっちを見てきたーーーーって思った次の瞬間「いやーーーーーーーー」って悲鳴が上がる。

 〔ザマァみさらせアホ神官〕

 〔気分爽快です〕

 〔何ごとも経験じゃぞぉ〕

 なんか嬉しそうな神達の声が天から聞こえるけどほっといて、ギガブレスに巻き込まれたフィリア、ウッキー、光の大精霊は灰も残さずに蒸発してしまうのだった。

「次は私達の番よね?」

「ガウガウガウッ」(そうなんだろうな)

「静かに動くのよポチ」

 身を屈めて息を殺し、音を立てないようにソローリソロリ。怪獣さんから逃げようと動いていたら、ギョロっと大きな目玉が動いて「グワォーーーー」と吠えてくる。   

「こんなのとどう戦えって言うのよ!」

 ズッシィン、ズッシィンと二足歩行の巨大生物が、地面に足形を刻みつつ迫り来る。怪獣さんは鈍重に見えるが信じられない程に速かった。

「ガウガウガウ」(メカウルフの脚力を見せてやるぞーーーーーーー)

 俺はいま風を切るように走っている!(気持ちいい)、猫のように伸縮自在な鋼の爪で地面をしっかり捕まえながらうぉぉぉぉぉと走り続けているのだ。

「追い付かれるわよポチ! もっと早く走ってぇ」

 《チーターを想像すると分かり易いかも? 視界の右下にあるスピードメーターは時速100㎞を超えていて、その下にあるヒートメーターは赤色だ。氷魔法を使って冷やしながら走らないと俺はオーバーヒートで止まりそうである。》

「なんで振り切れないのよーーーーーーーーーーーーー」

 《【対する怪獣さんの速さについて】。

 歩幅20m〜30m×3600(秒)と普通に歩くだけで時速100㎞近くになり、ちょっと走れば200㎞以上になってしまうチート能力。短い両腕に金属ワイヤーで固定されている72㎜超ハイパーガトリング砲が、いつ火を噴くのかと言う恐怖に怯えながら俺達は怪獣さんの前を全速力で走っている。》

「ギガブレスのチャージを始めたわ!」

 俺達は全速力だが怪獣さんはただ歩いているだけ。特に苦も無くチャージをしつつ追い掛けて来るティラガガガガドンの、口腔内に溜る光は段々大きくなっていき……

「ガウガウガウッ」(撃たないでくれーーー)

「合図したら横に飛びなさいポチ! 直撃したら私達も蒸発よ」

 身体を前屈みにして風圧に耐えつつメカウルフにしがみ付く少女、俺は彼女を守らなければならないとその合図に神経を尖らせる。遮蔽物が無い=逃げるのが大変、高い所から見下ろす怪獣さんに俺達は丸見えだ。

「来るわよポチ!」

 合図に合わせた俺は時速112㎞を維持しつつ右側へ大ジャーーーーーーンプ。

「減速しなさいよ、バカーーーーーーーーーーーーーー」

 何ごとにも初めてはあるもんだ、着地の衝撃を考えてないし背に載せたアネラスがどうなるかも俺は考えていない。メキッと言ういやぁな音、バランスが崩れると俺は地面をゴロゴローーって転がって行き投げ出されたアネラスは———どうなった?

 ズゴゴーーーーーーって目の前を通り過ぎた、バカでかいエネルギー光線。溝を掘らせると上手そうな怪獣の魔法は縦横に渡って長く深く地面をえぐり取る。赤く溶けてドロドロになった地面が恐怖心を増してくれた。

 (アネラスは死んだかも知れない、俺のせいだーーーー)

 自分の愚かさを嘆きつつ折れた足を他のでカバーしながら、立ち上がって辺りを探すように見回すと、「へたくそ危ないじゃないポチ!」って怒られる。着地寸前に俺から飛び降りたアネラスはウィンドステップで衝撃を軽減してなんと無傷だった。

「あっヤバ、逃げてポチ!」(何がだ?)

 太陽が頭上にあるのに突然、真っ暗になる俺の周囲。何を慌てるのかアネラスは脱兎の如く走りだして次の瞬間、ドーーーーーーーンと俺の上から何かが降って来る。


 ———死に過ぎて慣れるのもどうかと思う今日この頃。(痛いからなこれ)

 怒りたいけど怒る相手がいない(いるにはいるが)、苦しくてモヤモヤし痩せない気持ちを抱えたまま三柱神の像に近付いた俺は吠えてみた。

「ワンワンワンワン」(俺はなぜ死んだんですか?)

 せめて死因が知りたいなと神様の像に聞いてみたら、「お前はジャンプした怪獣に踏み潰されたんだぜ」って教えて貰える。(あーーーなるほど)

「メガトンプレスは怪獣の得意技ですから次は注意するんですよ」

「ワンワワンンワン」(分かりました覚えておきます)

 2万tの物体に踏まれたら戦車でもペチャンコになるし、メカウルフの体なんか一瞬で粉々になってしまうだろう。

「所でじゃポチ、お主はなぜ七星ペンダントを使わぬ?」

「ワンワンワン」(すっかり忘れていました)

「せっかく授けてやったのじゃせいぜい使い倒すがよい」

「ゴッドチェーンジって決めポーズを忘れるんじゃねぇぞ」

「ワンワンワォーン」(分かりました、よーし怪獣を倒すぞーーーーー)

「その意気じゃぞポチ期待しておるからな」

 三柱神と話を終えた俺はこれから復活するまで寝るのだが、他の皆はどうしているのだろうか? 同じ部屋で隅の方にいるフィリアはなんか落ち込んでいて、ウッキーに慰められているから触らずにそっとしておく事にする。


 ———数時間後。

「お帰りなさいみんな身体はもう大丈夫なの?」

 神様の特別な計らいにより普通とは違う所へ俺達は復活した。パッと見た感じミサイルだか魔法の爆発で作られたクレーターで、アネラスはそこに身体を伏せて息を潜ませながら隠れている。

「私達が死んだ後どうなったんですか?」

「あのね……」

 俺が踏み潰された後に怪獣の視界から逃れる事が出来たアネラスは、風魔法で掘った地面に伏せると上から土を被ってやり過ごしたんだそうだ。

「プレゼントなんか捨ててもう帰りませんか?」

 PTの雰囲気が暗くてヤな感じ、フィリアさんは肩を落としてしょげ込み、元気が取り柄のアネラスは尻尾が垂れて覇気がない。しかーーーーーーしだ! 俺には奥の手があるので『諦めるのは早いぞ皆で頑張ろう!』ってSNSに打ち込んだ。

 なにを言ってるの此奴? ポチに出来る訳がない、無視だ無視という雰囲気を打ち破るように俺は【七星ペンダント】について説明する。

「それを使うとどうなるのポチ?」      『分からない』

「怪獣を倒せる程に強いアイテム何ですか?」 『知らないし使った事がないんだ』

「怪獣を倒すまで私達はここから出られないんだっけ?」(そうだった)

「使うだけ使ってみますかそれ? 怪獣ならあそこにいますよ」

 怪獣に発見されない様に地面へ伏せながら、小声で話したフィリアが指さす方向にティラガガガガドンがのっしのっしと歩いている。直線距離で3㎞は離れていそうだとか彼女は言うのだが(怖いなぁ、やっぱ止めとこうかなぁ……)

「もうっ男でしょポチ!」(そうだな、うん)

 アネラスに背中を押されてクレーターから出た俺は、メカウルフを解除して【ただの子犬】に戻るとお座りしながら前足で七星ペンダントを触りつつ、「ワンワンワウォーーーーーーン」(ゴッドチェーーーンジ)って叫ぶのだった。

 【魔王や怪獣クラスと戦うとき以外は反応しないが、1週間に1度だけ神獣に変身して圧倒的な力で戦えるようになる特殊能力が遂に発動する!】

 (おおおなんか凄いぞこれーーーーーーーーーーーーーーーー)

 物理法則を無視して(メカウルもだが)、スーパーデッカクなっていく俺の体。眩しい光を発する俺の体は魔法少女がする時みたいに、身体が一度分解されるとむくむく超急成長をしてしまうのだった。

「ワォーーーーーーーーーーーーーーーーン」

 変身を終えて感激した俺は思わず遠吠えをしてまう、足元にいる俺の仲間達が耳を塞ぐほどの大声を出したので、怪獣さんの耳にもきっと届いた事だろう。

 《鏡が欲しい所だが、俺は白い剛毛に覆われた身体になっている筈だ。

 高さは20m程と怪獣の半分以下で、尻尾を除いた体の長さは35m越えと長く、体重はティラガガガガドンに負けない1万8千700t。(体が熱い! 何故だか闘争心が溢れて来るんだーーーーーーーーーーーー。)》

 (大丈夫かこの大変身?)と悩むもその思いは一瞬で消え去り、「落ち着きなさいポチーーーーーーー」と叫んだアネラスの声を無視して、感情に任せた【神獣:白狼王】の巨体は吠え返して挑発する怪獣へ突進して行くのだった。

「ポチーーーーーーーーー、もうっしょうがないわね!」

「行きますよアネラスさん!」

 走り出そうとするアネラスの横でスネイプニルを召喚したフィリアは、彼女と小猿を馬の背に乗せて駆け出そうとするも神様に止められた。

 〔待つのじゃお前達それ以上先に進んではいかんぞ〕

「何故ですか! 早くポチさんを助けに行かないと……」

 〔変身したポチがどの程度に戦えるのか知りたいのです。彼方達は何もせずにこのまま黙って見ていなさい、いいですね〕

 〔余計な真似をしやがったら天罰だからな〕


 仕方なくクレーターへ隠れ直したアネラス達の前で、怪獣が再びギガブレスをチャージし始めると俺も対応を始めてしまう。

 (なんだこれ! 頭の中へ勝手に知識が流れ込んでくる、気持ち悪いーーーー)

 前足を踏ん張って急ブレーキ、牛を丸呑みできそうな大口が開くと俺の身体も怪獣の真似をして〘ギガブレスのチャージを開始した〙。(体が勝手に動くんだ! 誰か止めてくれぇーーーーでもまぁその、まぁいいか)

「ワォーーーーーーン」(此れでも喰らえーーーーーーーーー)

 考えるの面倒だし流されてしまおうって、受け入れたら心が楽になる。その勢いのまま俺がズゴゴーーーーーーってギガブレスを吐くと、怪獣もエネルギー光線を撃ち返して来てちょうど真ん中あたりでぶつかり合った。

「アニメや映画を見てる訳じゃないわよね私達?」

「これは現実ですよアネラスさん」

 負けて堪るかぁっーーーて頑張っていると、バチバチバチッてぶつかり合っていたエネルギー流はやがて消えてしまう。俺、怪獣ともに息切れしてこれ以上撃てなくなったからであり、ギガブレスを撃ち終わると「ガウガウガウ」(超大電球!)とか言う聞いた事がない魔法を使ってしまった。(俺はいったいどうなってしまうんだ)

 【X教官が見せてくれたUMFボールを覚えてますか?】

 EP8000程を使って作りだした直径2mの大火球です。超大電球も似たような感じで何と3発も同時に作りだせた俺は、怪獣のUMFボールと撃ち合いながら接近するというプロ顔負けの戦闘を展開してしまっている。

 ドガーーン、ドガーーンって辺りにクレーターを量産し、バリバリバリーーと周囲を超電流で焼き尽くしながら、(噛みついてやるーーーー)とティラガガガガドンに肉薄したら彼奴はジャンプでその攻撃を躱してきた。

 【この瞬間、俺は勝利を確信する】。

 2本足との4本足の違い、体格さの問題であり、ジャンプしつつ尻尾で向きを変えて俺の側面に回り込んで来た怪獣さんの手は、類人猿より短くて役に立たなそうだ。

 (此れは勝てるぞ! 落ち着け、落ち着くんだ俺えーーと……)

 ヴォォォォォと耳をつんざく轟音が聞こえだす、回避すると同時に回転し始めた怪獣さんの72㎜超ハイパーガトリング砲が火を噴いたのである。両腕の2門から戦車砲より小さめの砲弾が雨あられと降って来ると、俺はハチの巣になって死んでしまうのかと思ったりしたが以外に平気だった。

「ガウガウッ」(U⦅ウルトラ⦆Eシールド!)

 怪獣が使うEシールドは人のそれより分厚くて頑丈だ、貫通耐性も付いているしシールドの範囲外へ回り込まれなければどうって事ない。一匹で戦車隊を含めた陸軍を蹴散らせる怪獣になれた俺は、俺を捨てて追い出してくれたあの三姉妹に思わず感謝してしまうのである。

「素晴らしいですポチさん!」

 クレーターから身を乗り出しつつ興奮して叫んだフィリアは、ポチとアネラスを絶対にエヴィン教へ引き込もうと決意を固くした。(ポチさんがいれば怪獣肉を食べ放題じゃないですか、逃がしませんからねぇうふふふふ)

 (どうしよう困ったなぁ……)

 ティラガガガガドンの攻撃をUEシールドで防ぎながら俺は後退する。超ハイパーガトリング砲+UMFボール VS 超大電球、火力差で押し負けてしまいそうだ。 此れにギガブレスが加えられるとチトまずい。

 俺が使える戦闘スキルはギガブレス、超大電球、噛みつき引っ搔きに尻尾?(いや尻尾は無理だろ、しかし頭に響いてくるやれという言葉。どうなるんだか……)

「ワオーーーーン」(超神雷!)

 白くてふさふさした尻尾を天に向けつつ、EPを5万も消費して魔法を使うとそこ目掛けて数本の太い雷が降り注いで来た。(なんかビリビリ来るぞーーーーーー)

 〔ポチは超必殺技を使うみたいですね〕

 〔そんな事まで出来んのか彼奴?〕

 〔出来るのじゃが、少々力を与え過ぎてしまったかも知れぬ〕

 全身に雷が満ちると白い毛が逆立って俺の体は少し怖くなった、その体以上に俺の心は恐れるのだがもうやっちゃえ状態。敵の攻撃をUEシールドで防ぎつつ身体を低くして右前足の爪に雷魔力を集中させたら

「ガウガウガウッ」(神技、超神雷マッハブレーード!)

 (えっマッハてちょ、待てってわーーーーーーーーー)

 爪辺りで集約された雷魔法は剣のような形になり、速すぎて使った俺自身も訳が分からなかったのだが、一瞬で音速に加速した白狼王1万8千700tの巨体はいつの間にか怪獣の後方へと斬り抜けていた。

 (えええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーー)

 頭が混乱して訳分からんが後方では怪獣の悲鳴が上がっていて、俺の右手には彼奴の血と思われる紫色の液体がベットリとこびり付いている。

 (あーーーーーその、なんだ。痛いですか怪獣さん? 痛いですよね……)ゆっくり振り返ると身体のわき腹からドクドクと血を流しつつ、上から睨みつけてくる怪獣さんは息が絶え絶えでとても苦しそうだ。

「凄いじゃないポチ!」

「ウキキキィ」

「止めを刺すんですポチさん! 今晩は……」

「口から涎が出てるわよフィリア」

「あらやだ私ったら、エヴィン教なのに駄目ですね」

 (うーーーいいよね此れ? 殺してしまうのは抵抗があるけどどうしよう。頭へ勝手に流れ込んでくる何かは、ギガブレスとか超神雷マッハブレーードをもう一度使えって煩いんだが困ったなぁ) 

 俺が悩んでいるとティラガガガガドンは攻撃を再開して来る。

 超ハイパーガトリング砲で撃たれたりとか攻撃されるから、仕方なく体当たりして怪獣を倒した俺は、訓練通りにその喉元へかぶりついて止めを刺した。

 〔でかしたぞポチ〕

 〔此れなら計画を進められますね〕

 (計画とはなんぞや?)聞きたい事があるけどもう無理。頭がいっぱいいっぱいで考えるのを止めたい俺は変身を解除して、ただの子犬に戻ると走り寄って来たアネラス達と並んで∞の塔から外に出て行った。

                 

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