三話 フレンドリーな一面
本日の講義は全て終わった。
結局私は、講義中に夢の世界にいた。30分が限界だった。つい眠たくなって『ほんの少しだけ』と自分を誘惑し、そのまま眠りについた。
ゲームセンターでテンション上げて、そのままお昼も食べて、またその後つまらない講義を受けたらそうなった。
まぁでも私だけではない。他にも前の座席に座ってる人も寝ていた。
だがそれが良いという訳ではない。勿論いけない事だ。学費も大層な金額であるし、大学受験という人生の道を進む為に出来た壁を超えてやってきた訳なのだから、ただ寝る為に来たのであればなんの意味もない。
それに比べて、明日奈ちゃんは偉い。自分は何様だと思った。
普通なのは恐らく私ではなく、しっかりと講義に遅れず、自分の専用座席をきちんと確保して、真面目に勉強を継続できる彼女なのだ。
本当に私は彼女は見習うべき所が山程ある。
その見た目から人間性まで……
私は彼女と約半年も一緒にいるキャンパスライフを過ごしている訳だが、何故だろう。私は彼女の事を未だに理解できない所があるんだ。
そう、彼女は謎が多い。人間性に惹かれている事は確かだが、この半年過ごしてきて未だに『彼女といえば』と第三者に聞かれても答えられない。彼女がどんな人間なのか分からないのだ。
正に『ミステリアスな女』な雰囲気がプンプンする。だが、それが彼女のキャラクターといえばそうなのだろう。
講義後に私達は、晩御飯をどこかで済まそうと決めた。
「じゃあ、どこにする?学食はもう時間ギリギリだし」
「アタシは別にどこでもいいよ。あみが選んで。アタシあみが普段どんな所に行くのか気になるなぁ」
「別に大したところなんて行かないよ。だって私がこの大学に行く理由は、ゲーセン行ったり、近くの本屋で漫画購入したり、ちょっと遊びに行く為に来るようなもんだから。あっでも、大学の外に並んでいるお店なら色々詳しかったりする」
「へぇ。じゃあ、オススメ教えてよ」
私は左人差し指を下唇に当てて、空を見上げながら思考を働かせる。
思いつくところなんて、大学出たすぐそこにある牛丼屋か、ここ最近オープンしたパスタ屋くらいしか思いつかなかった。
「うーん……オススメかぁ。何があるかなぁ……」
しばらく考えていると、私の背後から男性が話しかけてきた。
振り向くと、高身長の金髪ヘアーの外国人男性だ。留学生だろう。
少しおしゃれな柄のリュックサックを背負っており、背丈に合っておらず、少し小さめなリュックサックだった。
日本のアニメキャラクターのマスコットなんてつけちゃって。日本充実してる感が漂う。
「HEY!ASUNA!!GO HOME?」
用があったのは明日奈の方だった。
その後、その留学生と流暢なイングリッシュを使って何やらインタラスティングなトークを続けている。
私の方にも何度か視線を送りながら会話していた。
「OK!SEE YOU!ASUNA!!」
「SEE YOU!!」
「……凄い。英語、めっちゃ、話せる、アスナチャン」
「ごめんごめん。スティーブっていうの。彼アタシ達と同じ年齢なんだ。言語必須の講義で一緒だったんだ」
「へぇ〜。だけど、めちゃくちゃ上手いよね。向こうの話理解できるんだ」
「いや、そんなに上手くないよ。ある程度だよ。ある程度」
そして私達は晩御飯の場所を決める事にしようとした。
すると今度は前方から女子の留学生が、また明日奈に話かけてきた。
「ASUNA!」
「HI!MIRANDA!」
ミランダという生徒か。
また流暢にイングリッシュをトークしている。
正直、私は外国の人との会話なんてほんの少しも出来ない。
そんな私より、一緒に笑い合い、楽しいトークに花を咲かせられる明日奈ちゃんは凄い。
頭がいいんだろうな、彼女は。だから講義前難しい本読んだり、外来語が話せたり出来るんだ。
そんな人と一緒に半年も過ごしてきたと思うと、段々と距離が縮まり、仲を深められていると思っていたが、逆に差をつけられた気がする。そこがなんとも無力な自分を浮かび上がらせるのだ。
そんな事を思っていると、話は終わっていた。
すると、また背後から明日奈ちゃんに話しかける声が聞こえた。
今度は先輩だろうか?年上の男子大学生の人だ。
また終わったと思えば、しばらく一緒に歩いていると、また留学生や女子の大学生がわんさか明日奈ちゃんに話しかけてきては『この間は助けてくれてありがとう』『thanks!!』『明日奈さんのお陰で…』と、感謝の言葉が彼女に伝えら人が多かった。色々恩があるらしい。
しばらくして、
「ごめんごめん。あみ、もう決まった?」
「あっいや、色んな人が明日奈ちゃんに話しかけていたから、それが気になっちゃって考えてなかった」
「そうだったんだ。それはごめん。もうキャンパス出てから考えようよ。ね!」
小さく微笑んでくれた。
その笑顔も時々しか見せない表情なのだ。
だから久しぶりに見た。やっぱりその顔その表情は、私にとって印象強く残った。
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