第171話 黒と白(7)
(こいつら、鬼じゃないか。
漣が刀を抜き辺りにオーラを張り巡らせ身構えた。
(く~、アワ蜘蛛の気配が遠ざかっていった。逃げられたな。逃げた理由はこれか。私としたことが全然気がつかなかった。とにかく、ここを切り抜けねば)
突破口を開くために、目の前の鬼に切りかかった。漣の前には身の丈三メートルほどの巨大な鬼がいる。大きな手が風を切り裂き、漣を払いのけようとする。それを避け、上段から腕を
ドガッ! ダーン!
再びコンクリートの壁に叩きつけられた。漣を弾き飛ばした相手がドッシリと立っていた。もう一体の別の鬼である。その鬼はイノシシの顔をしていた。
鬼もその種は多くある。
「いーたーいー。やりやがったなあ」
漣が
「うん?破れていない」
雪神から授かった衣装を改めて見ると、
(さすが雪神様から授かったもの。これなら、思いっきり暴れても大丈夫か・・・・・・!?)
研ぎ澄まされていく漣の感覚が人の気配を感じるとともに、危機を察知した。
漣がぶつかった壁の上には照明器具は設置されていた。それが衝撃でいまにも落ちようとしているその真下に、人がいるのだ。
「おいおい。冗談じゃない」
漣が目にしたのは二人の男だった。三人組の男に声をかけた
漣はすぐさま男たちのもとに駆け寄ると、二人を両脇に抱え、グイッと二メートルほど飛び
ガシャーン!
ガラスが砕け散る音とともに、男たちがいた場所に巨大な照明器具が落ちてきた。
十六、七歳ほどの少女に抱えられ、命を失う危機を脱したことに男たちは驚いている。
「助かった。ありがとう。もしかして、きみは
男の一人が漣に訊ねた。
「違うよ。だが、霞は知っている。いまはここにはいない。それよりも、ここを逃げるぞ」
漣は男を抱えると翼を広げ、そのまま屋上から飛び降りた。フワリと人目につかぬ建物の陰に降りると、腕を
「お前たちに頼みがある。いま、このあたりは危険だ。人を遠ざけてくれないか。さっきみたいに物が崩れることがある」
「その前にきみは霞の知り合いなのか」
「そうだよ。お前の言ってる霞って、
漣の言葉に男たちは互いに顔を見合わせて頷いた。
「分かった。きみの言うことに従う。リーダーからの命令だしな。あの建物の周りから遠ざければいいんだな」
「できるだけ遠くに頼む。あっ、お前たち、あそこに何か見えるか」
漣が建物の屋上を指さした。
「屋上しか見えない。他には何も」
「そう。わかった」
男たちが首をふり返事をすると、漣は軽い笑みを見せた。
(人には見えていないか。それなら、大騒ぎは避けられるか)
「じゃあ、頼んだよ」
漣は勢いよく駆けていくと、再び屋上へと飛び上がった。
飛び上がる漣に、何体もの鬼神擬きが襲いかかってきた。漣は刀を抜くと素早い振りで切り払った。数が多く、入れ代わり立ち代わり襲ってくるため、ダメージは与えるものの、止めを刺すことができずにいた。
(
漣が再び屋上に立つ。そこには無数の鬼神擬きが漣を待ち構えていた。
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