第22話 霞と隼斗(5)
補講もない土曜日、スマホにメッセージが入った。スマホの時刻は朝の6時を表示している。送り主は香奈だ。「話したいことがあるので会いたい」ということだ。以前であれば、無理難題の呼び出しであろうが、文面からどうもそうではないようだ。
霞はスマホを眺め、しばし考え込んだ。午後には実菜穂と陽向に会う約束をしているのだ。初めて会ったときから刺激を受けたので、いろんな意味で勉強をしようと思い、会いたいとお願いしたら二人からニコニコマークで返信がきたのが昨日の夜だ。
(どうしよう、シーナはいないし。いたとしても相談しにくいなあ。実菜穂さん、陽向さんとは約束があるし。こっちからお願いしたから変更しにくいなあ。一人で香奈さんに会うのはちょっと不安だし。この前、あのままだったら何をお願いされたのかなあ)
ウ~ン。霞が腕を組み考えている。自分では気がついていないのだが、霞の身体は宙に浮いていた。無意識にに巫女の力が出ていたのだ。
「イタァー!」
霞が声を上げ頭を押さえた。浮き上がったことから、知らぬ間に頭を天上にぶつけたのだ。おかげで朝ボケしていた頭が覚めた。
「そうだ。日御乃神社で会えばいいんだ。何かあれば、実菜穂さんと陽向さんにも相談できるよ。うん、よし」
スマホに返事を打つとすぐに香奈から返事が来た。
「神社?分かりました。9時でいいですか」
「言葉遣いが変わったよ。とりあえず、OKで」
返事を打ち込むとパジャマを脱ぎ捨て、シャワーを浴びに部屋を出た。
日御乃神社に霞はいた。ここに来るのは二度目だから、道に迷うことはくすんなりと来た。巫女の力を使えば飛ぶこともできるのだが、ここは自転車で行くのが自然であろうと、前回同様に暑さのなかペダルをこいだ。木陰にあるベンチに腰を下ろすと、ツクツクボウシの声ご耳をかすめていく。実菜穂と陽向の姿はない。午後に約束しているのだから、いないのが当然である。祠の前で見た女子と男子の姿も見あたらなかった。姿は見えなくても奥に籠もっていることは、いまの霞には分かっていた。こちらを見つめる眼は優しく、それで温かいことは伝わってくるのだ。
(来たかな)
ピンと閃いたように顔を上げて鳥居を見ると、香奈の姿を見つけた。軽く手を挙げ、香奈を迎えた。香奈は一人できたようだ。昼間の私服姿は夜とは違い同じ中学生として可愛く見えた。
「ごめんなさい。待たせてしまいました」
香奈が霞の前に駆け寄ってきた。
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