聖女様が微笑む旅路

ステスタ

プロローグ 信仰する国

 神様はいなかった。

 この世に生をけ、神様に祈りを捧げ続けたというのに結局神様は私に何もしてくれなかった。

 奇跡を求めるのは傲慢。生を持った時点で十分過ぎる奇跡を頂いている。神父様はそう言うが少しくらい助けてくれてもいいんじゃないかと私は思う。

 だって、私は聖女として選ばれた日から一度も休むことなどせずに毎日毎日祈りを捧げたのだ。高熱が出た日だって。母が亡くなっていた事を知った日だって。

 ただただ、祈り続けた。だから少しくらい奇跡を授けてくれてもいいのではないか。

 真っ白だった修道服も煤と泥で汚れ、逃げる途中で転んで出来た傷から血が出ている。

 

 「・・・神様はいない。だから、私を助けてくれなかったんだ」

 

 一人で呟いた。それから燃える教会を後ろに歩き出す。

 

 「私の祈りが足りなかったせいじゃない。祈りを向けても神様はいないから・・・」

  

 自分に言い聞かせる様に呟き続けた。

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