みかん箱と少年の話
これは私の亡くなった父に聞いた話で、もう相当に昔の話になるので本当なのか嘘なのかわかったものではないのですが、どうも印象に残っていたのでお話しさせていただきます。
父は戦時下で幼少期を過ごした人で、10歳まで東北の方に疎開していたんです。その後戦争が終わって、東京に帰った父が見たのはひどい有様だったそうですよ。あちこち焼け野原で地獄絵図だったと、陳腐な言葉ですけれど実感のこもった声音で言っていました。
そこで、父は奇妙な子どもにあったそうです。父より少し上くらいの男の子で、ボソボソと焼けたみかん箱に話しかけている。
「俺がこんなところに隠れろなんて言ったから」そう聞こえたそうです。
ご家族を亡くして気がふれてしまったのだろうと、父はそう思いました。
けれど、次の瞬間父は耳を疑いました。
「あにさん」
女の子の声が、箱の中から聞こえたそうです。
父は両親に呼ばれてその場を後にし、後のことは知らないそうです。
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