【台本】夢の中のメッセージ

たぬきち

いつもの日常

語り手S 「やあ、いきなりだけど、みんなは《夢》ってあるかな?例えば、将来こんな仕事をしたい、こんな大人になりたいなんていう夢、一度は考えたことあるんじゃないかな?なんでそんな質問をするのかって?そうだね、あまりいえないけど強いて云うならこの物語のテーマだからかな。どういうことかって?教えてあげたいのは山々だけどネタバレになっちゃうからな~小説を読む時は最後のページから読むって?君たちとは気が合いそうだ。おっと、もう少し話していたいけどそろそろ時間が来てしまったみたいだね。さて、この物語は夢に向かって進み考える人々の物語。最後までお付き合い下さい。おや?これは失礼、自己紹介がまだでしたね。わたしはこのストーリーの案内人『S』と申します以後お見知り置きを…」


   暗転


   明転 学校の教室内この物語の主人公 色野茜いろの あかねが机の上に置いてある箱を見つめている。


アカネ 「う~ん、これどうしよう」

マル  「どうしましたアカネ?」

アカネ 「あ、マル!実はね、さっきこんなモノを拾ったんだ(箱を手渡す)落とし物かと思って持ってきたけど名前が書いてなくて中身を確認しようにも全然開かないんだ」

マル  「(箱を受け取り)そうですね、確かにどこにも書いてありませんね。みんなに聞いてみましょうか」

キノセ 「話は聞きましてよ」

マル  「おや?キノセさん」

キノセ 「ワタクシが叩き割ってあげますわ」

アカネ 「ダメだよ、誰のかまだ分からないのに叩き割るなんて」

キノセ 「こんな頑丈そうな箱きっとこの中には宝石などがあるに違いありませんわ。そして、それをワタクシが頂きますわ」

マル  「すごい堂々と強奪宣言していますがダメですよ」

キノセ 「そこまで云うなら仕方ないですわね。それなら、男子に無理やりこじ開けさせますわ。そこの、御二人さんちょっとよろしくて?」


 箱を持って近くで話していた二人の男の子に話かける。


ミズキ 「?」

クウタ 「どうしたの?キノセさん」

キノセ 「ちょっとこちらの箱を開けていただけませんか?」

クウタ 「え?」

マル  「いきなりすいませんね。カクカクシカジカなんですよ」

クウタ 「なるほど、それならぼくよりもみっくんのほうが力があるから。みっくんやってもらえるかな?」

ミズキ 「ん、わかった(箱をキノセから受け取る)………ムリ」

マル  「諦めが早いですね」

トウマ 「なにしてるの?」

マル  「おっ、金庫などを開けるのが得意そうなトウマくん丁度いいところに」

トウマ 「誤解を招きそうな言い方だね」

マル  「まあ、とにかく説明は割愛でコレを開けてください」

トウマ 「よく分からないけど任せて。(ミズキから箱を受け取る)こういうのはね何処かにボタンなどがあってそれを押すと開くようになっているはずだよ。だから、隅々まで探せばきっとボタンが…ボタンが…ないね」

キノセ 「なんですの、期待させておいて役に立ちませんわね」

マル  「そうですよ、一体今まで何の為に金庫あさりをしていたんですか?」

トウマ 「なぜかすごい辛辣なことを云われているんだけど…それと、金庫あさりなんてしてないよ」

レイタ 「全く君たち朝から騒がしいよ。仕方ないね僕がその箱を開けて上げようじゃないか」

キノセ 「いえ、結構ですわ」

レイタ 「なんで?」

マル  「恐らくメガネくんにも無理だと思われます」

タケル 「そういえば、ボタンじゃないけどこの箱、何か付いているよね」

アカネ 「うわっ!びっくりした!」

マル  「タケルくん、急に出てこないでくださいよ」

タケル 「じゃあ、今度から徐々に出てくるとするよ」

マル  「そういう意味では…まあ、それは置いておいて付いてるってこの星のマークのことですか?」

タケル 「そうそうそれ(トウマから箱を受け取る)蓋のところにいくつかあるよね」

アカネ 「確かになんだろうこの星のマーク」

マル  「気になりますが分からないものは仕方ありません。とにかく持ち主が特定できる物さえあればいいのですが」

ミズキ 「もしかしたら、ねえ、なら分かるかも…」

アカネ 「そっか、ミズキのお姉さんって確かアンティークショップを開いていたよね」

マル  「アオイさんならこういったものは詳しかった気がします」

アカネ 「じゃあ、決まりだね。学校が終わったらアオイさんのところに行こう」


   暗転


   明転 放課後校内のグラウンドの前をアカネとマルが歩いていると突然ボールが飛んできた。


アカネ 「うわあっ!!」


 ボールが手に持っていた箱に当たり箱を落とす。


マル  「大丈夫ですか!?アカネ!」

アカネ 「うん。わたしは大丈夫」

ハヤシ 「ごめんね!君たち(駆け寄ってくる)怪我はないかい?」

マル  「アナタは確かハヤシ先輩でしたか?急にボールが飛んできたものでびっくりしました」

ハヤシ 「本当にごめんね、打ったボールがまさか後ろの柵を越えるとはね…はい」


 箱を拾いアカネに渡す。


アカネ 「ありがとうございます」

マル  「でも、飛んできたボールが柔らかいボールでよかったですね」

ハヤシ 「ああ、たまたまソフトボールを使っての練習でよかったよ」

キャッチャー 「おい、ハヤシ!早く戻ってこい」

ハヤシ 「ああ、今行く!とにかく怪我がなくてよかったよ。じゃあ、僕は練習に戻るよ」

マル  「はい、練習がんばってください」

アカネ 「ねえ、マル。今の知ってる人?」

マル  「知ってる人と云ってもちょっとしか知りませんけどね。ほら、あそこ観てください」

女性1 「きゃー、ハヤシ先輩今日もステキー」

女性2 「今日もすごい球魅せてくださーい」

女性3 「やったーストライクよ」

男性  「あのキャッチャーいい音鳴らしやがる」

マル  「まあ、ああいったようにハヤシ先輩ファンクラブが出来る程知名度があるので私も噂程度ですが知っています」

アカネ 「へーそうなんだー」


   アカネとマルその場を後にする。その後タケルがその場を通りかかる。


タケル 「あれ?これって」


 地面に落ちていたモノを拾う。


   暗転



   明転 アンティークショップで箱を見てもらっている。そこには、アカネ、マル、アオイ、猫のシロがいる。


アカネ 「どうかな?アオイさん」

アオイ 「そうだね、見たことある気がするよ」

マル  「やはり、アオイさんはこの箱のことをご存じでしたか」

アオイ 「確かにどこかで見たことがあった気がするんだけど詳しくは覚えてないな…でも、その箱を開けるには特別な手順をしないといけなかった気がするな」

アカネ 「特別な手順?」

アオイ 「うん、でも、すごいうろ覚えなんだけど開けると楽しくて大変なことが起きるって何かの本で見たんだよね」


 箱を机の上の飼い猫シロの横に置く。


アカネ 「楽しくて?大変なこと?」

マル  「矛盾していますね」

アオイ 「まあ、今は誰のか分からないならワタシが一旦この箱預かっておこうか?」

マル  「そうですね、ここなら置いておいても安全かも知れませんね。もしかしたら、落とした人がここならあるかもしれないと来るかもしれません」

アカネ 「そういうことなら、アオイさんおねがい」

アオイ 「任せて」

マル  「それにしてもアオイさんのお店って変わったモノやどこか懐かしく感じるモノが一杯置いてありますね。例えばこのダイヤル式の電話機とか昔おじいちゃんが使っていた覚えがあります」

アカネ 「わたしはこれとかかな、(それを手に取る)このゲーム機小さい時に一杯遊んだ覚えがあるよ」

アオイ 「それね、ミズキが小さい時に遊んでいたゲーム機なんだ」

マル  「思い出の品って事ですか?」

アオイ 「うん、ミズキにとって思い出のモノだね」

マル  「それなら何故お店に並べているんですか?」

アオイ 「ミズキが今は使わない自分よりも使ってくれる人に渡ったほうが良いって云っていたからかな」

アカネ 「確かに古いモノもきっと誰かに使ってもらえれば幸せだね」

アオイ 「そう、ワタシがこの仕事をやっている理由はね、最近は新しいモノに目移りしがちだけどその新しいモノが出来た過程には必ず古きモノがあってそれを少しでも知ってもらえる様にそしてその懐かしいモノを使える様に修理して少しでもいいから興味を持って欲しいんだ」

マル  「そうですね、今の電話機はとてもコンパクトに成りましたがそれに到るまでは色んな種類が出ましたからね、この電話機もその過程ということですね」

アカネ 「うん、そうだね、きっとこの箱も誰かの大切なモノかも知れないから早く持ち主を見つけないとね」

アオイ (ほほ笑む)

アカネ 「それにしても、この箱こんなに頑丈に蓋が開かないなんてそんなに大事なモノが入っているのかな?」


 箱を手に取り埃を払うように擦る。


マル  「まあ、先ほどアオイさんが云っていたように開けたら楽しくて大変なことが起きるらしいので出来るだけ箱を開けないようにしましょうか」

アカネ 「そうだね、あっでも、もしかしたら『開けゴマ』で開いたりしてね」

マル  「この期に及んでそんなベタな呪文で開くわけ…」

    

    マルが云い終わる前に突然箱が光り出す。


アカネ 「うわああ!なに!?突然光り出したよ!?」

マル  「ええ!?そんなベタな展開なんですか!?」

アオイ 「まさか、思ってたより条件緩かった感じ!?」

三人  「うわあああああああ!って、あれ?」


   しかし、なにも起こらなかった。


アカネ 「なにも起こらなかったね…」

マル  「私はてっきりこの後異世界に飛ばされる展開かと…」

アオイ 「あ!でも見て箱が開いているよ」

アカネ 「ホントだでも…なんにも入ってないね」

マル  「これを見たらキノセさんは残念がりますね」

アカネ 「それにしても、なんだったんだろうねさっきの?」

アオイ 「まあ、とりあえず何事もなくて良かったね」

マル  「そうですね、異世界に飛ばされなかったのは残念でしたが…」

アオイ 「あっ二人とももうそろそろ日が暮れそうだよ」

アカネ 「ホントだ、もうそろそろ帰らないと」

マル  「では、アオイさん今日はこれで失礼します」

アオイ 「気を付けて帰ってね」


   暗転


   明転 語り手S登場


語り手S 「さて、本当に何も起こらなかったのだろうか?厳密にいえば『まだ』何も起こっていないだけだったんだけどね。この後一体何が起きるのかって?じゃあ、続きを観てみようか」

 

   暗転

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