時空超常奇譚4其ノ五. 超短戯話/冥界神の降臨

銀河自衛隊《ヒロカワマモル》

時空超常奇譚4其ノ五. 超短戯話/冥界神の降臨

超短戯話/冥界神ハデスの降臨

 この広大なる宇宙に、地球外生命体が存在する可能性はほぼ100パーセントだと言われ、CETIセティという地球外ヘメッセージを送る試みが実施されている。その一方で、それに対する重大なリスクに警鐘を鳴らす人達がいる。その理由は至極簡単、地球外生命体が必ずしも善良な存在とは限らないからだ。そのリスクを完全に否定出来る根拠はない。より進化した地球外生命体から地球が攻撃を受けないとは言えないのだ。

 物理学者であるホーキング博士が主張したように、悪意に満ちた地球外生命体によって地球は瞬時に侵略される可能性は高く、有名な米企業CEOイーロン・マスクはCETIによる宇宙へのメッセージ送信を即刻中止するよう米政府に求める請願運動を行っている。

 ある日、巨大宇宙船が地球にやって来た。

 夜空に光が現れ、光の一つが外宇宙から一気に地球に降り立った。森の中に静かに降り立つ異星の船から現れる異星人達は、近づいて来た地球人の子供達と遭遇した。

 異星人を見た子供達は、怯む事もなく話し掛けた。子供達は恐怖心を包み込んでしまう好奇心を持っている。


「君達は誰?」

『-@hqaf4oopetogq(ボク達はウララ星から来た)』

「あれ、言葉が理解出来るぞ」

「オレって超能力者かな?」

『b;fw;f[d\q@9(これはテレパシーだよ)』

『5,.g@\2@chw@2d@a'hdq(エネルギー不足でこの星に不時着した)』

『4ntod@(4reckmsiu.nr@mo4,(海から重水素の元になる水を貰うね)』

 ウララ星人は、宇宙船ごと海に潜って取水した後、子供達にスティック状の何かを手渡した。子供達にはそれが何なのかはわからない。

『6;eib;3:@.(お礼にこれをあげる)』

『ckrwEZhiz9eatol\yt@reZw(そのスティックに強い力理論が入っている)』

『d@(4l)hl\ym,(重力理論もね)』

『th84b@4\kutickrwEZhe;;f@ck,zw@rwEZhktg@t@voh94iuZwe.(核融合炉の中に、そのデータスティックを入れればその熱で鍵が開くようになっている)』

『d)4ng:@yfeaiaq@9(賞味期限は1日だよ)』

『eou:;f@rwwee9(いらなければ捨てていいよ)』

 子供達にそう告げたウララ星人は、人知れず宇宙へと飛び立っていった。

「何だこれ、ソーセージみたいだな」

「強い力とか重力理論って何だろう?」


3Zth84b4\0qrk0r;qあっ、核融合炉を渡すのを忘れた

th84b@4\h@oe3.q@\4核融合炉ぐらいあるだろう


 異星人が残していったデータスティックのソーセージには地球人が未だ到達していない素粒子の強い力と重力を解明する貴重なデータが入っていたが、残念な事に子供達がその意味を理解する事はなかった。

 とは言っても、そもそも地球は必須解読アイテムの核融合炉を造るテクノロジーが存在するレベルに達していないので、そのデータを理解出来たかどうかは疑問だ。

 1日の賞味期限を過ぎたデータスティックのソーセージは氷のように溶けて消えた。彼等ウララ星人には、地球侵略などという発想は存在しなかった。

 異星人が必ずしも悪者とは限らない。

 だがしかし、愈々いよいよその時はやって来た。いつか、侵略者が襲来するかも知れない事は予想されてはいたが、それが恐怖の冥界神ハデスだとは誰も思わなかった。

 冥界神ハデスは、B級映画にあるような空に群がる異星人の夥しい宇宙船の群れが地球の都市を破壊していく……のではなく、インデペンデンス・デイのようにいきなりNYに超巨大な異星人の宇宙船で現れる……のでもなかった。


 NYの朝、人々は天空に鎮座する龍の形をした巨大生物の姿を見た。

 巨大な龍は空を舞い、疾風かぜのようなスピードで超高層ビル群をなぎ倒し、街を破壊し、そして人々を真っ赤な炎で焼き尽くした。

 龍の攻撃はアメリカ東海岸に止まらず、サンフランシスコ、ロサンゼルスの西海岸にも及び、あっという間にアメリカの主要都市が廃墟と化した。そして、更にEU、日本を含むアジア各国も龍の無差別攻撃に晒された。

 世界に誇るアメリカ軍は空から戦闘機F35と地上から戦車M1エイブラムスと地対空パトリオットミサイルで応戦し、当然の如く各国も反撃したものの、その攻撃は龍が纏う電磁バリアーに無効化され、何の効果もなかった。


 我が物顔で暴れ回る龍に対する最終手段は、核弾頭搭載ミサイル以外になかった。

 核保有国のアメリカ、EU、ロシア、中国、インド、パキスタン、イスラエル各国から一斉に核弾頭搭載ミサイルが発射された。これで冥界神ハデスの龍を消滅させる事が出来る筈だった……だが、龍はそれさえ造作もなく蹴散らし、狂ったように地球上のあらゆる地域を破壊し尽くしていった。


 こんな時は、崇高なる神の使いである救世主が現れて悪魔たる龍を消滅させるか、或いは宇宙の彼方からスーパーマンかウルトラマンがやって来て地球の危機を救うか、はたまた屈強なアメリカンヒーロー達が、無敵のアニメキャラ達が悪魔たる龍を叩き潰してくれる筈だった。

 だが結局、待てど暮らせど救世主やヒーロー達は姿を見せず、ガンダムもマクロスのバルキリーも、人型機動兵器ファフナーもシドニアの二零式衛人にぜろしきもりと劫衛ゆきもりもエヴァの初号機さえ現れなかった。

「インデペンデンス・デイ」のようなバリア無効化も出来ず、「宇宙戦争」のように地球のウィルスで龍が死んでしまう事もなかった。


 全地球規模の未曾有の大惨事によって、人類は滅亡の時を迎えようとしていた。

 そして、そんな人類を嘲笑うかのように、突然龍は天空へ昇り、去っていった。


 宇宙に輝く太陽光を反射する巨大な龍の首には『☆Θポチ』と書かれたプレートが付いている。

『あっ、ポチがお散歩から帰って来たぁ』

『そう、良かったわね』

 光速で航行する宇宙船に追随する龍は、気まぐれに天の川銀河を駆け回った後で、満足そうに船に戻った。

『この天の川銀河には、『チキュウジン』というトンデモなく凶暴な生物の棲む星があるらしい、関わり合いにならない内にとっとと離れよう』

『クワバラ、クワバラ』


 明日何が起こるかは、誰にもわからない。


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