序之四
流れるようにそこまで話すと、蒼頡はそこで一旦話を止め、一呼吸置いた。
家康は
目の前の子どもの話にしっかりと耳を傾け、聞き入っていた。
口を真一文字に結び、じっと視線を送ってくる大御所の瞳を真っ直ぐに受け止めると、その力強い眼力を、きらりと輝く曇りなき
「────海の上に続く書の道をひたすら
書の道は、まるで江戸殿を
江戸殿は、覚悟を決めた御様子で書の道を必死に駆け渡り、その妖しき
そうして、江戸殿が
大岩を
周りは、まるで
視界は
徐々に江戸殿の心身は消耗し、やがて鋭い痛みとともに全身の皮膚があちこちで小さく裂け始め、血が噴き出してまいります。
意識は
すると江戸殿の目の前に、闇を突き刺すかの如く、一筋の小さな光が差してまいります。光に気がつかれた江戸殿は、重くなった足を引きずりながら、無我夢中で、光の差す方向へと歩み始めます。
じわり、じわりと近づくと、次第に光が大きく輝いてまいります。
江戸殿がそのまま一歩ずつ歩みを進めてゆかれますと、その光の中に、江戸殿の身体は勢いよく吸い込まれてしまわれます。
そうして吸い込まれた先────その、まばゆく輝く光の中に……────」
突如目の前の子どもが、話の途中で口を閉ざした。
家康は異変に気付いた。
蒼頡の
先程までの幼い子どもの目つきから、その
続けて口を開き話し始めた蒼頡の
幼い子どもの口から、すっきりとよく通る成人の男の低い声が、家康の鼓膜から脳内へ、はっきりと響き渡った。
「……江戸殿。お伝え申し上げます。
秀忠殿の
このままでは、
この御方がお生まれにならなければ、江戸もこの国も徳川家も、何もかも全てが崩落し、新たな戦乱の世が再び巻き起こることになるでしょう。
この事態を、未然に防がなくてはなりませぬ。
事は一刻を争います。
江戸殿。この夢から御目覚めになりましたら、どうか私を、
必ず────お呼びくださいませ……────」
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