序之二
江戸の外れの山奥に住むという、一人のとある陰陽師の噂を聞きつけた家康は、
会津に
その陰陽師について、家康は以前、少しばかりの噂を耳にしていたことがあった。
一年程前である。
「元々
これまでに三度、あの陰陽師様が言う通りの日にちと方角から寺の
ほんに、やりやすいったらねえです」
その陰陽師が、数日前にとある呉服屋に現れた怨霊を見事に
家康はいよいよ、この陰陽師に興味を持った。
会津征伐も間近に控えている、重大な時期であった。
一度、この名高き陰陽師に戦の勝機や動向をしかと
招かれた陰陽師は白い
陰陽師の受け答えはまことに冷静で極めて落ち着いており、征夷大将軍を目の前に、
会話の中で家康はふと、
「その
と、帝鴻に向かって聞いた。
「はい。我が子にござります」
帝鴻が答えた。
「そなたの式では無いのだな」
家康はそう言って笑みを含むと、子どもの顔をじ、と見た。
子どもは、きらきらとした大きな瞳を家康の方に向けていた。
「ふむ。……そなたによう似ておる」
帝鴻に向かってそう言うと、家康は子どもに向かって話しかけた。
「名はなんと申す」
子どもは、瞳をきらりと輝かせた。
「
家康に向かって、幼い蒼頡がはっきりとしたよく通る
この時家康は、この
しかし次の瞬間、家康を見つめていた蒼頡の顔がぐっと真剣な顔つきに変わり、その大きな瞳から、一筋の涙が、ぼろりと
「……なんだ。どうしたのだ」
家康が思わず、蒼頡に向かって
左腕を
「────いえ。なんでもござりませぬ。
ただ、江戸殿を見つめておりましたら……。
視えてしまいました
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