第4話

 6日

 プーケットはタイ最大級のリゾート地で、「アンダマン海の真珠」とも呼ばれている。 その呼び名の通り、真っ白な砂浜やエメラルドブルーの海が魅力の美しい島で、ハリウッド映画などのロケ地に使われることもある。

 タイでは麻薬、猥褻物、一部の果物・野菜・植物、知的財産侵害物品等の持ち込みは禁止されている。 違反した場合には、10年以下の懲役または50万バーツの罰金のいずれが科せられる。

 朝食は龍臣がトーッマン・クン(ทอดมันกุ้ง):海老を使ったタイ風薩摩揚げ、トムヤムクン(ต้มยำกุ้ง):エビなどが入った酸味のある辛いスープ、春雨のヤム(酸味のある和え物)、カオソーイ(ข้าวซอย):ココナッツミルクと香辛料を用いた北部地方のミャンマー風汁麺だ。

 桜はトーッマン・プー(ทอดมันปู):蟹を使ったタイ風薩摩揚げ、トムカーガイ(ต้มข่าไก่):鶏肉をココナッツミルクで煮込んだスープ、カオマンガイ(ข้าวมันไก่):鶏を丸ごと茹で、そのスープでご飯を炊いた料理。茹でた鶏を切り身にして上に乗せて供する。

 食事を終え、龍臣はゲップした。

「も〜汚いなぁ」

 桜は眉を顰めた、その直後「グプッ……」

「自分だってしてんじゃん」

 ホテルのロビーに猫ひろしに似た男がいた。

「もしかして、猫ひろしさんじゃないですよね?」と、龍臣。

「岡本って言います」

「観光ですか?」

「ええ」

「プーケットの治安ってどうなんです?」

「タイの中でも治安が良いエリアです。しかし、観光地であるがゆえに、観光客を狙った軽犯罪が起こっているのも事実です」

「教えてくれて、どうもありがとう。ところで、岡本さんは何をされている人ですか?」

「私は医者です」


 午前10時過ぎ、ムアンプーケット郡に2人はやって来た。タイ南部にある郡(アムプー)。プーケット県の県庁所在地(ムアン)でもある。

 古くはアユタヤ時代から中国人が住み、現在のプーケットの町の元を作り上げていた。1876年アンイーと呼ばれる錫採掘者が反乱を起こし、プーケットで暴れ回ったがワット・チャローン(ワット・チャイターラーラーム)のルワンポー・チェームとルワンポー・チュワンが巻き込まれてけがをした村人を救った。この為、ルワンポー・チェームは市内のヒーローとなっている。


 ラーマ4世(モンクット)の治世の時、プラヤー・プーケット (タット) がプーケットの国主に任命され、郡は郡庁が置かれたタムボン・トゥンカーにちなみトゥンカー郡と呼ばれたが、1938年11月14日、市の名前は正式にプーケットとなった。

 

 プーケット市はプーケット島の東岸部南半分と島の南端部分周辺を有する。プーケット市の中心部は東岸部に位置する。中心部のすぐ東側にはシーレー島があり、シー・ジプシー(モーケン族)の居住地となっている。東南の半島部分にはプーケットとその周辺の海洋生物を研究するための海洋生物研究センターがある。

 観光業が盛んなほか、東南の半島部分にはラッサダー港があり、その周辺にはタイ国営石油(PTT)、エッソ、カルテックスなどの石油会社による石油備蓄基地がある。

 郡内の主要産業は農業で、ゴムの木や、ココヤシ、パイナップル生産が盛んである。

 

 岡本はかつて、静岡にある大病院で医者をしていた。彼は遺跡巡りが好きだ。登呂遺跡で不思議な『金将』の駒を手に入れた。

 通称は「金」。銀将と名前や動き方が似ているが、銀将と異なり本将棋では成ることができない。基本的には自陣の王将(玉将)周辺で囲いを構成する駒として防御に使われることが多い(ただし、対石田流の棒金など金将を初期配置から前線に出して攻撃に用いる戦法もないわけではない)が、持ち駒として使う場合など、終盤の寄せや詰めでも多用される。例えば最も基本的な詰み形の一つとして「頭金」がある。また、横に動ける共通点から、飛車と金将を総称して、「横駒」と呼ばれることもある。前述のように攻撃にも防御にも多用されるために、「金なし将棋に攻め手なし」、「金なし将棋に受け手なし」という格言がある。


 本将棋では、角行と比較した場合、動けるマス目の数は角行の最大16マスに対し、金将は最大6マスと、これだけを見ると圧倒的に少なく、常識的な価値判断でも金将の方が低いとされる。しかし、角行は竜馬に成らない限り、何手かけても筋違いのマス目に移動できず、接近戦や詰めには不便な駒とされているのに対し、金将は接近戦に強く、頭金など詰めにも役立ちやすく、手数をかければどの地点にも移動でき、動ける方向の数も金将の方が多い。このような特徴の違いから、コンピュータ将棋による研究などもあって、角行と金将の価値はほぼ同じではないかという説もある。


 名前と動き方から、銀将と同じ系列の駒と思われているが、歴史的にはチャトランガの将軍に相当する駒である。海外の将棋類では日本将棋で言う王将の隣にチャトランガの将軍に相当する駒が配置されている。チェスではクイーン、シャンチーでは士・仕、チャンギでは士、マークルックではメットが日本の金将およびチャトランガの将軍に相当する駒である。それぞれ動きはかなり異なるが、シャンチーの士・仕とチャンギの士は盤面の王宮(九宮/宮)から出られないので完全に守備専用の駒となっているのが特徴的であり、残りは動きが強い(利きが多い)順にクイーン>金将>メットとなっている。またチャトランガの兵に相当する駒(将棋では歩兵、マークルックではビア)が昇格(成り)した場合の成り先としてチャトランガの将軍相当の駒が選ばれている将棋系ゲームも、将棋以外にもマークルックなどいくつか存在する。


 駒字の表現としては、金将の駒自体のサイズが玉将より小さい分「金将」の「将」はサイズは変わるものの、「玉将」の「将」とほぼ同じ表現となっている書体が多い(対して銀将の「将」はより略された書体が多い)。

 

 この不思議な駒は殺した人間を金に変えることが出来る。

 午前11時、岡本はパトンビーチにやってきた。

 プーケットの中でも人気の高いリゾート地であり、ビーチ近辺にはホテルや飲食店が数多く立ち並んでいる。ナイトライフで有名なバングラー通りにはバーやディスコ等も数多く、深夜まで旅行者で賑わっている。


 2004年12月26日、スマトラ島沖地震が発生し、大規模の津波によって多数の死傷者を出した。ビーチ近辺のホテル・レストラン・商店などの観光施設も大部分が破壊された。その為一旦は観光客も激減したが、その後の急速な復興によって津波以前と変わらぬ賑わいを見せるようになった。

 あの男には観光といったが嘘だ。


 岡本は、バンコクにある『スア病院』で働いている。スアはタイ語で虎だ。彼の彼女で医師のアイムも同じ病院で勤務している。

 同病院は大病院で、非常に頻繁に手術が行われている。ある日、アイムの親友のアナが、ごく平凡な中絶手術を同病院で受けることになった。ところがアナは手術を受けたあと、覚醒せず昏睡状態(植物状態、脳死状態)に陥ってしまった。親友を失ったアイムはひどくショックを受けた。


 💀4人死亡 残り3人

 

 同病院では、アナの死と同時期に右ひざ関節の手術を受けた若い男性も、植物状態に陥るという事故が起きていた。同病院において軽い手術を受けただけの人間が次々と植物状態になってしまうことに岡本は疑念を抱き、調べてみることにした。まずはアナのカルテを見てみようと担当麻酔科医のアスニにそれを頼んだ。アスニはタイ語で稲妻を意味する。36歳の男性だ。

 アスニは「異国のお前に教えるわけないだろ」と突っぱねた。仲間だと思っていただけに愕然とした。

 岡本は我に返った。波が荒くなりつつあった。

 

 呂宋たちはなかなか手がかりを掴めないでいた。

 3人は午前11時、ジム・トンプソンの家にやってきた。タイのバンコクパトゥムワン区にある博物館。現在はバンコクでも人気の観光地のひとつとなっている。

 アメリカの実業家でタイのシルク王ジム・トンプソンが、マレーシアのキャメロン・ハイランドで謎の失踪を遂げる直前まで住んでいた家。1950、60年代に彼がタイ各地で集めてきた種々の建築様式が取り入れられている。


 トンプソンはシルク会社を立ち上げた頃、東南アジアの芸術作品を集めていた。トンプソンはタイだけでなく、当時のビルマやカンボジア、ラオスも仏教芸術品の収集先としていた。しばしばこれらの国に作品を収集するために出かけていた。ジム・トンプソンの家には、トンプソンが収集した仏教芸術作品などが展示されている。


 1977年の日本映画『激殺! 邪道拳』でロケーション撮影にも使われた。

 トンプソンの家が蘭丸とスシにサブマシンガンで襲撃され、呂宋は危ないところを残間に救われる。機密ディスクが陰謀の主犯であるスシの手に渡ってしまうが、呂宋が知り合いの記者に渡す筈だったコピーがあることが判明し、スシは記者を殺害させ彼の行方を探す。

 💀5人死亡 残り2人


 呂宋を隠れ家に移した残間は、竜崎の連絡を受け、彼からアナというタイ人が殺されていることを聞かされる。アナはマルスに力を貸してくれていた。

 内部に裏切り者がいると考えた二人は証人の保護に向かうが、単独行動に出た竜崎によって証人が殺害されてしまう。その証人とは麻酔科医のアスニだった。背後から竜崎にダガーナイフで刺し殺された。

 💀6人死亡 残り1人


 スシと手を組んでいた彼は、残間を言い包めて呂宋を保護するためにジェット機に乗り込む。竜崎は残間に睡眠薬を飲ませ、その行動に不信を抱いた中井捜査官をダガーナイフで殺害する。残間は気を失う寸前に呂宋に通信を送り、危機を知った彼は事前の打ち合わせ通りに王宮に逃げ込む。 

 タイのバンコク・プラナコーン区にある王宮はタイ国王の「公的」な居住地であり、国内すべての宮殿の中でもっとも重要とされる宮殿。ただし、実際にはラーマ9世以降国王は居住しておらず、日常的な公務もここで行われていないが、戴冠式、上級王族の葬儀、国王誕生日謁見の儀などの重要式典は、ここが使用される。大まかに外朝と内朝に分かれているが、一般公開されているのは、外朝の一部のみで、内朝は公開されていない。また、現在一部の区域がウボンラット王女の住居としても確保されている。 

 王宮はおおざっぱに北から寺院(ワット・プラケーオ)やかつて公官庁が存在した外側部分、国王のオフィスである中間部分、国王の家族が居住する内側部分となっており、宮殿の北側を「前」と表現するなど北向きを意識して建てられた宮殿である。

 

 竜崎は再び、残間を仲間に引き込もうとするが、拒否されたため彼を殺害しようとするが、銃撃戦の末にパラシュートで逃げられてしまう。


 呂宋は残間を助けに王宮に向かうが、既に竜崎たちが先回りしており、彼は追い詰められてしまう。そこに残間が到着して呂宋を助け出し、王宮から脱出する。

 

 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る