抜かぬが勝ち

ろくろわ

第1話 仇を討つのは役目

時は令和。


明治に検討された廃刀令は、日本人の誇りを護る為に見送られた。

また近隣各国からの情報も極力減らし、日本独自の発展を目指した政策。

【局地的鎖国令】と【部分的開国宣言】により、日本は近代化と旧き良きが混在する国となった。


と呼ばれる物で固められた建物は、随分と住みやすい住居を造り、手紙を届ける飛脚や駕籠屋かごや韋駄天靴いだてんくつ。通称と呼ばれるもののお陰で随分と速くなった。

町中には腰に刀を差し、往来の道を徒歩で移動する人で溢れている。

と言っても、往来の中で抜刀する事は固く禁じられており、ましてや他者を傷付けようものなら処罰の対象になる為、腰に差すだけの安全なものであった。


但し、例外はある。


【敵討ち両成敗法】


以下の手順を厳守することにより、刀による死合いが認められていた。

①敵討ちの名目と名乗りあげ。

②相手が同意し、名乗りあげ。

③以上の名乗りを聞き、双方にとって関わりの無い第3者がその見届け人として死合いに立ち合う。

④死合いがいかなる場合の結果となっても、その経過を保健所に届ける。


まぁ、こんなに面倒くさい手順を踏んでまで敵討ちを行う奴はいないのだが。




物語は、ここにいる山田やまだ 一新いっしんが通う道場が道場破りにあい途方に暮れていた時、目の前に師範代の仇。佐藤さとう 神六じんろくを見つけた所から始まる。


令和の暑い日。

もっとも長い仇討ちが始まる。



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