第5話 夢の終わり
冒険者による奮起はその思い虚しく容易くねじ伏せられていった。
そもそも無理があったのだ、バンレスト王国は都市国家を侵略していった大国であり、尚且つ現地の有力な冒険者を軍に引き抜いて来た、私、クリンも結局時代の荒波には抗えず、言い訳ばかり上手くなって、先月まで同業者だった人達を捕まえていく。
「何をしているんだろう」
リオは見つからなかったのは幸いだった、反乱軍になっていたらどうなっていたかわからない、軍は私のように律儀に捕まえるお人好しばかりではない、というか私は異端だ。
これが許されているのは同僚に元冒険者が多くいるからだろう。
まぁ名目上は仲間の場所を白状させる為という事になっているのだが。
「リオの奴め、まさか俺に仲間を預けてそのままとは......」
アレクはぐぬぬと言った表情をした。
「どうして一人で行ってしまったのでしょうか?」
「......奴にとって冒険者は夢だ、だけど夢だけじゃ無理だ、奴が冒険者を続けられたのは同じ意志を持つ仲間がいたからなんだよ、前に話したよな死んだパーティの話」
リオの元パーティの二人は争いを仲介しようとして殺されたという話は聞いた。
「奴の心を知る奴はみんな死んでいった、もう青春の情熱は消え、ただの燃え滓だ、いつ死んでもおかしくないくらいにな......」
だからアレクはどうにか冒険者という鎖からリオを救おうとしていたのだ、冒険者にはどうせ先はない、ならば自分が先陣を切り冒険者仲間に別の可能性を示す、そうすれば救われる人は多くなると――
「まぁ肝心なあいつは全く動かなかった......俺はいつか無茶して自殺紛いの事をするって思ってたよ」
「それって――んッ」
何処かで自殺してしているのでは、と言おうとしたのをアレクは分かったのか私の口元に人差し指を乗せる。
「それは君に出会う前の話だ、クリンに出会ってからの奴は活き活きしてた、後人が出て来たのが嬉しかったんだよ」
後ろ姿を見てくれることだけでも救いだったハズ、とアレクは笑いながら言った。
「......そうなんでしょうか、でも私は冒険者を辞めました、彼の願った通りとはいえ、最初の志を裏切って軍に......」
「でも冒険者が好きなのは変わってないんだろう?」
「――」
「俺は違う、元々ラクスナの付き合いで冒険者になっただけだ、仲間は好きだが冒険者というものにはそこまでだった」
アレクは煙草を吹かす。
「あいつは冒険者が消えても、かつてそうであったという輝きだけは後世にも残したかったんだな、くく、昔酔ってた時の戯言を思い出す」
「......」
「どうした?」
「アレクさん、私は諦めていません」
「どういうことだ?」
「冒険者はこの先も消させませんから......」
「......」
「......それと、唇に指を付けるのセクハラですから、ねッ」
「......以後キヲツケマス......」
それから、この思いを胸に秘めながら日々を過ごしていった。
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