愛の証明を
春ノ夜
第1話
愛する人を亡くした後に見た景色は、灰色だった。死を実感するまでは時間が掛かった。
死んだ後に葬儀の準備や親戚への連絡など諸々の準備で忙しく悲しみに浸る余裕なんてなかった。でも、親戚がみんないなくなって、君と2人でいた家に1人でいると、君が死んでしまったことを実感する。
もし君が色を無くしても、僕は君を愛し続けることができる。けど、君を無くして色のないこの景色を愛することはできない。
胸が抉られて、心が叫びたがっている。
涙が溢れてくる。少しでも君のことを思うと涙が止まらない。
君の髪に、頬に、指に、まつ毛に唇にその身体に、触れていたかった。もう触ることのできない君の身体に触れてもっと愛を伝えたかった。
「愛してる」
と言っても、君にはもう届かない。
「触りたい」
君の身体はもうこの世にはない。
「声が聞きたい」
君がもう喋ることはない。
実は一目惚れと告白したプロポーズの時。一目見て運命の人だと感じたと僕が言った時、君も実は一目惚れと言ってくれた。
いつか歳をとって、2人がお爺ちゃんお婆ちゃんになっても、愛を言い続けると約束した結婚式。
最後になりますと言われて、君に触れてあたためてあげたかった葬式。
君がこの世にいなくても、僕はいつまでも叫び続ける。
「愛してる」
君に触れられない手で。君に届けられないこの声で。君の声が聞こえないこの耳で。
君を絶対離さないと誓ったはずの腕も、君から晒さないと誓ったはずの目も。
全てを使って君への愛を証明し続ける。それを判定してくれる君はいないから、君に最後まで君を愛したと、君を愛していたと次に君にあった時に誇れる自分でいたいから。
次に君に会えるのは何年先か分からないけど、君に過ごした時間より長く感じる時間だと思うけど、君への愛を示すにはきっと足りない。
たった数年一緒に過ごした君に、僕の一生を懸けて愛を証明する。
「愛してる」
これが僕の決意だ。
愛の証明を 春ノ夜 @tokinoyo
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