宣伝ニンジャー・ハヤブサ ~インターネット・ジークンドーの脅威~

鷹山夜鷹

第一話

-序-

 英雄は宣伝によって生まれ宣伝によって死ぬ。



 燃えさかる屋敷。リンゴ畑。いまや物言わぬ屍となった旧知たち。

 守ると誓った全てが虚無に帰そうとしている。

 絶望の淵に立たされたこの少女も例外ではなく、人々の希望となるべく救世主だとアイドルだと祭り上げられ、かく非業を背負った過去の英霊たちと同じ末路を辿ろうとしていた。


 いや、辿るハメになってしまった。


 そうさせたのは彼女の出自か、それとも起こした『奇跡』が世界にもたらした災禍ゆえか。はたまた皮肉にも彼女が導き繋いだ人の縁なのか。

 希望の西風を招き、人の意志を一つに束ねて『災厄』を討ち払った彼女。結果、人々の願いによって世界に在ることを許され、長くもわずかな猶予の時を与えられた。


 ならこれは刈り取りなのだろう。


 無いはずのものが在るというのは摂理に反する。正されるべきなのは道理なのかもしれない。


 彼女は俺が生みだした英雄。俺が殺すことになった英雄。


 これは因果の宿命なのだ。


 そうとも。



 そうだとしても――。

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