第45話 魔法を斬る!

(エクス視点)


「それではよろしくお願いします。ジェードさん。」


なんだか剣士の訓練場というよりも魔法使いの訓練場だね。一体何をするんだろう。わくわくするよ。


「うむ。貴様のことは前々からよく耳にした。なかなかの実力を持っていることもな。俺としても一戦交えたいところだが、今回はやつを倒さなければならんからな。今回の戦いにおいて最も有効な技を覚えてもらう。」


「それはどのようなものでしょう。」


「その技の名前を聖騎士流『魂魄切り』という。肉体だけでなく魂もろとも切り捨てる技だ。これを扱うには少々特別な感覚が必要でな。今回はその感覚をつかませるために王国魔術師に協力してもらうことにしたのだ。ミラー、準備はいいか?」


フードを深くかぶっていて顔はあまり見えないけれど間違いなくグリモワールよりも格上だろうね。それにさっきの国王さんと同じ雰囲気を感じるね。


「いいわよ。それで、アンタがエクスね。どこぞのデカブツよりも立派な心を持っているようで感心感心。」


「おいおい、この騎士団にそんなろくでもねぇ奴がいるのかよ。」


「あんたのことよ!そんなことより、私は何をすればいいの?呼ばれるだけ呼ばれて何にも聞いてないんだけど?」


「エクスに魂魄切りを使いこなせるようになってもらう。お前にはそれの手伝いを頼む。」


「あ〜、例のアレね。分かったわ。じゃあエクス。あそこの少し離れた場所で練習しましょう。」


「まあ待て。まだ一度も見せてないから先に俺が手本を見せてやる。エクスはそこで待ってろ。」


「分かりました。お願いします。」


騎士団団長の剣技、どんなのだろう。


「準備も出来たし、日頃の恨みも込めて特大の魔法をぶつけてあげるわ!上級火魔法『聖炎』。」


「中級魔術『魔法複製』中級魔術『魔法圧縮』。よし、準備はいい?」


おお!これが上級魔法か!中級魔法よりも比べ物にならないくらい範囲も大きくて威力も高そうだ。それに魔術。全く聞いたことのないものだね。魔法と何が違うんだろうか。


「いつでも来い。」


「上級火魔法『聖炎一極』!」


「聖騎士流『魂魄切り』。……今のだとエクスが見えねーだろ。加減しろ加減。まあいいか。エクス。このレベルの魔法を斬れとまでは言わん。中級魔法を斬ることができたなら感覚は掴めたといえるだろう。あとはミラーに任せる。ミラーからいいと言われたら再び俺の元を訪ねるがいい。」


「きぃぃぃ!涼しい顔で私の魔法を斬るなんて!」


「ちょっとはヒヤッとしたぞ?ああ、確かに涼しくなるな!」


「くたばれ!寒い!バーカ!もういいエクス!行くわよ!」


「はい。それではミラーさん。よろしくお願いします。ジェードさんもまた後で。」


「おう、みっちりしごかれてこい!」


*****


「……次、お願いします。」


「一旦休憩よ。」


「分かりました。」


まいったな、全くコツが掴めない。太刀筋をジェードさんに似せてもできる気がしないな。


「コツが掴めないって顔してるわよ。はい水。どーぞ。」


「ありがとうございます。なんで出来ないのか、全く分からないんですよね。なにかアドバイスありますか?」


「アドバイスね〜。アンタは今まで手伝ってきた中で1番論理的に剣術を解いていってるのよね。こう言っちゃなんだけど私たち魔術師にすごく向いている性格なのよ。逆に騎士団は感覚で物事を掴んでそれを自分のものにするやつが多いわね。」


「論理的、ですか。」


「そう。こういう時は第六感、五感とは別の感覚を感じる方が案外できるようになるのよ。」


「第六感。そういえば、ヴィーロ様が1度だけ『氣』と呼ばれるものを使っていました。」


「あれは今アンタが手に入れようとしている感覚の2個も3個も上の技術よ。でもまあその感覚がまだあるならできるようになるかもしれないわね。あとは感覚を大事にする事ね。魂魄切りは特に感覚を重要視する剣術だから。」


「氣の感覚ですか。少しだけ時間も貰ってもいいですか?」


「もちろんよ。じっくりと考えるのがいいわ。」


「ありがとうございます。」


あの時に感じた『氣』。多分あれが基礎中の基礎の使い方なんだろうね。急に体が重くなったあの感覚。何があったか分からなかったけど今1度よく考えると分かるような気がする。手の感覚を広げるような。押し潰すような感覚かな?これを押し潰す感覚じゃなくて切る感覚でやるとできる気がする。


「やりましょう。お願いします。」


「わかったわ。準備はいいわね。」


「いつでもお願いします。」


「中級火魔法『火炎槍』」


木剣にも感覚をまとわりつかせる感じであとはタイミングをしっかりと合わせて。


「聖騎士流『魂魄切り』」


手応え有り!


「感覚は掴めたようね!おめでとう!」


「ありがとうございます。でも、もう一度お願いしてもいいですか?感覚をもう少し掴みたくて。」


「もちろんよ。アンタが飽きるまで手伝ってあげようじゃない!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る