パチンコの世界に転生した俺は、知識とスキルを用いて無双します。

@ttma

フラッシュよりフリーズの方が好きです。

 俺の名前は先詠熱志。そこそこの大学を出て、そこそこの会社に入ったはずだが、そこがえげつないブラック企業で、今はその会社を辞めてフリーターをしながら息抜きにパチンコに行くという生活をしている。

 「ふぅ・・・。」

 左手で缶コーヒーを飲みながら右手でハンドルを握る何度も何度も繰り返した行動である


        プチュン


 急に画面がブラックアウトし、思わず目を見開く。座って千円全回転は非常に大きい。帰りは焼肉だな。全回転とは、パチンコの中の演出の一つであり、いわゆるプレミアと呼ばれるものだ。何万分の1の確率で発生し、大当たり、確変が濃厚となる。思わず顔がにやける。肉とか久しぶりだな。いや、まずは連チャンさせないとな。これから連チャンさせようと腕を捲った刹那。

 

「うおぉ!?」


突然自身を七色の光が包みこみ、そのまま意識が遠のいていった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 「んぇ?」


目を開けると辺り一面が真っ白の空間にいた。

 

「てかどこだここ?」


確か俺はパチンコを打って、全回転を引いて、あとはどうだっけか?


「起きたようじゃな」


何もない空間からぬるりと白髭のたっぷり生えた爺さんが現れ、ニヤニヤしながらこちらを見てくる。


 「ここはどこだ?何が起こっているんだ!?あんたはだれだ!?」


「フォッフォッフォッ。質問に答えよう。ここはあの世とこの世の狭間みたいな所じゃな。

 そして私が頼みたい事があり、お主を呼んだ。

 私は神じゃよ。」


なるほど、異世界転移ってやつか?弟の買っていた本がそんな感じだったような。とりあえずこの爺さんは胡散臭いが、今のところは何も分かっていないから大人しく従っておくのが吉だろう。


 「何のために俺を呼んだ?」


自称神は急に真顔になり、ぽつりと


 「弱リーチってうざくね?」


と言った。


 「は?」


「わしは、たまに下界に降りてパチンコをするのじゃが、弱リーチが当たらない上に演出が長くて腹が立つのじゃ。」


「確かに。」


パチンコにはほとんど当たらない弱リーチというものがあり、アニメのパチンコの例で言うと、某症候群が流行る田舎でカメラマンが死ななければ当たりのリーチだとか、某大泥棒の三世のライバルの警官が特訓に成功したら大当たりだとか、物事の本筋とあまり関係なかったり、コメディ色が強いと弱リーチに分類されやすい。


 「そう言うわけで、お主にはこのパチンコ台のリーチを全て当てて欲しいのじゃ。」


パチンと自称神が指を鳴らすとパチンコ台が現れた。


 「これは・・・」


 Pブレイブサザンクロス2黄金帝君臨があった。演出バランス、役物、出玉の割合がちょうどよく、俺の一番好きな台だ。


 「そうじゃ。お主がその台について一番理解しているから頼むことにした。もし全てのリーチを大当たりに結びつける事ができたら、お主の好きな世界に好きな能力に転生させてやろう。無論元の世界に戻りたいのなら戻してやるがの。」


 確かに、ブレイブサザンクロス2に関してならかなり詳しいという自信がある。だがあの剣と魔法のいかれた世界で生き残る事ができるのだろうか、失敗したらどうなるのだろうか様々な疑問が付き纏う。


 「お主の能力は雑魚にも負けない程度には強くする。おまけに能力もつけておこう。失敗はペナルティーがあるからあまりせん方がいいがの。やるのか?やらんのか?」


ちくしょう。このじじい、心を読みやがる。 

 ペナルティが気になるがブレイブサザンクロス2の世界なら失敗はしない自信はある。オマケもくれるらしいしな。元の世界に戻ってもフリーター生活だしなやるしかないだろう。


 「決定じゃな。」


自身を眩い光が包みこみ薄れていく。やっぱちょっと怖いな・・・。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 目を覚ますと森のにいた。俺はぼんやりとした頭を覚醒させながら近くの切り株に腰をかける。


 状況を整理しよう。俺は全てのリーチを当てれば高待遇で転生が可能になる。となればまずするべきことは、リーチの占有率が多いブレイブサザンクロス2の主人公であるベンに合い、仲間になることだ。まずリーチに接触しなければ元も子もないので、ほとんどのリーチを占有するベンに最初に遭遇しつつ、エピソードリーチ等をもつベンの仲間のキャラに遭遇する事が大事である。

 

 俺は周りを確認する。


 ここは十中八九森ステージ。ブレイブサザンクロス2では、森ステージ・小川ステージ・王都ステージ・黄金郷ステージ・村ステージの5つのステージがあり、ステージにより演出、リーチ等が変化する。森ステージでは、ベンが狼の魔物に襲われている農民を助けるという大体外れるクソ寒いリーチが結構な確率で発生する。そのため、森ステージで農民を探し、助ける事がいますべき行動である。ちなみにこのリーチは大抵ベンが最後の一撃を切り株に躓いてしまい外し、狼に返り討ちに合うという外し方である。ちゃんと確認しろ。


 「助けてくれーーー!!!!!!」


男ののぶとい叫び声が遠くから聞こえた。俺は切り株から腰をあげ、ダッシュで叫び声の元へと向かう。てか、俺めっちゃ足早くなってるな、死なない程度に強化すると言っていたが、思ったより強くなっていたようだ。


 俺が現地に到着した頃にはすでに農民を庇いながら一人の青年が狼の群れを倒していた。


 「助太刀する!!!」


俺は近くに落ちていた木の棒を手に取り、農民を守りながら狼の群れを青年と倒していく。どうやら力も上昇しているらしく、あまり苦戦はしない。


 「最後の一撃だあ!!!!!!」


狼が残り1匹になったところでベンが突如最後の1匹に向けて走り出した。普通に行けば勝てるだろ!カッコつけるな!!


 「うわぁ!!?」


コテッ


 どこかしらかコミカルな音が鳴り、ベンがダッシュの途中で切り株に躓いてこけてしまった。何百回も見た光景である。


 ベンがこけるのを予想していた俺は、冷静に最後の1匹の狼に近づき、木の棒で殴り倒した。


 デュデュデュデュデュデューン!!!!!!


 どこからか凄まじい音量の音が鳴った。成功したってことかな?


 俺は切り株に躓いて倒れたままのベンに手を貸す。栗色の髪、華奢な体、整った顔でさぞかしモテるのだろう、だがこいつはさまざまなパチンカーを貶めてきた悪魔である。


 「助太刀ありがとうございます。」


俺の手を取った悪魔はさわやかな笑顔で笑った。


 




 



 




 


 



 


 


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