1話・強制転移〈前〉

 私はいつでもそうだった、全ての幸運から見放され、内側から期待され、外側からは忌諱と嫉妬の目にさらされる。


 白子症と、診断され服装も周りとは違う、それでも私には知識があった、どんなことがあってその知識に至ったのか、その知識がどうなったのか、私はそれを知るのが小さいころから大好きだった、『神童』『天才』そんな言葉を何度聞いたかもわからない。

 でも……それ以外は、自分の意思では動かず、どの行動にも自分はいない、周りの気持ちだけで動いている、

 父の希望を叶え、私はあらゆることをした、兄達からの心配と希望を聞き全てをこなした、姉や母からはとても甘やかしてくれたものの、父や兄達と同じ希望が見える、

 でもメイドからは、ただうっとうしそうに思われている気がする。


 学校からは一定のファンクラブを伴いながら、この姿のせいか日に当たれないという特徴のせいかいじめをされていたそれをファンクラブの人が止めるというのが普通になっていた、

 ファンクラブもできて暫くはそういう団体はやめるように言ったのだがいつまでもやめてくれないので私はもうファンクラブの経営に関して触ることはやめた、教師も、あまりにも熱気がすごくやめさせた場合のやり返しと生徒たちへの影響を考えると触りにくいようだ。


 私の味方は家族とあの子達だけだ、そう思っている、そう……思っている。


『お嬢様!』『お嬢様!』


 ◆◆◆◆◆◆◆◆


 こんな夢を見るなんて久しぶりだ、ベットの隣ではメイドが立っており私を起こしていたようだ、いつからこんな思考になったのだろうか、顔には出していないがとてもめんどくさそうな気がする。


「うなされておりましたよ」


「そう、起こしてくれてありがとう」


「そんなこと言って、また三日寝ないつもりですか」


「すみません」

 こういわれるとうっとうしく思われても当たり前な気もする。

 そこからは、いつもどおりの準備を済ませ、いつもどおり深々と黒いパーカーを着込み学校に行く、通学もいつもどおり車での送迎。

 周りの人間が私を見下し、それを学級委員長が唯さんが味方をするファンクラブなんて先生に止められたらすぐになくなった、私にやさしくすればパイプができるとでも思ったんだろう、それでも面倒ごとに首を突っ込むつもりはないらしい。

 いつもどおり何もなく、いつもどおりの平凡な一日を過ごす、

 そのはずだった。

 教室にクラスメイトが全員揃い教師が来た時、何かが起きた。

『空間に穴が開いた』そう形容できるような現象が起きた、それを見たとき私の意識は白く途切れた、まぁ、私はこの世に未練はない……ただ、できるならば、もっといろいろなことが知りたかった。

 ◆◆◆◆◆◆◆◆

 目覚めたとき、私は真っ白な空間にいた、やっぱり私は死んだのかしら。


〈そんなことはないよ〉


 頭に直接聞こえるような音声と共に、そこには誰かがいた。


「貴方は……」


「僕かい?僕は地球の神達を取りまとめている者……長いね、……まぁ神様でいいよ」


 誰かは分からないが、よく神様をかたどった石像なんかで見る服装をした男の子がいる、まぁこんな服を好んで着る人なんて中々いないし、本当に神様なんだろう。


「服の趣味なんて君にだけは言われたくないんだけどなぁ~」


「別にいいじゃないですか、それでわたしが死んでいないってどういうことですか?」


「思考を読んでるのとかガン無視で普通に会話を進めてくるね、もっと驚くかと思ったんだけど」


「別にここにきてすぐに読まれましたし、神様はそのくらいできるでしょう」


「出来ない神の方が多いんだよ

でだ、ここからが本題だ、実をいうときみは、僕が目を付けたお気に入りなんだ」


 よくわからない事情が出てきた、私が神様のお気に入り?


「少し前から僕たちの間で流行ったものでね、自分が気に入った子を魂の状態から育てるっていう遊びだったんだけど、僕は少し興が乗りすぎてしまったみたいでね、やりすぎちゃったんだよ、取りあえずごめんね」


 そんな謝られ方で、しかもわたしが自我を持ってからそんなことを言われても、もう取り返しがつかないと思うのですが。


「そうだね、そういわれても仕方がない、君には運と希望が殆どゼロ、感情もない訳では無いけどほとんど希薄、欲はほとんど取り上げなくちゃいけなくなった、

キミにそんなことをした神様からもう一個わがままなお願いがあるんだ、聞いてくれないかな?」


「……まだ生きれるのなら、いいですよ」


 神様は少し驚いたような表情を見せ、小さな声で何かをつぶやいている。


「もう少し質問をされると思っていたんだけど、まだ君にも生存欲とかが残っていたのかな?

で、お願いなんだけど、今からきみに大切なものを用意するから、キミには自由に生きてほしい、まぁ時々何かお願いすることはあるかもしれないけどね」


「大切なもの?」


「今からきみには剣と魔法と科学の世界に行ってもらう、しかし君は僕のお気に入りだ、向こうの世界の神では君に何かを与えることが出来ない、だから僕が与えよう君は何が欲しい?」


「だから『何』をですか?、何をお願いすることを求めているんですか?」


「きみは察しが悪いなぁ、もしかしてアニメとかライトノベルとか見たことない?」


「見たことはありますが、でも色々じゃないですか」


「スキルだよスキル、強力な異能……はぁ、何がいい?」


「スキルですか……本当に何でもいいんですか?」


「あぁ、何でもいいよ、好きなものを言ってくれ」


「じゃあ――をお願いします」


 そう言った瞬間に体が白い光に包まれる、おそらくこれでスキルを付与されたのだろう。


「見送る前に一つだけ伝えることがあるんだ、君たちは勇者として呼び出された、でもそれは向こうの神が与える物、私は与えられない、だからその分の容量全てに魔力を詰める、さぁ自由に生きてくれ」


 視界が白く暗転し、意識が失われる。

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