第32話 実家へGO!
(30)実家へGO!
武は母の実家に行くのが楽しみになってきた。
しばらく信子から実家のことを聞いていると竹村が戻ってきた。
「戦闘は収まったらしい。でも、しばらく外に出るのは危ないな。」と竹村は言った。
「ねえ、あなた。武の事なんだけど。」と信子は竹村に言った。
「武がどうしたの?」
「あなたが自衛隊員のところに行っていた時に、クマさんに『武が米沢派の残党に誘拐されるリスクがある』って言われたの。」
「確かに、それはあるな。米沢戦争は回避できたとしても、共産圏にクローン技術を売ろうとしている奴らを全員逮捕できるわけじゃない。落ち着くまで、武はどこかに隠れておいた方がいいかもね。」
「そうだよね。」と信子は言った。
「この研究所でしばらく生活するか?」と竹村は武に聞いた。
「嫌だよ。地下暮らしは・・・。」
武はそう答えたものの、ずっと地下暮らしを続けている竹村や信子に申し訳ない気持ちになった。
「いや、悪気はないんだ。父さんの地下暮らしを非難したわけじゃないよ。」と武は弁解した。
「僕のことはいいよ。好きで地下にいるんだから。武の場合はそうだよなー。ずっと地下にいるわけにいかないし・・・。」と竹村は言った。
「それで提案なんだけど、私の実家にしばらく行くのはどうかな?」と信子は言った。
「信子の実家ってことは、姫路?」と竹村は言った。
「姫路。武も行ってみたいって。」
「そうか。じゃあ、武は母さんの実家に行ってくるか?」と竹村は武に聞いた。
「そうするよ。息子だったら母親の実家に行くのも悪くない。」
武は格好をつけて言った。
「ムハンマドはどうする?」と竹村は猫に聞いた。
「姫路観光も悪くないな。行ってもいいぞー。」と猫は言った。
「じゃあ、2人と1匹で母さんの実家に出発だー!」と武は行った。
竹村は少し寂しそうだが、息子の安全のためには仕方ないと考えているようだ。
「じゃあ、道中で誘拐されたら困るから、自衛隊に護衛を頼んでみるよ。姫路には第3師団の駐屯地があるから、輸送機で送ってもらおう。」
そう言うと竹村は自衛隊員のところに戻っていった。
「気を付けて行ってこいよ!」クマさんは武に言った。
「クマさん、ありがとう。飛行機かー。初めてだなー。」
武はテンションが上がった。
***
米沢戦争は自衛隊の出動により3日間で終結した。
この紛争は米沢市では『米沢3日間戦争』と伝えられているそうだ。
米沢市の北部と南部が分裂することなく、米沢市議会、米沢派とシン米沢派の話し合いにより、平和的な解決が試みられている。
過去からの遺恨があるから、北部と南部の融和にはまだまだ時間が掛かりそうだ。
米沢戦争は公の記録には残っていない。
国家機密を保護するための政治的な理由によるものだろう。
きっと、そういうことだと思う。
<後書き>
本章では米沢市における米沢派とシン米沢派の争い、米沢牛のクローン製造などを書いておりますが、特に米沢市に悪意はありません。
もし米沢市の皆様に不快な思いをさせたのであれば、この場を借りてお詫び致します。
なお、武と猫の冒険は『僕と猫と明珍火箸 - 勝手に他人の半生を書いてみた』に続きます。
僕と猫と米沢牛 ― 勝手に他人の半生を書いてみた @kkkkk_
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