ファンタジー化した地球

@Fish051402564

第1話

 「!?・・・これは地震か?」


 生命の危機を感じられるほどの揺れの中、青年――鬼道あゆむ《きどう》はすぐさまベットの下に潜り込み頭を守っていた。


 しばらくして揺れが収まると、あゆむはすぐさま母親の元へと向かった。


 「母さん、大丈夫か?」

 「ええ、大丈夫よ・・・だけど、お皿が何枚か割れちゃったわ。」

 「そんなの買えばいいさ。今から由奈に電話をかけるから、母さんは父さんに連絡をいれてくれ。」

 「ええ、わかったわ。」


 あゆむと母の玲奈はそれぞれ父の優、妹の由奈が通う保育園へと連絡を取った。


 「もしもし、由奈・・・大丈夫か?」

 「うん、大丈夫なの。先生の言う通りにしたから怪我もしなかったの。」

 「おお、そうか、良かった。兄ちゃんが今から迎えに行くからな。」

 「は~い。」


 母に妹を迎えに行ってくると告げ、あゆむは外へ駆け出していく。


 「うぐっ・・・な、なんだこれ。」

 家から出た瞬間、体が一から作り替えられていくような激痛があゆむを襲った。

 

 しばらくすると徐々に痛みがひいていき、突如頭の中にアナウンスのような女性の声が響いた。


 『地球が進化しました。それに伴って地上にダンジョンが出現し、魔法やスキルなどが使用可能になります。詳細はご自身のステータスをご覧ください。』


 「は?ステータス?ラノベじゃないんだぞ?」


 そう叫ぶとあゆむの前に半透明な画面が出現した。


 「は?嘘だろ・・・マジか。」


 表示されている内容は以下の通りだ。



 =========================

 名前:鬼道 あゆむ 男 17歳

 種族:鬼人

 Lv.1

 スキル: 【修羅道】  【鬼化】  【鬼道一刀流】  【剛腕】

 =========================


 (まてまて、いろいろ謎な部分があるけど、俺は人じゃなくなったのか?)


 改めて身体を確認してみると、以前より少し身長が高くなり、180ほどまでに、そして鋭い犬歯が生えていた。


 「信じたくないが・・・まあ身長が伸びただけで見た目にあまり変わりはないから問題ないか?取り敢えず由奈が心配だ。早く迎えに行こう。」


 走り出してみると、今まで以上に速く走れるようになっていた。


 「これも種族が変わったせいか?まあ今は急ごう。」


 風のような速さで疾走していると、ちらほら見える古代遺跡のような建造物や洞窟のような場所が見える。


 (あれがアナウンスで言ってたダンジョンか?)


 男心くすぐられるような響きだが、今は無視して由奈の元へと行くのが最優先だ。

 あゆむはその場を走り去った。



 =========================


 「よし、着いた。」


 目の前に、『きさらぎ保育園』と書かれた標識のある門がある。

 ここが由奈が通っている保育園だ。


 「すみません、鬼道由奈の兄の鬼道あゆむです、妹を迎えに来ました。」

 「あら、由奈ちゃんのお兄さん?由奈ちゃんはこっちですよ?」


 あゆむは保育士の若いお姉さんの誘導に従い妹のいる場所へと向かう。


 「お兄ちゃ~ん!!」

 

 遠くから亜麻色の綺麗な髪の女の子がステステと走ってくる。

 

 「由奈!迎えに来たぞ。」


 由奈は勢いを殺さずそのまま歩夢のお腹へとダイブを繰り出した。

 それをあゆむは由奈の背中に手を当て、その手を軸に由奈を1回転させ腕の中に収めた。


 由奈は一瞬びっくりした顔をしたが、すぐさまあゆむの顔をみてヘニャっと笑った。


 「由奈、いつも飛び込むなって言ってるだろ?」

 

 えへへぇと笑いながら誤魔化そうとする由奈。可愛いから許す!


 「家族揃って美形ね~。」

 「ほんと、お兄さんは鍛えてそうだし、クールな見た目に反して妹には甘い。ギャップが凄いわね。」


 保育士のお姉さんたちが鬼道兄弟を見ながら話をしている。


 「わぁ~初めまして、由奈ちゃんのお兄さん。」

 「ん?友達か?」


 あゆむが声のした方を見ると由奈と同じくらいの可愛らしいツインテールの女の子が立っていた。


 「うん、お友達の比奈ちゃんなの。」

 「はい、葉山比奈です。」


 ぺこりと挨拶をする比奈ちゃん。


 「こちらこそ初めまして比奈ちゃん。」

 

 歩夢は由奈と同じように比奈ちゃんの頭を撫でる。

 

 「えへへぇ~お兄ちゃんがいたらこんな感じなのかな~?」

 

 比奈ちゃんが頬を赤く染めながらフニャっとしている。

 すると由奈がむくっと頬を膨らませながら比奈ちゃんを睨む。


 「む~お兄ちゃんはわたしのなの!」


 そう言って歩夢の腕に抱き着く。

 そして何故かそれに対抗する比奈ちゃん。


 「幼女に取り合いされるイケメン・・・ご馳走様です。」

 「ええ、眼福だわ!!」

 何故かこちらを見ながらくねくねしている保育士たちは彼女らの名誉のために見なかったことにしておこう。


 「それでは帰りますね。由奈、挨拶は?」

 「先生さようならなの!」

 「はい、さようなら。」

 「今日はありがとうございまし――!!」


 爆発音と共に、園内に太った男が侵入してきた。


 「グフフ、幼女たちが一杯!」


 それを見た園児たちは悲鳴を上げながら離れていく。


 「こら~逃げるんじゃな――誰だお前!」


 太った男の目の前に立ったのは歩夢だった。


 「なあおっさん。何してんだ?」

 「クソっ、イケメンかよ。まあいい、俺は力を手に入れたんだ。この世は弱肉強食、だから俺のしたいように幼女たちと遊ぶんだ~!!死ねぇ顔だけのクソ野郎!!『ファイヤボール』!!」


 男が両手を上に掲げると、手の上から50㎝ほどの火の球が出現した。


 「くらえぇ!!」


 男の手から離れた火球は歩夢へと真っ直ぐ飛んでいくことはなく、軌道がそれて園児たちの方へと飛んで行った。


 「クソ野郎!」


 歩夢は即座に走り出し、園児たちを庇うように火球を背中で受け止めた。

 激痛と共にじりじりと焼けていく背中。

 火球が消えるまでには着ていた服は既に着れる状態ではなく、火傷によって背中はぐちゃぐちゃだ。


 「いってぇなぁ!」


 ボロボロの状態のまま歩夢は立ち上がると、床の木が折れるほど強く踏み込み、次の瞬間男の目の前に移動していた。


 「園児を怖がらせてんじゃねぇ、クソデブロリコン野郎!」

 「ひっ!」


 バキッと骨が砕けるような音と共にロリコン男は近くの壁に突っ込み、気絶していた。


 


 

 

 

 

 

 


 





 

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