最終章 臥竜との死闘
第1話 ついに激突!!
デリルはエリザとネロを
「しょうがないわね、サマにならないけど箒で行くのは諦めましょ」
デリルはそう言って、右手はエリザ、左手はネロと手を繋ぐ。「私に触れていれば魔力で飛べるから手を離さないようにね」
デリルはゆっくりと浮上していく。デリルの言うとおり、エリザもネロも引っ張られて飛ぶという感覚ではなく、デリルと一つの塊になっている感覚であった。
「先生、触れてるだけで良いのに、どうして箒に乗る時はお尻にしがみつかなきゃいけないんですか?」
ネロはいつも箒で移動する時は振り落とされないようにしっかりとデリルの巨尻にしがみ付いていたのだ。
「……」
デリルは聞こえないふりをしてそのまま
「馬鹿だな、ネロ。デリルはお前とくっついていたかったんだよ」
エリザが、がはははっと笑う。「なっ、デリル?」
「手、放すわよ」
デリルが図星を突かれてエリザを睨む。
「悪かったよ。……、あっ! あそこだ、あの
エリザは
「あそこね? よし、降りるわよ」
デリルは洞穴の入口前にゆっくりと着地した。風が吹きぬける音がごうごうと聞こえてくる。
「そういえば、魔物がいないな」
エリザはキョロキョロと辺りを見渡す。
「臥竜が目覚めたからみんな逃げたんでしょ」
「いえ、魔物は巣穴でなりを潜めてますよ」
ネロは平然とした顔で言う。「補助魔法で気配を消しているのでこちらに気付いてないだけです」
「お前、そんな事まで出来るようになったのか」
エリザはネロの成長に驚いていた。
「男子三日会わざれば、ですよ」
ネロが言うと、エリザはきょとんとした顔をして、
「おい、ネロが変な事言ってるぞ」
と、デリルに耳打ちする。
「あんたは成長しないわね」
デリルは哀れむようにエリザを見た。
三人はしばらく洞穴を下っていた。思った以上に深いところに繋がっているようである。下手をすると、村のある位置よりも低い場所まで下りているのかもしれない。この洞穴を下りきればアルが待っている。そして、臥竜も……。
「もうすぐだ……。警戒を
エリザが身を低くしながら小声で言う。臥竜の寝床まであと少しである。
「エリザさん、どうやって助け出すつもりですか?」
ネロは小声でエリザに
「あたしとデリルが臥竜の気を引くから、お前は隠れてろ。スキを見てアルを助け出すんだ。やれるか?」
エリザに言われ、ネロは真っ直ぐな目で
「回復薬はネロくんが持ってて。アルくんを助けたら合図をするのよ」
三人はそれぞれの役割を確認し、洞穴から広くなったフロアを覗き込んだ。フロアの中央辺りに二人の人影が見える。
「あれ? 臥竜じゃないですよ? 女の人じゃないですか」
ネロはヒソヒソ声でエリザたちに言う。
「アル、生きて……る、よな?」
エリザはじっとその姿を確認する。弱っているが生きてはいるようだ。
「ふ、お前もタフよのぅ。わわらを相手に五日以上も生き延びるとは……」
デリルたちの耳に女性の声が聞こえてくる。どうやら膝枕しているあの褐色の
「アルーーーーーーーッ!!」
エリザがとうとう我慢しきれず絶叫する。ネロは慌てて身を隠し、褐色の巨熟女がこちらを向く直前に姿を隠した。
「お前は、あの時の女戦士か!!」
褐色の巨熟女がエリザを睨む。エキゾチックで美しい顔をしている。砂漠の国の女王様といった感じである。一糸纏わぬ姿のままアルを放り出して立ち上がる。勢い良く立ち上がったので全身がブルンブルンと波打った。
「いや、お前は誰だよ!!」
エリザは至極もっともな突っ込みを入れる。
「わらわの名はヴェラ」
ヴェラの身体が強烈な光を放つ。全員が目を覆っている間にヴェラが竜に戻る。威嚇するように全身を震わせて咆哮するヴェラ。「わざわざ死にに帰ってくるとは愚かな奴じゃ! 望みどおり消し炭にしてくれるわ!!」
ヴェラが息を吸い込み、エリザを吹き飛ばすかのように灼熱の炎を吐く。真っ赤な炎がエリザを飲み込もうと
「エリザ! 下がって!!」
デリルが灼熱の炎とエリザの間に立ち塞がる。炎はデリルを包み込んだ。
「馬鹿め! 身代わりに死におったわ」
火柱となったデリルを見ながらヴェラはさらに息を吸い込む。「心配するな、お前もすぐに焼き尽くしてくれるわ!!」
再び炎を吐こうとしたヴェラが、火柱から何事も無かったかのように現われたデリルを見て止まる。
「炎対策はばっちりよ!」
デリルは笑顔でヴェラに親指を立てる。
「くっ、こしゃくな奴らじゃ! わらわと本気で戦おうというのか!」
ヴェラは巨体に似合わぬ俊敏な動きでデリルに近づき、鋭い爪で襲い掛かる。
「デリル、下がれ!!」
今度はエリザがデリルの前に出る。背中に背負ってきた頑丈な盾を構えてヴェラの鋭い爪を防ぐ。普通の人間なら簡単に吹っ飛ばされる一撃だが、エリザはレジェンド級の戦士である。「さすがだな、臥竜さんよ!」
エリザは渾身の力でヴェラの前足を弾き返す。ヴェラは渾身の一撃を弾かれ、驚愕の表情を浮かべた。
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