地上から祈りを込めて

織風 羊

第1話

 

 石油が枯渇し、新たな資源となるのは、今までクズ電気と呼ばれていた風力や太陽光熱になり、あちこちに発電所が建設され利用されるようになってきた、が、限界がある。

環境破壊をする水力発電はおろか、森林伐採による火力発電も地球環境の限界を越えている。

人類は最早、原子力に頼らなければ生きていけないと誰もが納得している。

現在の量子物理学から、原始的な原子力発電も、より効率的な方法が開発されてきた。

然し、如何に原子力の利用方法が効率よく電力に変換されようとも、原子力つまり放射線の防護措置は依然として進んではいなかった。

そして、その爆発力の人道的利用方法も。


 ユーラシア大陸の東にある太平洋の北西部に美しく龍の形をした島国は、東経154度から北緯20度に位置する。

極東には、幅舞群島(はばまいぐんとう)、色丹島(しこたんとう)、国後島(くなしりとう)、択捉島(えとろふとう)の北方領土があり、第二次世界大戦後にソ連が占領したが、ソ連解体後もロシア連邦が占領している。


 また、島根県沖にある竹島は今もって韓国が占領しており、尖閣諸島についても中国が領有を主張したままである。


 そして沖縄では戦後から島民との闘いが続く中、米軍基地が存在し、アメリカ兵による被害を受けながらも繁華街には利益をもたらしている。


 沖縄に米軍基地がある限り、ロシア連邦も北方領土の返還など考えるわけがなく、更には韓国と中国の軋轢に、この島国は立ち位置を失なっていた。


 世界の均衡が失われた時、この島はどうなってしまうのかを考える国民は殆どいなかった。


 当たり障りなしに世界の中で努力してきたこの国は、国民も同じようなもので不平不満を抱きながらも、それを爆発させようなどとは思ってもいなかった。

もしも、誰かが、それをしようものなら、追従どころか危険分子的扱いを人々から受けたであろう。


 そして、一気に爆発が起こった。

それは世界の1国から始まった。

高性能原子爆弾が他国を襲った。

原子力発電が世界中で当たり前になった地球では、連鎖的に起きる爆発に耐えれるはずもなく、放射線被害を防御はできなかった。

その中でも日本は悲惨なものであった。

敵対国同士が日本領土内で睨み合っているような島なのだ。


 島は海の中へ身を潜めていった。



 それでも、その被害から逃れられた人類が存在した。

日本では旧自衛隊、現在では軍隊となった海軍の電力潜水艦3隻である。

たまたま、3回目の世界大戦を逃れた訳ではなく、意図的に出航した艦である。


 艦3隻は、2021年に日本と経済的な友好条約を交わした国を目指した。

当時、両国間には租税契約が交わされ、更に親密な関係が築かれて行った。

ウルグアイは、既に無くなっている島国日本の反対側にあり、経済的進展国を越え独立国として永世中立を宣言していた。


 無き日本を中心に放射能汚染はみるみるうちに広がって行くであろう。

彼らは反対側にある国ウルグアイを目指した。

放射能が広がる速度ができるだけ遅く、そしていつか少しづつでも放射能濃度が下がって行くことを期待しての出航であった。


 乗組員に家族はいない。

家族を捨ててまで自国を離れたくない者達は、自国に留まり家族と共に亡くなった。

艦内の乗組員は男も女も含めて現在は独身者だけになっている。


 大切な電力を蓄えるバッテリーは著しく進化し、その高性能バッテリーを積んで潜水している艦は、海底深くをゆっくりと進んでいる。それでも貴重な電力を消耗しないために。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る