賢者と学ぶ、エルフの乳を揉む方法
疾風の刃
第1話 知識の暴虐が私の股間を刺激する。
乳、かく語りき。
私は森の奥深くに住まう賢者である。
私の知識を頼りに毎日、多くの者達が私の館に訪れる。
竜王討伐に燃える勇者、信仰に迷いを感じる僧侶、永遠の愛を追い求める若き騎士、病に伏せる母を助ける為の薬草の知識を求め、ついでに自らのイチモツを、大きくする方法を探し求める旅人などなど実に多彩である。
だが、私のたった今、目の前にいる若者。
彼が、発した一言により私の日常と賢者としての地位もプライドも脆くも崩れ去った。
私の館のすぐ近くの村に住まう、モブキャラAが私に尋ねる。
「おい、ジジィ、人妻エルフの乳を合法的に揉む方法を、教えろや?」
私の頭に稲妻が走り全身の生毛が逆立った。
「エルフの乳を揉む?」
「否、正確には人妻エルフの乳を揉む、合法的に」
と、この若者はそのおよそ、知的とは対極に存在する、とボケた顔から発せられた言葉の作用だろうか?
何だか、わからないが私の体に熱いものが込み上がる。
特に下の方から。
この世に生を受け早、87年と3ヶ月。
この世の、ありとあらゆる知識を研鑽し積み上げてきた頭脳を、総動員しても思い至る事の無かった魔法の言葉。
『エルフの乳』
何と、甘美にして芳醇な香り漂う、言葉だろうか?
物心付きし日より、学問の徒だった私は、女子と触れ合うどころか言葉も碌に、交わした事のない。
もはや、違う意味でも既に賢者である。
この私に、あろう事か、この若者は、エルフの乳を合法的に揉む方法を尋ねている。
『と言うかエルフとか存在するの?この世界⁈やっべっ!ファンタジーじゃん?ffじゃん?やっばくね?』
私の胸毛がチリチリと音を立てて、静電気を帯び始めた気がする。
気のせいだが。
何という事だ。
この若者は、エルフの、更に言うなら、エルフの人妻の乳を暴力や、こねくり回した小細工など、一切用いず、合法的に揉む方法を尋ねている。
この世のありと、あらゆる知識を持つと、荘厳盛大に己を語り、国に中枢にまで、その影響力を持つ迄に至った我が、頭脳図書館を持ってしても、このモブキャラAの質問にたいして、最適解を導き出すどころか、質問の真意、意図を汲み取る作業すらままならず。
もはや意味不明過ぎて、知識のラビリンスのワンダーランド状態にダンスちまっている。
「ハッ!私は一体何を?」
私の乱れた心が作用して語彙力までもが、歪んでしまった様だ。
しかし、賢者と名乗る以上、問われた質問に対して、無解答などと、あっては学問の神、知識の女神に笑われる。
私は、激しく渇いた喉をコップ一杯の水で潤し、威厳と箔をつけるために無駄に蓄えた、顎髭を撫でながら、モブサイコ野郎、もとい、モブキャラAに言葉を授けた。
「し、尻ではいかんのか?」
つづく
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