4.カーラの怒り

飢饉の時は、嫁ぎ先が援助してくれた食料を惜しげもなく無料で配って下さった。その時はエリザベスお嬢様の嫁ぎ先になる筈だったリンゼイ子爵家に感謝したが、今では領地ではリンゼイ子爵の名前は禁忌だ。


リンゼイ子爵は、お嬢様と違い計算高い腹黒だったのだ。援助したのだからと、商人に不利な取引を迫った。我々に援助したのは、我々を支配下に置きたかったからだとハッキリ分かった。


純粋なエリザベスお嬢様は、リンゼイ子爵に感謝して援助して頂いた食料を通常の三倍の値段で買い取った。リンゼイ子爵が商売を教えてくれたからだと微笑んでおられるが、我々はあの女がお嬢様に手綱を付けて操ろうとしているように見えた。


リンゼイ子爵は、何度か領地に来た事がある。彼女は目上の人にはへりくだるが、領民や使用人には冷たい。援助して貰ったし、偉そうなくらいならお貴族様だし気にしないけど、許せない事が一つだけある。リンゼイ子爵は、エリザベスお嬢様に平手打ちをしたのだ。


私はたまたま王都でエリザベスお嬢様に付いていたので、現場を目撃した。目の前の光景が信じられなかった。思わず、リンゼイ子爵をぶちのめそうと思ったけど、お嬢様がまっすぐリンゼイ子爵の顔を見て話を始めたので我慢した。


リンゼイ子爵にとっては、お嬢様を殴ったのは単なる指導だったのだろう。だが、殴らなくても指導は出来る。暴力に訴えるなんて、下品だ。お嬢様は散々両親に虐げられていたので大した事ないと思っておられるが、あの女は駄目だ。しかも、息子までお嬢様に暴力を振るった。


お嬢様が慕っている人達だから、我慢した。


けど、リンゼイ子爵家は我々の敵になった。私は領地に帰るとすぐにみんなに全てを話し、リンゼイ子爵を警戒するようにと伝えた。みんな、物凄く怒っていた。お嬢様は優しいから、リンゼイ子爵に恩を感じてらっしゃる。だけど、我々は恩よりも恨みを感じていた。


疑いの眼差しで見ると、リンゼイ子爵にはおかしなところがたくさんあった。エリザベスお嬢様や、ポール様には言えないが、私はリンゼイ子爵が、いや、あの家の関係者が全員嫌いだ。


そう思っていた筈なのに。

何事も例外はあるのだと、目の前の男性が教えてくれた。


リアム様はリンゼイ子爵の関係者。

だけど、お嬢様やポール様の味方だ。


しかも、お嬢様やポール様にも言えない我々の悩みを見抜いて下さり、居場所を与えてくれた。


リアム様のご提案で始まった面接で、私の人生は一変した。

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