最初から、あたしだけ

「伊田さん、ぼーっとしてないで答えて」

ディオラさんは退屈そうに欠伸をしてあたしを急かす。本当にこの人は鬼だ、間違えた人を躊躇もなく銃で一発しているから。

あたしが皆の分まで正解して生き延びないとただの無駄死にになってしまう。

「羽見田小事件の別名は?」






「…素質選別ゲイム、です」

「さすが伊田さん!正解は素質選別ゲイム。生き残りの教師が残した言葉から取られたんだ。この別名はあまり知られてないから伊田さんはすごいよ」

「…最初からあたしだけを生き残らせようとしてるんじゃないの?」


あたしの質問にディオラさんは小さく笑い頷く。ようやくわかってくれたか、と言っているように言葉を続けた。






「……よくわかったね。最初はゲームをして見分けようと思ってたんだけど、僕がこの部活に入部した瞬間からもう決まっていたんだよ」

「決まっていたって、何が…?」

「何がって、素質だよ」


素質……?それって何の素質なの… ?

まさか素質選別ゲイムという悪夢があたしの学校で再来したっていうの?

他人事じゃなかったってこと?


「1回目の素質選別の時にはまだ僕が未熟だったからゲームして素質のある子を見極めていたんだけど、2回目のこの学校では君が凄まじい才能に長けているということがわかったんだ」

「……じゃあ、あたしは…?」


素質選別ゲイムなんて自分には関係ないと思ってた。人生の中で1番あたしの心を掴んだ事件に遭遇したというのに全く嬉しくない。

仲が良かった部活の先輩や先生も失って、自分1人だけ生き残って、喜べるわけがない。


「伊田さんはまさに僕が探していた素質アリの子。羽見田小だと誰1人見つからなかったから君が初めてだよ。君は凄まじくラッキーな存在なんだよ」


しかもあたしが最初ってわけなの?


理解が追いつかない。


なんであたしなんかが最初に選ばれるの?


あたしはいつの間にか思わず髪の毛をブチブチと抜きながら自問自答を繰り返していた。

あたしなんかを選ぶヒマがあるなら皆を殺さないでよ。


「伊田さんは初めてのゲームクリア者。盛大に祝おう!」

「うるさい」

「伊田さん、嬉しくないの?せっかくクリアしたのに?」

「あたしはこんなのいらないのに」

「……そっか。伊田さんは喜べないんだね、自分が選ばれたのに。じゃあ最後にクイズを出すよ」

こんな時にまで空気を読まずにクイズかよ。もうやけっぱちで答えてやるよ。







「…羽見田小事件の犯人は?」


















お前だよ。













「ディオラ・ララピアント」








「正解」と微笑むディオラさんの顔が見えたが、聞こえた銃声によってすぐに視界が真っ暗になった。

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