素質選別☆即死ゲイム

ぐりず

羽見田小学校六年三組殺戮事件

今から二年前の今日、とある事件が起きた。羽見田小学校の六年三組の生徒が一斉に死んだ事件。通称『羽見田小学校六年三組殺戮事件』と呼ばれている。とある教育実習生が入ってきた当日に事件は起きた。昼休みに突如六年三組の生徒が行方不明になり、放課後には皆死んでしまっていたという残虐極まりない事件である。

今でもネット掲示板で度々話題になっておりスレの数は100件を超えたのだ。

『教育実習生は無事だったから怪しい』

『どこかに拉致するとしても当時のクラス人数は29名。拉致するのが難しいだろ』

など定期的に考察する声がちらほら上がっていた。


あたしは、この謎をどうにかして解きたいが為に探偵部に入った。あたしがこの事件について調べてくれないかと言うと顧問の先生も先輩も深く興味を示してくれてこの事件について徹底的に調べることになった。




「みりむん、この画像をカラープリントアウトしてノートに貼ってくれる?」

「了解です!ってインク切れてる…事務室から貰いに行ってきます!」

伊田みりむことみりむんとはこのあたしだ。自分で言うのもなんだけどもしかしたら一番探偵部で活躍してるのはあたしなんじゃないかと思っている。

中学校二年生の時にこの事件が起こり、それ以来これについて勉強もほったらかしで調べているんだから。(当たり前だがお母さんに死ぬほど叱られる)

今はもう秋。春から続けていることになる殺戮事件真相調べ、どうやら今になって仮入部したいという子が来るようで調査兼歓迎会の準備を進めているところだ。


カラープリントをしていると古びたドアからノックの音。おそらく先輩が言っていた転校生だろう、印刷機の音に負けないように、

「どうぞ~~~~!!!!」

と叫んだ。ガチャリと重い音を立て入ってくる人影。かわいいポニーテールにあたしの学校の学ランという男らしい格好でもあった。声も低くややガタイも良く、カッコかわいい。頭もよさそうだからなかなかいい感じの人材かもしれない!

「えっと、キミが仮入部員の…」

「はい!ディオラ・ララピアントです。僕も謎解きが好きで気になったので…まずは三日間仮入部して入るか決めようと思います。よろしくお願いいたします!!」

大きくハキハキとした声、挨拶が終わると同時に部員の皆が大きな拍手を送った。こういう元気で明るい子が入ってくれると楽しいし嬉しい。これからの活動が楽しみだ。さて早速ディオラさんにもこの事件について説明しよう。


           


「あ、僕もこの事件聞いたことあります。いきなり生徒が行方不明になったかと思いきや放課後に三組の生徒全員が遺体で見つかった…怖い事件ですよね」

「しかもあまり真相がわかってないからこのままだと未解決事件になってしまいそうなんだ。もうなってるかもだけど、おまわりさんより早く解決したいなって!そしてあたし達で立派な探偵やおまわりさんになって……!!!」

「わっ、伊田さんの目標はよくわかったよ。僕らでこの事件を解決させましょう!」

ディオラさんの一声で皆「おーっ!」と叫ぶ。仮入部だとしても新しい子が入ってくれてこの宮仁川高校探偵部は生まれ変わるんだ。あたしもディオラさんには負けていられないね。

本腰入れて今日も頑張ろう。


             ***


「じゃああたし、少し早めにあがります!お疲れ様です!」

「みりむんお疲れ~。速足で帰ったらまた顔面からケガいくから気を付けてね~」

「もうしませんから~!それじゃあ明日もよろしくお願いします!」


校舎を出てオレンジと紺のグラデに染まった空を眺めふと思う。二年前のこの時間帯のに羽見田小の六年三組の子達が遺体で見つかったんだよね…

皆何かしら身体のどこかをピストルみたいなモノで撃たれた跡が残っていたらしい。

「…必ず真相を見つけます。悲惨な亡くなりかたでしたが皆さんのご冥福をお祈りいたします」

空に向かってお悔やみの言葉を言う。いきなり行方不明になって何者かに皆殺されて、最初に聞いたときなんか怖さと胸糞悪さで吐き気も覚えたほどだった。

でも今はすぐに怯むあたしなんかじゃない。絶対絶対、この事件の犯人と真相を掴んでやるんだから。



「…あ、伊田さん!伊田さ~ん!」

聞き覚えのあるやや低めの声。振り返ると仮入部として入ってきたディオラさんだった。あたしを見つけて一目散に走ったのか髪がぐしゃぐしゃで息を吸ったり吐いたりしていた。

「ディオラさん!お疲れ!」

「お疲れ様です!僕が帰るときに猫の絵が描かれているペンケースを誰かが忘れてて…先輩が伊田さんのって」

「いっけない!あたしまた何か忘れて帰るとこだった!重要マーカーが入っているから家でまとめられなくなるところだったよ、ありがとう!」

新入部員の前でいきなりやらかすとか赤っ恥モンだよ…せっかくだからお礼として自販機でジュースでも奢ろう。



「本当にいいんですか!?ありがとうございます…!僕この炭酸大好きで…」

ささやかなモノだけどレモン炭酸を奢った。ちょっとしたジュースで喜ぶところがかわいい。

自分の分の缶紅茶も買って帰り道を歩んでいた。

「今日のディオラさん、本当にテキパキ動いててすごかった。仮入部員とは思えないほどに…」

「えへへ…ありがとうございます。めちゃくちゃ楽しかったので、もう入部しちゃおうと思ってます」

嬉しいこと言ってくれるなぁ。


だが途端にディオラさんは真顔になり真面目な声で言ってくる。まるで別人かのように。

「…僕、羽見田小の事件の真相と犯人についてを少しながら知ってるんです」

「え、ホントに!?」

「はい。知りたいですか?」

知りたいに決まってる。この謎がわかるのならなんだってしてやる。強く首を振って頷くとディオラさんは口を開いた。

「この事件で生き残った先生が居たんです。その先生は事件の事をこう呼んでいました。『素質選別ゲイム』と」

「そしつせんべつ…」

「はい。生き残りの先生に話を聞いても強いトラウマが残っているのか口をつぐんだまま…」

余程怖い体験だったんだろう。教え子全員死んじゃうとか、考えたくもない。

そう話すと同時に話すのをやめた。続きが気になるとこで話を終わらせないでくれ…

「ディオラさん……?」

「続きは、あとで話します……」

あまりにも神妙な声で話すから不安になって顔を覗き込むと同時にお腹に重い痛みがした。

月一や便秘の時とは明らかに違い、徐々に温かいもので濡れていった。



制服に、血がにじんでいた。

我に返ると改めて激痛が走る。出血多量で死ぬよりも今は痛みでショック死しそうだ。ディオラさんの右手には家庭科室から取ったであろう包丁が握られておりあたしの血で汚れきっていた。

「伊田さんだけじゃないから安心して。探偵部の先輩や先生にもしたから」

「…なんで、こんな事を…?」

「かなりデリケートな話題だから、ここで話したら誰かに知られるかもしれない。だから僕についてきてもらうよ」


少しづつディオラさんの声が遠くなり、意識が飛んだ。

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