第1話
そういえば自己紹介がまだだったね。
僕の名前はリベルテ・ベルナール。ベルナール家に拾われた元捨て子だよ。キミになんとなくこの家について話してあげる。表向きは商人、裏で暗殺業などの何でも屋をしているんだ。で、僕は暗殺担当。さあ、これを被って。これはね透過のベール。失くさないでね?これ僕の私物じゃないから。あと汚したら僕がベルナール家の主人に怒られるから。それはもう、表現するなら鬼のように。さぁ着いたよ。ここがベルナール家!真っ黒な外壁になんだかよく分からない気持ち悪い植物達、悪趣味でしょ?さぁ、入って。
「あっ!やっと帰ってきた。あんたね勝手にどっかに行かないでちょうだい!」甲高い声が耳に刺さる。自分よりも身長の低いロリータ服を纏うこの女、女性は当主の一人娘のフラン。
「どこに行くも僕の自由ですが?主人でもない貴女が口を挟む権利は無いと思いますが。」
しかめっ面の顔を更に歪めて舌打ちをしてくる。
「お父様があんたのこと呼んでいたわ。」
「はぁ、分かりました。伝えてくれてありがとうございますフラン。では失礼します。」
フランの横を過ぎ主人のもとへ向かう。
「あんた今ため息ついたでしょ!」
フランの言葉は聞かなかったフリをし長い廊下を歩く。僕の後ろにはキミが居ることを確認して居ることに少し安心を覚えた。
主人の部屋の扉をノックする。少し経つと
「入れ。」と一言。
「失礼します、リベルテが参りました。ご用件はなんでしょうか。」するとティーカップを揺らしながら「依頼された仕事代わりにやってくれ。」とこちらに目も向けず言った。それが人に物を頼む態度だと思ってんのか?百点中せいぜい三十四点
「主人、失礼ながら言わせてもらいますが仕事の話はあと、二十分後にしてもらえませんか。」
仕事は八時以降の決まりのはずだが今は七時四十一分。いい歳したおっさん、大人なんだから時間ぐらい守れよと出かかった言葉を飲み込んだ。偉いな僕。
部屋に戻ろうと踵を返したらフランが立っていた。
「あんたねあたしのことどれだけ舐めてんのよ!」
「舐めた記憶はございませんが…。あと、避けてくれます?」そういうことじゃないことは重々承知の上でわざとらしく言った。
「今日の依頼はな、隣国の…」あと二十分後にしろって言ったよな??時計見た?話聞いてた?二十分あれば今日の相棒を選べるのに。あ、いや無理か相棒決めは1時間欲しいな。っていうか本当よく似た親子だな。
「…ということだ。」
「主人、今何か仰ってましたか。僕の耳には届いていないのですが。」
「依頼の説明をしてただろ!何故聞き逃す。」
聞いてもらって当たり前って思わないで欲しい。
「まだ時間ではないので聞く必要ないかと思い考え事をしてました。」
「俺がお前を雇っているんだぞ。」
顔を真っ赤にして怒っても僕には音としてしか届かない。だって時間外手当が出ないのに話聞く必要は無いでしょ。
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