異世界対策少年課 読みやすさ重視版

時の花

第1章 異世界対策少年課 始動!

「テストどうだった?」

他愛もない話をしながら、友達の凪と一緒に帰る。


そんな中学生らしい生活があと1年は続くと思っていた。いや、高校、大学、そして就職しても、ずっとこんな毎日が続くとも思った。

だが、そんな普通の中学生としての生活は、1年も待たず終わってしまった。

「じゃあな」

「じゃあ」 

凪と別れ、一人で歩いて帰る。

「あれ、この桜咲いていたんだ」

桜を見ると、アイツのことを思い出す

アイツ、昔の俺の友達だ

「アイツ、天国で上手くやっているかな?」

独り言をつぶやきながら、帰っていた。

ふと目を横に向けると、不思議なものを見つけた。

「なんだ、これ?」

そこにあったのは、まるでラノベに出てくるような、 ≪剣≫ だった。それが道端、しかも住宅地の細い道の脇に落ちていた。

落とし物か?と思い、それを警察に届けようとした。剣を落とすのか?と言われたらうーん…なんだけど。

剣に手を近づけたその時、後ろから奇妙な声が聞こえた。

後ろを振り返ると、そこにいたのは、モンスターのような、人ではないことが明らかに分かる生物だった。

身長は3メートル近く、全身毛むくじゃら、そして何より、あの殺気立った顔。


あれこいつ、どこかで見たことがあるような?

一瞬思った。しかしそんなことを考えている余裕はなかった。

「あっ。」

バレる前に逃げたかった。でも逃げられなかった。足がすくんでしまっていた。

お願いだから、向こうに行ってくれ!

そんなことを、切実に願っていた。

しかし、その願いは叶わず、モンスターのような生物と目があってしまった。


これ、絶対終わるやつだ

そう悟った。


モンスターのような生物は徐々に近づいてきた。

俺はせめてもの抵抗として手当たり次第に石を投げた、しかし逃げるどころかどんどん近づいてくる。

そうだ、これなら。

そして、俺はさっき拾った剣を持ち、闇雲にふりまわした。

頼む、驚いて逃げてくれ!

そう願いながら、藁にもすがる思いでモンスターのような生物に剣を振った。

それで起きる現実は予想を遥かに超えていた。


振った途端、バチバチとなる音。空気中に広がる黄色い稲妻。


気がつくと、謎の生物は倒れていて、そこに自分だけ立っていた。

「倒した、のか?」

何が?え?頭の中に?がいっぱいだった。

そのところに、見知らぬ一人の男が近づいてきた

「お前、大丈夫か?」

そういって、20代ぐらいの男が近づいてきた。

「あれ、お前、その剣は‥」

男は剣を見ている。

「お前、その剣で倒したのか?」

「あ、はい?多分?」

一応正直に答えた。嘘ついたらそれこそ面倒くさいことになると思ったからだ。


「俺は、警察の者だ、今日は非番だったが。」

「警察の人だったんですか」

俺はこのときは、事情聴取とか受けられるのか、面倒くさいと思っていた。

しかし、男は予想外のことを言った。

「お前、警察に入らないか?」

何いってんのこの男? 俺は思った。

警察なんてスカウトされてなるようなものじゃない。ましてや俺は中学生だ。

「ふざけているんですか?」

「いや、本気だ」

「でも、俺は中学生です、ふざけているならよそでやってください」

俺を中学生と思っていないのかもしれないが、それでもスカウトはおかしいだろう

「お前、やっぱり中学生なのか」

男は何故か嬉しそうに言った。

「ならやっぱり警察に入れ」

こいつ、俺がいった言葉聞いていたのか?

「いやだから中学生ですから無理です」

「中学生でもいいんだ」

「俺は、≪異世界対策少年課≫だからな」

何言ってるんだ?

「異世界対策少年課?」

「少年課って、少年の犯罪を取り締まっているようなところですよね、でも異世界対策って何ですか?」

俺は、少し気になって男に聞いてみた。

ここで聞いてしまったことで、後を大きく変えることとなるのだった…

「まあ、順を追って話す」

「お前は、3年前に起きた大地震を覚えているか?」

「ああ、あれ‥」

そう、ここでは3年前に、マグニチュード9の大地震が発生していた。かなりの被害が出たから、俺も覚えている。


「あのときに、異世界との門が開いて、様々な物がこの世界に入ってきたんだ。そのことは報道されていないから、知らなかったと思うが。異世界の武器や道具、そして、魔族も来た。さっきお前が倒したのは、≪ベリアル≫という名前の魔族だ」

にわかには信じられないがさっきのモンスターのような生物を思い出して、そのことをなんとなく信じた。


「そして、お前が持っているのは、その世界の勇者が使っていた≪電気の聖剣≫だ。門をとおってこっちの世界に来て、ここに来たらしい」

嘘かもしれないが、そのとき俺はそのことを信じた

「そして、その魔族を退治しているのが、俺達異世界対策少年課ってわけだ。魔族を倒すには、異世界の武器を使わないと傷一つつかない。悪い魔族を倒して、平和を守るために、異世界対策少年課に入ってくれないか」

「嫌です」


当たり前だ。ラノベ大好きな人ならホイホイなるかもしれないが、俺はラノベなんてほとんど読まない。何より、そんな危険なことをするのはゴメンだ。

「というかそういうことは、大人に頼んでください。この聖剣はあげますので」

「いや、言ったろ少年課って」

ちょっと言っていることが良くわからない。

「少年課って少年の犯罪を取り締まるところですよね」

「いや、異世界対策少年課はそういう普通の少年課じゃないんだ」

「と、言いますと?」

「異世界対策少年課は、少年しかそこの者になることはできないんだ。お前、さっき電気の力使ったろ。異世界の武器は全てその武器特有の力があって、お前の場合は≪電磁≫で、さっきのように電気の力を使うことができる」

つまり、俺は聖剣拾ったことで助かったという訳か。それなら運が良かったでは済まされないほど運が良かったのか

「だけど、武器の力は大人より少年の方が良いんだ」

「何でですか?」

武器特有なら、使用者によって変わるような技ではない気がするのだが…

「異世界の武器の力は想像力、略してSPが必要だが、SPは少年少女の方が多くて、そっちのほうが効果が大きくなるんだ」 

「そういうわけですか‥」

俺は少し納得した。

ってか、SPのSって想像のSか?英語もSから始まるのか?


「どうだ、少年課に入るのか?」

「嫌です。他の人を頼ってください」

先程も言ったが、俺は危険なことをしたくない

それに三年前に魔族が来たのに、俺はそのことを今まで知らなかった

魔族はそこまで人を襲わないのか、あんまり来てないのか。そこも踏まえると俺がわざわざやる必要は完全になくなる

「頼むよ、君しか今いないんだって」

「いや、だからそんな危険なことは‥」

もう逃げようか迷った、そのとき


「アンダス団、知っているよな」

アンダス団、暗黒神ネウスを崇める教団、日本国内で暗黒神ネウスのために様々な人を殺している組織

そしてアイツを殺した組織


「アンダス団は、魔族を従えて犯罪を犯している。魔族は大抵おとなしいんだが、奴らによって人を襲うようにされている。だから、異世界対策少年課に入るとそいつらを潰してヒーローになれるんだぞ。かっこいいと思わないか?」

正直ヒーローには興味ない、だが、

アイツを殺した組織は絶対に破壊してやる

「分かりました、入れてください」

「お、やる気になったか」

「俺は石山准だ、お前は?」

自己紹介、まあ名前だけで良いだろう

「俺は神代新、よろしくおねがいします」


「ここが異世界対策少年課だ」

俺は今、警察署にいる。異世界対策少年課に入ることになったあと、すぐにパトカーで連れてこられた。

「俺しかいないんですね」

そう、この部屋には誰もいない。本当に警察署なのか疑いたくなるレベルだ。

「ああ、ここは代々続いているんだが、先日急に刑事が皆いなくなってしまってな」

「え、それって‥」

ここは警察、しかも普通の部署よりも危険な任務が多いだろう。

となると、前の人たちは皆強敵にやられて殉職してしまったんじゃ‥という悪い予感が頭をよぎった。

「ああ、お前も気づいてしとおり‥」

「高校生になって部活と両立できなくなったから皆やめてしまったんだ‥」

「え?」

塾辞める理由?

「こんな理由なら深刻そうに言うな!」

俺は流石に怒っていた。

「え、分かっていたんじゃないの?」

「いや分かるか」

この流れで理由がわかる奴がいたら俺はそいつをエスパーと呼ぶ

「まあそれはいいとして、今から魔族退治行ってきて」

いまからだと、俺はついさっきここに来たのだが‥

「今から!? 早くないですか」

「いや、習うより慣れろっていうし、習わせるの面倒くさい」

おい、建前が建前だとすぐわかるのだが隠せ

「本音聞こえたぞ」


まあそんなこんなで初任務に取り掛かることになった。

初任務の内容は、山の中でウラクフという魔族を退治することだ。

ウラクフは白い狼の魔族で、山に現れる人を喰っているらしい。

「ここがウラクフがいる山か‥」

パトカーに乗ってその山まで来た。

「じゃあ頑張れ」

「石山さんは来ないんですか?」

てっきり、石山さんと一緒に戦うものと思っていたのだが‥

「俺は武器使えないから」

あ、そっか。


山に入って30分ほど、目的の影を見つけた。

「アイツか‥」

幸いなことに、まだこちらに気づいていないようだ。

「バレる前に、一気に仕留めるか」

そうして、剣で斬りかかった。

その時だった。

足を捨てられていた鉄パイプにぶつけてしまい、大きな音が鳴った。

「やばい」

その時には遅く、ウラクフにバレてしまった。

ウラクフは俺に襲い掛かってきて、俺は必死に避けた。

剣で斬りかかろうとしたが、相手が速くて剣が当たらない。

「なら、これなら!」

俺は電気を放電させ、ウラクフを感電させた。

「やった、これで」

しかし、ウラクフは少し怯んだだけですぐに襲いかかってきた。

そう、ウラクフは電気耐性持ちの魔族だった。

「何でだ、何で電気やったのに倒れないんだ?いや、そんなことを言っている場合じゃない。奴を倒す方法、何かないのか」

そうだ、鉄パイプ!‥


俺はさっきの鉄パイプを素早く拾い、それを持っていた10円玉ではさみ、10円玉に電気を溜めた。

すると、鉄パイプが超スピードで飛んでいった。

鉄パイプはウラクフの心臓を貫き、ウラクフは絶命した。

「よかった、レールガン成功して」

そう、さっきはレールガンの要領で鉄パイプを飛ばしたのだ。

理科の先生が電気の授業で言っていたことを覚えていて良かったと思った。

その後、石山さんによってウラクフの死体は回収された。


「本当に死にそうだったんですけど」

「いいだろ、新しい技も使えるようになったし」

いや、この技かなり反動が強いので、あんまり使いたいと思わないのだが

「それに、こんなので死にそうになるとここではやってけんぞ」

「はい、そうでしたね」

ここは異世界対策少年課、魔族を退治するところだ

危険な任務があるのは当たり前、そのリスクがあってもアイツのために入ったんじゃないか

これぐらいでくじけちゃ駄目だ

「じゃ、明日も任務あるから」

「明日もですか!?」

任務は週一程度だと思っていたのだが

「異世界対策少年課に休みなんてないぞ、わかったら明日も働け」

前言撤回、流石にこれは無理だ

「少しぐらい休ませてください」

ここに馴染めるのは、まだまだ先になりそうだ。


初任務の日から数日、俺は毎日任務をしていた。

ある日は草原でバッタの魔族と戦い、またある日は山で鹿の魔族と戦い‥

そうして、俺はくたびれていた。

そんなある日、俺は石山さんに聞いた。

「少年課の刑事って俺しかいないの?」

「ああ、お前しかいないぞ」

石山さんはパソコンを動かす手を止めて答えた。

「じゃあ仕事減らしてくれない?俺一人でやる量じゃないから」

「もう一人刑事が入る予定だから、仕事減らさんでも許してくれ」

「え、もう一人入る予定なの?」

俺は驚いていた。そもそも異世界の武器を使える中学生なんて限られている。それを見つけることができたことに驚いた。

「ああ、ダークウェブでここの刑事の募集かけたら一人応募してくれてな」

色々突っ込みたいが今は我慢する。というか面倒くさい。

「相手の都合で少し日が空いたがな」

「いつ来るんですか」

「1時間後だ」

…早くね?

「何でそんな大事なこと伝えてなかったの」

「いや、忘れていた」

そこは忘れないでよ。一緒に仕事するようになるんだぞ。

「まあそれよりもうすぐ面接だぞ、準備手伝え」

「あとお前メモ係として面接に参加しろ」

「いや聞いてねーよ」

本当に初耳だ。でも新しい刑事が入ってくれたら俺の仕事も楽になるだろう。

そんな思いで面接の準備をした。


面接の準備をして数分間待っている。どんな人が来てくれるか、期待を胸に待っていた。

トントントン

ドアをノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

「失礼します」

俺は鉛筆を握りしめ、メモをとる準備をしていた。

ドアを開けて入ってきたのは、小学5年生程の身長の美少女だった。

「あの、小学生はここお断りしているんですが‥」

「私は中1です」

「あ、すみません」

なんか石山さんがコンプレックスっぽいことを言ったがそれはいい

面接が始まり、俺はメモをとりはじめた。


「受験番号と名前を2回言ってください」

なぜ2回? 1回でよくね?

「受験番号1番 波山愛香です。受験番号1番 波山愛香です」

言うんだ、一回でいいのに‥

「趣味は何ですか?」

「ハッキングです」

「はい、分かりました」

いやいや待て待て、え、趣味ハッキング、え、どういうこと?

そんな感じで面接は進んだ、9割ぐらいいらない質問で、警察関連の質問は一回もなかったが‥

「これが最後の質問です、あなたは胸がまな板ですが‥」

ドスッ

一瞬のうちに、近くの本棚にあった大量の本が石山さんの頭上に落ちてきた

「えっ 今何が起きた?」

石山さんは混乱している、そしてこの子は‥

「おい今言おうとしたこともう一度言ってみろお前が何も話せないようにしてやる」

なんかマジ切れして本の下の石山さんを睨みつけていた

まあ、これは石山さんが悪い

なんで本が落ちてきたのか謎だが

「ちょっ、助、助けて‥」

とりあえず助けた


「まあ、とりあえず面接は終わります。次に実技試験に移ります。おい、神代、お前も来るんだぞ」

「いや、聞いてないんですけど‥」

「ああ、言ってないからな。それより早く行くぞ」

言えよ

「あの、実技試験の場所ってどこにあるんですか?」

「ああ、あそこに見える公園だ」

そう言って、ここから2kmほどありそうな公園を指差した

「遠くね?」


「俺は車で行くから、お前達は走ってこいよ」

「殴るぞ」

そうして、俺は走って行く羽目になった。

はあ、2kmとか長すぎだろ‥

「あれ?」

少しの間目をつぶって考えていると、いつの間にか公園にたどり着いていた

警察署を出て数分もたっておらず、500mも走った覚えはないのに

「そういえば、お名前なんていうんですか?」

波山さんが話しかけてきた、このことに違和感を抱いていないようだ

「俺は神代新だ」

さっきのことは気のせいだとおもった、波山さんが不思議に感じてなかったから。

「私は波山愛香っていいます よろしくお願いします」

「波山さんね、よろしく」

「愛香って呼んでいいですよ、神代先輩」

「ああ、分かった、愛香でいいんだな」

「早速呼んでくれましたね、神代先輩」


こんな話をして数分後、石山さんがやってきた

「あれ、お前らなんで先にいるの?」

「ああ、それは‥」

「まあそんなことより試験するぞ。試験内容はチャンバラだ。この風船3個を付けて戦い、先に3個全て割ったほうが勝ちだ。神代、お前が戦うんだぞ」

「聞いてねーよ」

マジで伝えろ。

嫌だったが石山さんに言われ渋々やることになった

「神代先輩、私の短剣の力見せてあげますよ」

そういって短剣を出した、おそらく彼女の武器なのだろう

「スタート!」

石山さんの威勢のいい声が響いた

相手の風船を割ることが目標、それなら‥

「おりゃあああああ!」

俺はとりあえず突っ込むことにした

相手は短剣、こちらは剣だ

リーチではこちらが有利、短剣が届かないところから振れば‥

ハッ!

「えっ」

「甘いですよ、神代先輩」

どういうことだ? 俺は混乱していた

当たり前だ、俺が当てたと思ったら、傷一つなく背後に立っていたんだから

そして、風船は一つ割られていた

「このままじゃ、やばい」

俺はなんとしても勝たないといけない


先程石山さんとしていた会話を思い出す

「いい忘れていたけど、負けたりしたらここ追い出すから」

「え、なんで」

「いや、実技試験すらろくにできない人はここにいらんし」

何度目かは分からないけど伝えておけ

「まあ、いいですけど」

このときは、中1の女子に俺が負けるわけ無いと思っていた

しかし、予想外だった


追い出されたくない、そう一心に思っていた

ここに入ったのは、アイツの敵を討つためなんだ

追い出されてたまるか

「絶対に、勝ってやる」

「神代先輩、私も同じ気持ちですよ」

やはりあの技は武器の力か‥

しかし、どんな力なんだ‥

「神代先輩が仕掛けないなら、こっちから仕掛けますね」

そう愛香が言ったとたん急に目の前の愛香はいなくなった

ハッ!

咄嗟に避けた、元いたところに愛香は立っていた

「よく避けられましたね」

「ああ、あいにく気配には敏感なもんでね‥」

「というか神代先輩はまだ武器の力使ってないですよね。使って見せてくださいよ」

愛香は笑顔で話してくる


「その発言、フラグ回収してやるよ」

俺は愛香の足に向けて電気を打った

電気のスピードより速く避けることは流石に無理だろう

相手がどれだけ速かろうと、足を数十秒しびれさせれば、こちらに勝機はある!

「当たった!」

俺はすかさず走って風船を切りに行く

「やっぱり強いね、神代先輩。でもね、そんなんじゃ私は倒せないよ」

「は!?」

おかしい、足を確かにしびれさせていた

足以外は普通に動くとはいえ、あの状態では絶対に避けるほど動けないはず

「あれ、もしかして気づいてない?神代先輩、頭」

そう言われて頭を触る、そのときに気づいた 

頭の風船が、割られている

あと一個割られたら、俺は負ける

「これも、武器の力か‥」

足を動けない状態で風船を割って逃げるなら、武器の力を使ったとしか考えられない

しかし、どんな技なんだ‥


そのとき、ふと思い出した

面接のときの本、いつの間にか公園にたどり着いていたこと、そして、今のこと

「なるほど、そういう訳か」

「愛香、君の武器の力が分かった」

「そうなんですか、言ってみてください、合っているか教えますよ」

「愛香、君の武器の力は‥瞬間移動、だろ」

瞬間移動、ラノベを含め様々な物語出でてくる能力

普通なら現実では使えない

だが、異世界の武器の力と考えると話は違う

「よく分かりましたね、私の短剣の力は瞬間移動です。でも、それが分かったからと言って何なんですか?私に勝てる方法が見つかった訳ではないですよ」

確かにそうだ、相手が瞬間移動を使えると分かったが、それだからといって勝てるわけではない

剣で攻撃しようにも、すぐに避けられるし、電気を当てても、手は使えるから瞬間移動で動かれる

そして、俺の今の技術では、この距離から手を狙ってしびれさせることはできない‥

いや、まだ方法はある、あのことを活かせば、勝てるかもしれない

「おりゃあああ!」

剣を持って突撃した、左手に石を持って

そうして、風船めがけて石を投げた


「なるほど、確かに石を投げれば剣で攻撃するより早く風船を割れる。でもね、神代先輩。こんなスピードじゃ簡単に逃げれるんですよ」


そう言って、愛香は俺の後ろに瞬間移動した

「これで、終わりです!」

「かかったな」

「え、こ、これは、電気の技!?」

「そっちが後ろから狙うことは予測済みだからな、それを逆手に取ったのさ」

作戦勝ちというやつだ。

「さあ、終わりだ」

俺は風船を1個、2個割り、そして最後の一個を割ろうとした

何も抵抗できない女の子にするのは気が引けるが……異少課にいるだめ。やむを得ない。

「負けられない、負けてたまるか!」

愛香は手を必死に動かして瞬間移動した。

電気をくらって動けないはずなのに‥

「行けー!」

そう叫び、愛香は持っている短剣を投げた

その位置からではここまで届くはずもないのに

どういうことだ‥いや、もしかして

嫌な予感を感じ、すぐに地面を蹴って横に跳んだ

ザクッ

跳んですぐ、短剣が目の前に現れ、そして地面に刺さった

跳んで避けてなければ風船を割られ負けていたところだった

そしてその短剣を拾い、自分の剣で愛香の最後の風船を割って、短剣を返した

「終わり、神代の勝ち!」

石山さんが終わりを大声で告げた

本当に強かった、まだまだ強くならないとな‥


そしてその後、警察署に帰り、ついに愛香の結果発表のときになった

結果は 合格 だった

「ありがとうございます!」

愛香は嬉しそうに飛び跳ねている

こういうところは見た目相応の幼さが出てると感じた

俺も新しい刑事が増え、仕事が減るので、心の底から喜んでいた

「ところで、実技試験で愛香負けたのに合格なんですね」

「ああ、あの実技試験の結果に関係なく、合格は面接で決まっていたから」

「え?」

俺は耳を疑った

「実技試験の結果に関係なく?」

「いや、あの実技試験本当はやらなくてよかったんだけど、お前達の勝負どっちが勝つか賭けてたからな」

「は?」

心の底から怒りが込み上げてきた

俺達は一生懸命戦ったのに‥許せない

「ふざけるな」

俺は石山さんに向けて電気を打った、しかもかなり強めのものを

「痛い痛い痛い助け」

「自業自得だ」

本当にこの人は…

「神代先輩、ありがとうございます」

「私と一生懸命戦ってくれて」 

「私、もっと強くなってみせますから」

激しい戦いだったが、最後は笑顔で終わる面接だった


愛香が来た次の日、俺達は任務にあたっていた

「じゃ、行きますね」

そういった直後、一瞬視界が真っ暗になって、その後目的地の池に着いた

「瞬間移動って、こんな感じなんだ」

そう、今は愛香の瞬間移動を使った

目的地までは車で3時間かかる距離だが、瞬間移動で一瞬で着いた


今回の討伐対象は『ツイナ』、魚の魔族だ

「神代先輩、池に電気流してください。その間に倒します」

愛香にそう言われたので、池に電気を流す

魚の魔族だからか、すぐに動けなくなった

「あとはよろしく」

「任せてくださいよ」

愛香は瞬間移動でツイナの目の前に行き、短剣で頭を刺した

そうして、カップラーメンを作るより早く倒した

「なんか、可愛そうなことしたかも‥」

「いいんですよ、こいつも人間を喰っていたんでしょうから。それじゃ、帰りましょう」


瞬間移動を使って警察署に帰った

石山さんに「早くね?」と聞かれたが、事実をありのままに話したら納得してくれた

「短剣使い慣れてるんだね?」

「うん、拾ったの数年前だから」

「そういや、何で警察署に入ろうとしたん?」

「あ、そういえば買い物に行こうと思っていたんだった。ちょっと行ってくるね」

そう言って、瞬間移動で警察署から出ていった

「なんかはぐらかされたな‥まあ、人の事情はそれぞれだし、あまり深く詮索しちゃだめか‥。そういえば、宿題片付けないと。また怒られるのも嫌だし、評定が危ない」

2がそれなりにあるからな…

「帰ってきたよ」

「早いな!」

買い物に行って数分もしないうちに、愛香が帰ってきた

「まあ、瞬間移動使ったからね」

「で、何買ってきたんだ?」

「これですよ」

愛香は袋の中を見せた

袋の中には、産地やメーカーが違う抹茶が全部合わせて30個、そして和菓子があった

「多くない? 抹茶好きなの?」

「はい、抹茶は世界で一番素晴らしい食べ物ですよね。よかったら一緒に飲みませんか?」

「でも‥抹茶って苦いし、はっきり言って俺嫌いだから」

飲みにくいっていうか何というか…

「今、嫌いっていいました?」

そういう愛香の目は、普通の愛香とは比べ物にならないほどやばかった

「いや、気のせいだ、俺は抹茶好きだから、一緒に飲もう、そうしよう」

「そうですね、飲みましょう」

これは重度の抹茶オタクだな‥

まあ、飲むだけだしいいか


「石山さん、ここに茶道室ってありますか?」

「あるよ、廊下を出て三番目の部屋」

「何であるの」

ここは本当に警察署なのだろうか

「じゃ、飲みに行きましょう、神代先輩」

その後、愛香から茶道のルールやらなんやらを教わり、そして煎れた茶を飲んだ

「あれ、苦くない」

「そうでしょ、いい抹茶を使っているんです」

「それに、和菓子と合わせることで苦味を楽しめれるんですよ」

「抹茶も結構いいもんだな」

抹茶を飲み、リラックスした

宿題をきちんと終わらせて、眠った

とても良い眠りで、朝起きられなくなったが‥


「師匠がいるのはこの警察署か‥。必ず会いに行きます、師匠」

警察署の画像を見ながら、一人の中学生が独り言を喋っていた‥


「今日の任務も楽勝だったな」

「ですね、電磁の能力強すぎですよ」

任務帰り、愛香と会話しながら廊下を歩く

愛香がここに来て一週間、愛香とのコンビネーションは日に日に良くなっていった

本当に、愛香が来てくれてよかったと思う。仕事の効率がかなり上がった。

愛香は瞬間移動を使って簡単に敵を倒すし、何より抹茶オタクであること以外は普通に優しい女の子だ

「そういえば大丈夫か? 疲れたりしていないか?」

「ちょっと疲れてますね、眠くなってきました、仮眠室で寝てきますね」

「じゃあ、俺も寝に行く」

仮眠室に眠りに行った

今日の任務を思い出しながら、そっと眠りについた


「おい、神代、起きろ!お前に会いたい人が来ているぞ」

眠ってすぐに、石山さんに起こされた、もう少し眠っていたかった

「どうかしたんですか?」

愛香も起きた、石山さんの大きな声を聞いたからだろう

「関係ないぞ、俺に用があるみたいだから」

「分かりました、もう一眠りしますね」

愛香はすぐにもう一度眠った

それはいいとして、俺は石山さんと一緒にその人に会いに異少課の部屋に行った


「で、その人に心当たりないのか?」

「ありません、第一、知り合いにここのことは言っていません」

「だよな、疑って悪かった。念のため言うけど、ここのことは他の人に言うなよ。言ってしまうとなかなか面倒くさいことになるから」

「言いません、第一、信じてくれないでしょう」

そうして、少年課の部屋に着いた

部屋には、見知らぬ中学生の男が一人そこにいた


「どちら様で‥」

「師匠!」

男は、突然大きな声で言った

「いや、俺は師匠じゃ‥」

「師匠、ずっと会いたかったんですよ!」

話が噛み合っていない

俺はこいつのことは知らないし、ましてや師匠と呼ばれる理由も分からない

「お前、弟子いたのか。」

「いや、いないから、この人も知らないし」

「俺は師匠の弟子ですよ」

「まず誰なんですか?」

「俺は大木翔ですよ、忘れちゃいましたか?」

そんな名前知らない

「忘れたというか、始めて会ったんだけど」

「あのときは、命を救っていただきありがとうございます。その恩返しとして、弟子としてはたらきので、弟子にしてください」

「へえ、お前命救ってたのか」

「だからこの人は知りません。というか命救ったといっても、俺は救ってないから」

「いや、救ってくれましたよ。あれは忘れもしない、数日前‥」

本当にこの人は誰なのだろう、なぜ師匠と呼ぶのだろう、なぜ俺を知っているのだろう

すべてが、謎に包まれていた

「師匠は数日前、俺がウラクフに襲われそうになっていたとき、助けてくれたじゃないですか」

ウラクフ、初任務のときに倒したあの狼の魔族か

でもこんな奴いなかったはずなんだが

「俺が襲われそうになって、もうダメかもと思っていると、師匠がやってきてウラクフが師匠のところに行ったから俺は逃げれたんです」

「そうなのか、俺は知らないんだが」

「まあ、師匠の戦いはずっと見ていましたが、師匠にお礼をしようとするとその時にはもう帰ってましたから」

それじゃあ知らんわ。

そういえばあのとき、ウラクフが最初俺に気づいていなかったが、あれはこいつを襲おうとしてたからなのか

「そうなのか、で、師匠とはどういうことなんだ?」

「師匠の戦いを見て、俺を強くしてくれると思いました。だから、師匠と呼んでいるんですよ」

「いや、俺許していないし何より知らないし。というか何で俺がここにいることを知っているんだ?」

「あの後、死体回収をしていたこの人から聞きましたから」

そう言って、コイツは石山さんを指差した


「どういうこと?」

「そういえば、あのとき聞かれたな、金くれるって言われたから話したんだ」 

「お前金で釣られるな、一応刑事だろ。てかあんまり言うなって言ったろお前。」

色々と駄目だこの人。

「てか、お前初対面のように今まで振る舞っていたよな」

「いや、忘れてたから」

「忘れるな」

石山さんのせいでここまで面倒くさいことになっていた、本当に刑事として職務を全うしてくれ


「とにかく、俺を正式に弟子にさせてください。俺は師匠のもとで強くなりたいんです」

「いや、弟子の育成とか全くやる気ないし、というか知らん人を弟子としたくない」

俺、間違ったこと言ってないよな?

「なら、ここで働かせてください。働きながら、師匠の強さの秘訣を学ぶので」

「いや、こういうヤバい人と一緒に働きたくないし‥」

「そうだ駄目だ。お前を雇うことはできない」

珍しく石山さんが強気に言った、これでコイツは帰ってくれるかな‥

「お願いします、異世界の武器は持っているし、俺は中学生です。ここに入る条件は揃ってますよ」

「でも駄目だ、ついこの前一人雇ったばかりなんだ。さらにもう一人雇うことはできない」

「お願いします、給料は安くていいので」

「給料が安くていいのか」

「はい、俺は強くなるために入るので、最低限の給料でやります」

あれ、何か流れが怪しくなってないか‥

「よし、お前を雇おう」

「本当ですか、ありがとうございます!」

どうして

「待て待て待て、お前さっきまで雇うの断っていただろ」

「何言ってる、人数が多いことに越したことはないだろ。人数が増えれば一人の負担も減るんだぞ」

「絶対給料安くていいから雇っただろ」

愛香とは違って変な人だ、大丈夫なのだろうか。


「というか、ここは危険な場所だぞ、大丈夫なのか?」

頼む帰ってくれ、面倒くさいことに関わりたくない

「大丈夫です、師匠に憧れて、長い間修行したんですから」

「師匠と呼ぶのやめろ」

「それはできません、師匠は俺の師匠なんですから」

「だから俺を師匠と呼ぶの許してないから」

「俺が許したからいいんです」

「勝手に許すな」


「まあそれはいいとして、本当に強いの?」

もう俺がなんて言おうがコイツはここに入る気だ

なら強いのかどうか確認しておきたい

本当に強いなら、雇ったあとも大丈夫そうだからだ


「師匠には及びませんが強いですよ」

「どんな武器を使うんだ?」

「これです」

「これ、武器なの‥」

こいつは武器といって、盾を出した

「武器ですよ、振り回せば戦うこともできますから」

そう言って、このそこまで広くない異少課の部屋で盾を振り回し始めた

まぁまぁ速く振り回していたので、確かに攻撃はできそうだ

「ところで、それも異世界の武器なのか?」

「はいそうです。なので、こんなこともできるんですよ」

「はぁ!」

盾を振り回しているとき、急に掛け声を出して盾を止めた

「え?」

そう驚くのも無理はない、盾を止めたとたん、空気の球が飛んでいったように見えた

窓を開けてたから良かったものの、開けてなかったらどうなっていたことだろう


「どうです、俺の武器特有の力、≪空気球≫です。盾で集めた周りの空気を、圧縮して球として飛ばします。敵の魔族を吹き飛ばすのに有効ですよ。貯めるのに少し時間がかかりますが、結構使えると思います」


「結構強いじゃん。防具としても武器としても使えるって、結構すごいし」

こいつなら魔族にやられて殉職してしまうことはないだろう

「最初は乗り気じゃなかったけど、ここ入っていいよ」

「ありがとうございます、師匠」

「お前が乗り気になるとはな、意外だった」


「あれ、どちらさんですか?」

そこに愛香がやってきた、仮眠は終わったらしい

「師匠の弟子の大木翔です、はじめまして」

「神代先輩、お弟子さんいらっしゃったんですね」

「いや、違うから」

俺は今までのことを愛香に話した


「なるほど、そうだったんですね。私は波山愛香です、愛香と呼んでくださいね」

「分かった、俺のことも翔でいいよ」

「分かりました、翔さん」

「でも、もうちょっと胸が大きければ良かっ‥」

ドスン

愛香が怒って本を頭に瞬間移動させる

また片付けないと‥

「貴様殺してほしいのなら今すぐ殺してやる」

「え、何かわからんけど、すまん‥」

「まあ、一回だけだし、許す。神代先輩のお弟子さんを傷つける訳にもいかないし」

いや、弟子じゃないんだが‥

「でもまな板はちょっと‥」

そうこいつが言おうとしたとたん、愛香が瞬間移動でどっかにやった

「愛香、どこにやった?」

「この近くのゴミ捨て場のゴミ袋の中に飛ばしました」

愛香が少し怖く見えた


「おいお前ら、任務だ」

石山さんに呼ばれた

「今回の任務は火山に住んでいる魔族退治だ。この場所だ、3人で頑張れ」

「分かりました」

「あ、この魔族夜にならないと現れないから。張り込んどけ」

今回は一筋縄ではいかなさそうだ

「分かりました」


「ここでいいんですよね?」

愛香が瞬間移動で火山に連れてくれた

「愛香って瞬間移動使えるんだ、凄」

「いや、武器の力だから」

「ところで、夜までどうします?」

そう、今は5時、夜になるまで待たないといけない

「じゃあ、皆で話でもしない?翔さんのこと私あまり知らないから」

「いいよ、何でも聞いて」

「ま、いっか、暇つぶしにはなりそうだし」

「じゃあ質問なんだけど、何でそんなに強くなりたいの?」


「俺、昔にこの盾を拾ってからは、自分は強いって思っていたんだ。でもな、それは違った」

「あの狼の魔族と戦っていたとき、相手が速く、空気球を使っても倒せなかったんだ」

「そんな奴を師匠が簡単に倒したから、俺ももっと強くならなきゃと思ったわけだ」

なんか意外とちゃんとしてる

「そんなことがあったんだね」

「それで長い間修行して、ここに来た訳だ」


その後も長い間話し続けた、途中から愛香が抹茶の良さを語るだけになってしまったが‥

「あ、魔族来た」

「あいつか‥」

「今日は俺に任せてください」

「大丈夫か‥」

「くらえ!」

空気球を放つ、魔族を火口に吹き飛ばそうとしているようだ 

しかし火口に落ちるギリギリで止まり、反撃を開始してきた

「チッ」

「そこで落ちたら良かったのに」

「危ない!」

魔族は怒り、突進して喰らいつこうとした

普通の人なら、壁に叩きつけられるほどのスピードで

「これぐらいか?」

「まだまだだな」

盾を使って攻撃を受け止めた、そして‥

「止まれ!」

盾で魔族を殴り、行動不能にさせた

勝ったも同然だろう

「勝ちましたよ!」

嬉しそうにしている

「良かったな‥」

「危ない!」

咄嗟に愛香が言い、瞬間移動させた

そのところに、火が打ち込まれていた

「危なかった‥」

「ありがとう、愛香」

「普通のことをしたまでですよ」

その後、魔族は電気で再度行動不能にさせ、火口に落とした


「さ、帰るか」

愛香が瞬間移動を使う

「終わりましたよ」

「分かった、お疲れ」

「今日の仕事は終わりだぞ」

「はい」

家に帰ったときには、時計は0時を指していた

「今日は遅くまで働いたな。明日大丈夫かな‥」

そんなことを考えながら、眠りに着いた

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