徴兵を逃れて政府に見つからないサバイバル
メグルハ
第1話 赤紙が来た
21世紀中頃、我が祖国グロリアス国にヴォドナス国が海を渡って侵攻してきた。
我が祖国はぽつんと海に浮かぶ孤立した国だった。基本的に戦争とは関係ない国だと思っていた。
戦争が始まって数年は、グロリアスの正規の軍隊が善戦していた。防衛戦は基本的に侵略軍の1/3の規模でも勝ててしまうとは戦略書にも書いてあることだ。しかし、グロリアス国は少子化の影響で軍隊の定員は割れていた。
戦争が長引いてくると、兵器だけでなく兵士の数も足りなくなってきた。グロリアス政府は徴兵令を公布。戦争は総力戦の構図となってきた。国際情勢もグロリアス国に味方する国は引き続き貿易に応じてくれているが、ヴォドナス国を支援する国からは物資の輸出が減り始めていた。
特に戦略物資も足りていない。材料がないのだ。
超大国スタルケスからグロリアスは援助は貰っても、スタルケスは傍観の姿勢を貫いている。結局、自国のことは自分たちで守るしかないのだ。条約という紙切れなんてなんの意味もなかったということが国民たちが知るにはあまりにもおそすぎた。
徴兵令は男性は既婚者・独身者、女性は独身者だけが徴兵されることになり、年齢は健康な人は18歳以上なら誰でも動員することとなった。
女性は戦争に動員されるのから逃れるために、結婚することがブームとなった。人口の半分が未婚の時代に、まさかこんな形で結婚ブームが来るとは思わなかった。
俺は桃山跳流(ももやま はる)、妥協につぐ妥協、逃げに次ぐ逃げの人生を送ってきた。希望の大学には合格できず、安牌の大学に入学。激しい後悔の念を感じながら、だらだらと過ごして、気づけば就職活動は全敗。その後もフリーターとしてだらだら生きてはや30歳、その頃、戦争が起きた。人生生きていたら色々あるが、これは俺には関係ない話だと思っていた。戦争が起こったのは国境地帯、俺が住むところには戦略的重要拠点には指定されていない。どうせ怠惰なる生活は終わらないと思っていた。
「……このまま一生終えるのか……。」
そう思っていた。
しかし、そんな独身の俺の元にも召集令状が届いた。郵便局が言うには、これは避けられないそうだ。
「戦争というのは基本的にどうでもいい人から戦場に送られるよなぁ……。」
うまくこの赤紙の約束時間までに俺はどこか隠れることができないのだろうか?幸いなことに俺には財産はないが、土地だけはある。無人島を持っているのだ。離島に先祖が住んでいたのだが、少子化や過疎化の影響で土地を買い占めた俺の先祖が所有していたらしい。ずっと無駄に固定資産税を払う負動産だったが、ようやく役に立つときが来たか……。
「よく無人島に持っていけるものは1つしかないとしたら何がいい?」
という間の抜けた質問をする暇人がいるが、別に今回は1つに絞る必要は全くないし、戦争が終わるまでの間、とりあえずこの家を売っぱらって、買えるものは買って船など使わず隠れ隠れ生活をしよう。
そう思った。
なんで紙切れ一枚で人殺しやマーダーにならないといけないのか?俺にはさっぱりわからない。同調圧力の最たる例だろうなぁ。人を殺すと褒められるとかアクションゲームでもしているんだろうか、他の連中は。脳みそ詰まってないんじゃないんだろうか。
「三十六計逃げるに如かず」
とりあえず無人島へ行く準備をしよう。
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