ふたり
2/14 11:30 お台場
「はぁぁ~とても緊張する」
彼女は待ち合わせ30分前。
待ち合わせ場所でひとりため息をこぼす。
「レンタル彼女利用している人って普段こんな気持ちなのね」
そう言いながら待ち合わせ場所に来る前にオシャレなカフェで購入したホットココアを飲む。
11:50
「…ふぅ、この依頼終わったら絶対レンタル彼氏辞めよう」
そう固い決意を固めた彼は待ち合わせ10分前に到着。
そして二人は出会う。
「真紀ちゃん?」
「あ!はい!」
「お待たせ。…あれ?鼻、赤いね。もしかして、結構待った?」
「30分前くらいについただけなので気にしないでください。あ、あとこれ」
彼女は飲み物が入ったカップを彼に渡す。
「ん?なに、これ」
「コーヒーです。今日、寒いんで買っておきました。早めに買ったので少しぬるいかもしれないですけど」
「…ありがとう」
「あ、プロフィール見た時に甘いの苦手って書いてあったんでブラックにしたんですけど大丈夫でしたか?」
「え、あ、うん。大丈夫、ありがとうね」
彼はこの時からこの子は今までのことは何か違う。
そう何かを感じた。
「やりたいこと、好き同士の普通のデートがしたいって書いてあったけど具体的には?」
「ん~正直、今まで誰とも付き合ったことないから普通のデートが分からないんだよね。あ、私レンタル彼女やってるって書いたじゃん?その時は普通の感覚分かるんだけど、いざ、自分自身のデートってなると迷宮入りなんだよね~」
「…フフ」
「え?笑った?え?何で?笑う要素あった?今の」
「ううん。なんか、可愛く思えて」
「…あ、うん、そっか」
「じゃあ、美味しいご飯でランチしてお買い物、ありきたりだけどこれが好き同士のデートプランじゃない?」
「う、うん!普通でとてもいい!」
そうして二人は、とても人気のあるオムライスのお店を1時間近く待ち、オムライスを頬張りながら今日が初めてとは思えないほど、仲睦まじい様子で楽しくご飯を楽しむ。
買い物も彼女が好きそうな洋服やアクセサリーを探しながら、ここでもまた楽しそうな二人。
二人の間柄は、【レンタル】という括りであっても傍から見てもただの仲良い初々しいカップルにしか見えなかった。
二人のデート模様は、レンタルではない本気のカップルだと錯覚するくらい二人は素の表情を出している気がする。
多分、どんな人でもそう思うだろう。
15:00
ピピッ
彼の腕時計のアラームが鳴る。
「「あ」」
二人は同時に声を出す。
「ここでレンタルの時間は終わりです」
「はい」
「延長はいかがなさいますか」
「…延長、しなくて大丈夫です」
「…かしこまりました」
「今日は、とても楽しかったです。レンタル彼女をやってる人がレンタル彼氏利用するなんて馬鹿げてるかもしれませんけど、今日本当の彼氏とデートしているみたいでレンタル彼氏、利用して正解!って思っちゃいました」
「そう言ってくれるだけで俺も嬉しい」
二人は嬉しそうな恥ずかしそうな顔をしながら笑い合う。
「僕もレンタル彼氏してて初めてこんなに心から楽しいんだって思った」
「えへへ、私も嬉しいです。まぁ多分私もレンタル彼女やってるからだと思うんですけどね」
「いや、多分真紀ちゃん自身の才能じゃないかなって思うよ。真紀ちゃんだったから本当に楽しかった」
「そんなこと言ってくれるなんて嬉しすぎます。…私、心からの恋愛、頑張ってみます」
「…うん、…頑張って」
彼女がレンタル彼氏をきっかけに前を向けたと同時に彼は、どこか上の空のような返事だった。
「じゃあ、もし、またレンタル彼氏利用する時はまた俺で申し込んでね」
「…うん!じゃあ、またね」
「また、ね」
こうして彼女にとっての初めてのレンタル彼氏利用と彼にとって最後になるレンタル彼氏のデートが終わった。
*
翌日。
「律くん、かっこよかったし、律くんのこともっと知りたい」
彼女は朝から布団に潜り込みながら昨日のことを何度も思い出す。
目は少し充血。初めての気持ちで興奮して寝れなかったのだろう。
「でもさ、相手はレンタル彼氏、仕事だったんだからときめいても仕方ないよな~。これがガチ恋勢予備軍ってやつか…。まさか、こうなるとは…」
彼女は彼に恋愛頑張る宣言をしたはずなのに、彼に恋、してしまったようだ。
「向こうは私のことお客さんとしか思っていないのに…はぁどうしよう」
そんな彼女と同じように悩んでいる人がまた一人。
「はぁ、レンタル彼氏辞めようと思っていたのに、あの子のことがどうしても忘れられない」
彼もまた目の下にクマが。
彼も昨日の出来事が忘れられなかったのか、きちんと寝れなかったようだ。
「俺、今までこんなこと経験したことなかったのに…これが恋、ってやつなのか…?」
「レンタル彼氏としてじゃなくてあの子と付き合いたい」
「レンタル彼氏じゃなくて律くんと本気の恋がしたい」
二人は同じようなことを想っていた。
この恋、うまくいくのか…!?
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