第2話 そういうオチかよ!

 なんだその名前は!?


 カッコイイと思う単語を適当に並べただけだろ!?


 意味が分からないぞ!?



 ……あれ?


 ここは……


 俺の部屋だな。


 しかも、なぜかベッドから落ちているぞ。


 どういうことだ?


 ……ああ、そうか。


 どうやらあのお見合いみたいなものは、夢だったみたいだな。


 ふう、生きてて良かった……



 それにしても、なんであんな夢を見たのだろうか?


 もしかして、俺って欲求不満なのか!?


 彼女がいなさすぎて、あんなものを見てしまったのか!?


 とうとう俺は、そんなレベルの変人になってしまったのか!?


 ああ、なんということだ……


 悲しすぎる……


 おっと、今はそんなことを気にしている場合ではないな。


 仕事に行かないと。



 俺は住宅街の道路を歩いていた。


 すると、突然落下した。


 ぎゃあああああああああああああああああああっ!!!!!


 な、なんだこりゃぁぁぁっ!?


 いったいどうなっているんだよぉぉぉっ!?


 周囲は岩の壁に囲まれていて、洞窟の内部のように見える。


 なんでこんなところに、こんなものがあるんだ!?


 あっ!?


 地面が……


 俺は意識を失った。




 う……


 こ、ここはどこだ……


 俺はいったい……


 ん?

 なんだこれは?


 視界がぼやけている。


 周囲の様子がほとんど分からない。


 俺はどうしてしまったんだ?


 おや?

 足音?


 誰かが近付いて来たようだ。


 聴力は正常みたいだな。


「ひーちゃん、お腹はすきまちぇんかぁ?」


 聞き覚えのない高い声が聞こえた。


 どうやら女性のようだ。


 ひーちゃん?


 もしかして、俺に話しかけているのか?


 俺はもういい年のおっさんだぞ?


 なんでそんな呼び方をするんだ!?


 変人なのか!?


 赤ちゃんプレイが好きなのか!?



「ミルク、飲みまちゅか?」


 えっ、俺、持ち上げられた!?


 しかも、口に哺乳瓶みたいなものを入れられた!?


 ナニコレ!?


 もしかして、俺は赤ん坊になっているのか!?


 これはどういうことなんだ!?


 なんでこんなことが起こったんだ!?


 訳が分からなさすぎるぞ!?


 いったいどうすれば良いんだよっ!?


「ぎゃああああああああああああああっ!!!」


 混乱した俺は、赤ん坊らしく盛大に泣いてしまった。


「ひーちゃん、どうちまちたかぁ? ミルクじゃなくて、オムツなのかな?」


 そして、下の方からも盛大にぶっ放した。


 それも母親と思われる人が、オムツを調べている最中に。



 その後、体を洗ってもらい、気分が落ち着いた。


 さて、これはどういうことなのか考えてみようか。


 というか、これは転生というヤツなのか?


 そういえば、地面に激突したんだったな。


 なら、俺はあそこで……



 よし、ここは開き直って、新たな人生を楽しむことにしようか。


 前世に未練がないわけでもないけど、もうどうしようもないからな。


 はい、それに決定!


 がんばろう!



「ひーちゃん、ママでちゅよ~」


 なんか母親っぽい人が日本語っぽい言語で話しかけてくるんだけど、どういうこと?


 もしかして、ここって日本なのかな?


 それとも日本語によく似た別の言語を使用している、異世界なのだろうか?


 どうなんだろうな?


 調べてみたいけど、まだ起き上がることもできないし、目もよく見えないな。


 まあ、赤ん坊だし仕方ないか。


 気長に成長を待つことにしよう。



 成長して目が見えるようになってきた。


 すると、ヤバいことに気が付いてしまった!


 なぜか俺の母親と思われる人が、常にピンク色のウサギの着ぐるみを着ているのだ!?


 しかも、風呂でも脱がずに、そのまま入っている!?


 なんだこいつは!?

 変人すぎるだろ!?


 これは非常にマズい、マズすぎる!


 今はキチンと親としての責務を果たしているが、今後どうなるかは分からないぞ!


 早くひとり立ちしなくては!!



 なんだよ、この家は!?


 ウサギの着ぐるみが、ふたりもいるぞ!?


 これって、両親ともに変人だってことだよな!?


 俺の人生、早くも大ピンチなんじゃないか!?



 ウサギの着ぐるみどもは、どうやら俺の母親と母方の祖母みたいだ。


 父親はどこに行ったんだ!?


 まさか妻の趣味が原因で離婚!?


 親権は母親に取られたのか!?


 俺は見捨てられたのか!?


 ぎゃああああああああああああああああっ!!!


 父さん、戻って来てくれぇぇぇっ!!!


 俺をまともな家に連れて行けぇぇぇっ!!!



 な、なんだこの世界は!?


 ある日、俺は母親にベビーカーに乗せられ、外に連れて行かれた。


 おそらく散歩なのだろう。


 そこで衝撃的なものを見てしまった。


 人間の骸骨が住宅街の中を歩いていたのだ。


 それも昼間から、ごく普通にだ。


 しかも、母親はなんの反応もしない。


 そのうえ、骸骨の方も素通りしていった。


 これはいったいどういうことなんだ!?


 俺はどんな世界に生まれてしまったんだ!?


 くっ、早く調べたいぞ!


 さっさと成長しろよ、俺の体!?



 今世の俺の名前も、純田すみだ ひとしというらしい。


 なんで前世と同じなのだろう?


 こんな偶然あるのか?


 まあ、いいか。


 使い慣れているしな。



 俺はハイハイができるようになった。


 よし、これで情報収集ができるな!


 さっそく始めよう!


 俺はハイハイで家の中を回ってみた。


 すると、居間と思われる部屋のテーブルの上で、タブレット型端末のようなものを発見した。


 こいつはインターネットのようなものにつながるのかな?


 とりあえず、やってみるか。


 おっ、それっぽいものがあるぞ!


 よし、調べてみよう。



 ふむ、やはりここは地球の日本なのか。


 しかも、俺の死んだ日から三百年くらい経過しているみたいだな。



 な、なんだそれ!?


 俺が死んだ日に、洞窟の内部のような異世界につながる黒い穴のようなものが、地球の各地に突然現れたらしいぞ!?


 俺が落下したのは、おそらくこれだったのだろう。


 そして、そこから人類とよく似た知的生命体が多数出て来たらしい。


 しかも、全員美男美女だったそうだ。


 人類とその生命体たちは和解し、結婚して、子供を産んでいったそうだ。


 えっ!?

 それって死ななければ、俺にも美人の妻ができていたのかもしれないってことなのかよっ!?


 な、なんじゃそりゃぁっ!?


 悔しすぎる!?


 クソッタレがぁっ!!!



 さらにその異世界から資源が大量に入手できて、景気も良かったみたいだな。


 な、なんてうらやましい……


 はぁっ、なんで穴に落ちちゃったんだよ、俺……


 まあ、今更そんなことを言っても仕方ないか。


 続きを読もう。



 はぁっ!?

 その後、代を重ねるごとに、子供の姿がおかしくなっていった!?


 人の形をしている子供が、産まれにくくなっていっただと!?


 ナニソレ!?

 あっ、まさかそれが、あの骸骨のことなのか!?


 って、まさかうちの連中もそうなのか!?


 ただの変態ではなかったのか!?


 母さん、ばあちゃん、申し訳ありませんでした!!



 ん?

 そういえば、俺は完全に人型だな。


 俺は珍しい存在なのかな?



 それから差別問題などが出まくって、地球は大混乱していたみたいだな。


 相当悲惨なことになっているな。


 この時代に生まれなくて良かった。



 えっ!?

 さらに男性が生まれにくくなって、男女の人口比率がおかしくなっただと!?


 その原因は不明!?


 女性が男性の百倍くらいいる!?


 対策として、国が精子を集めて管理してんの!?


 それを人工授精させて、子供を産んでいるのか!?


 それって、もしかして、世界はヤバい状態なのか!?


 うわぁ、嫌な時代に生まれたもんだな……


 まあ、さっきの時代よりはマシみたいだけどな


 ああ、そうか、それでこの家には父親がいないのか。


 なるほどな。


 あれ?

 俺は男だな。

 アレもあるし。


 もしかして、俺って相当希少な存在なのか!?



 えっ!?

 男性を狙った犯罪が多発してんの!?


 怖っ!?


 なので、男性を保護するために国がボディーガードを付けてくれるのか!?


 へぇ、そうなんだ。


 俺の近くにもいるのかな?


 見たことないな。


 もしかして、物陰に隠れて警備しているのだろうか?



 ふむ、転生前と同じように義務教育があるようだな。


 学校か、今更面倒だなぁ。


 まあ、仕方ないけどな。


 ん?

 男性は学校に通う時のために、同年齢のボディーガードが付くことになるらしいぞ。


 それって効果あるのかな?


 うーん、まあ、いないよりはマシなのかもな。



 そのボディーガードとは、幼い頃から一緒にいるため結婚に至りやすいそうだ。


 世間では、婚約者みたいなものだと認識されているらしいぞ。


 ほう、そうなんだ。


 なら、俺もそのうち会うことになるのかな?


 いったいどんな方なんだろうな?



 俺は三歳になった。


 ある日、母さんの知り合いが家に来るらしい。


 しかも、その方には俺と同い年の娘がいるそうだ。


 もしかして、これはボディーガードのお披露目なのかな?


 その娘とは仲良くしておいた方が良いのだろうか?


 まあ、とりあえず、友好的に接してみるか。



 おっ、チャイムが鳴った。


 俺たちは玄関に向かった。


 するとそこには、底面の部分から太い緑色の触手のようなものが複数生えている、大小二体のプリンパイがいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る