第2話 氷嬢様を救え

鍛冶場主税が引っ越してきたマンションの隣は男子が注目するほどの美貌を持つ氷嬢様こと氷堂鈴女であった。しかし、そんな彼女は実は家事が苦手であることが判明した。


駿介「お~い、主税?」


主税「え・・・・・・」


駿介「お前授業中ずっと上の空だったな。」


主税「そうだっけ?」


駿介「ノート真っ白だぞ。」


主税「頼む、ノート移させて!!」


駿介「ドリンク一本で手を討とう。」


主税「わーったよ。」


主税はドリンクを買いに下の階の自動販売機に向かった。その道中、鈴女とすれ違った。


主税「お、氷堂さん。」


鈴女は会釈をした。


主税も会釈で返し、自動販売機に向かった。この時主税は気づいていなかった。鈴女が・・・・・・とある被害に遭っていることに・・・・・・


買い物を済ませ家に帰ると鍵を開ける鈴女の姿が


主税「お、おかえ・・・・・・」


主税は疑問に思った。なぜか鈴女は全身びしょ濡れになっていた。


主税「(おかしいな、今日は快晴のはず・・・・・・)」


鈴女「買い物帰りですか?」


主税「いや、氷堂さんどうしたの?」


鈴女「私は何ともないので。」


主税「でも!」


しかし、鈴女はその場で倒れてしまった。


主税「氷堂さん!?」


主税が急いで鈴女のところに向かった。


主税「顔が熱い・・・・・・風邪ひいてる!早く温めないと!!そうだ、風呂!!」


主税は鈴女をお姫様だっこをして家に入れた。お風呂にお湯を張り、体を冷やさないようにタオルで水滴をふき取っていた。これを傍から見ると警察沙汰ものですが、主税の頭は混乱していた。


主税「あれ・・・・・・セーラー服ってどう脱ぐんだっけ?」


主税はセーラー服にあるファスナーを見つけ、それを開けて服を脱がせた。


鈴女「ん・・・・・・何でここに・・・・・・」


鈴女が目を覚ました。なぜか服が脱がされていたが・・・・・・


鈴女「!?」


主税「あとは、下着も・・・・・・」


鈴女は主税の顔面にグーをかました。


鈴女「落ち着いてください。」


主税「す、すいません・・・・・・」


鈴女はお風呂に入り、着替えは主税の部屋着を借りた。


鈴女「ありがとうございます。」


主税「その、氷堂さん。申し訳ございませんでした。」


主税は鈴女の前で土下座をした。


鈴女「いいですって、私を助けようとして行ったことなんですよね。もしわざとならすぐに警察に通報しましたけど。」


主税「ですよね・・・・・・」


鈴女はフラッとよろけた。まだ熱が下がっていなかったのだ。


主税「とりあえず布団敷いておいたから。」


主税が肩車をして鈴女を運び、布団に寝かしつけた。


主税「でもさ、どうして濡れてたんだ?夕立も通り雨も降ってなかっただろ?」


鈴女は黙ってそっぽを向いた。


主税「あのー氷堂さん・・・・・・」


鈴女は動かなくなった。


主税「(寝たのか・・・・・・こりゃあ聞いた方が早いな。)」


主税はカバンからスマホを取り出し、とある生徒に連絡をした。


?「もしも~し、珍しいね。私に連絡して来るなんて~」


この腑抜けた声の女子生徒は幼稚園からの幼馴染の「林原 倫(はやしばら りん)」駿介のとなりの家に住んでおり、3人でよく遊んでいた中である。


倫「ところで何の用事で電話してきたの~」


主税「実は、氷堂さんについてなんだけど・・・・・・」


倫「え、あの氷嬢様に!?でもなんで急に?もしかして彼女のこと好きになったの!?でも彼女は高嶺の花よ~」


主税「うるせぇ!そんなんじゃねえよ!」


主税は倫に鈴女が普段学校でのことを聞いた。すると、彼女から衝撃の一言が・・・・・・


倫「そっか・・・・・・知らないんだ。」


主税「知らないって何か?」


倫「彼女・・・・・・いじめられてるの。」


主税「いじめ!?」


倫「氷嬢様、自分から話す人じゃないし男子から可愛いと言われて嫉妬している子が多くてね、それを気に食わない人がいじめに発展していっちゃったの。」


主税「ふざけんなよ!そんなどうでもいい理由でクラスメイトを傷つけるなんて」


倫「私に怒らないでよ。でも、このままじゃダメだってわかってるの。」


主税「助けたりしたらお前が次のいじめのターゲットにされるからだろ。そんなこと俺だってわかってるよ。」


倫「ごめん・・・・・・」


主税「でも事情は分かった。ありがと、倫。」


主税は電話を切った。それから数時間後・・・・・・


鈴女「んっ・・・・・・」


鈴女は重い瞼を開いた。ゆっくりと起き上がると頭にのせていた絞りタオルが落ちた。


鈴女「これは・・・・・・」


主税「なんだ、もう目が覚めたのか?」


鈴女が振り返ると主税がお盆を持ってやってきた。お盆にはおかゆが置いてあった。


主税「梅干し苦手か?」


鈴女「・・・・・・食べられます。」


主税「そうか。」


鈴女はスプーンを持ちおかゆを口に運んだ。


鈴女「{モグモグ}」


主税「氷堂さん。いじめられていたのか?」


鈴女は主税を見つめた。驚いた表情ではなくいつもの無表情で。


鈴女「どうしてそのことを・・・・・・」


主税「悪い、知り合いから話を聞いたんだよ。」


鈴女「・・・・・・。」


主税「なあ、せめて教えてくれないか?まだ日は経っていないとはいえお隣同士なんだからさ。」


鈴女「・・・・・・元々、自分から喋るタイプではないので、話しかけられてもなんて返していいのかわかりません。それが無視しているように思われて孤立していくようになりました。今回のことはトイレに入った時、天井からバケツ入りの水が降ってきました。」


主税「ドラマとかでよく見る古典的ないじめだな・・・・・・」


鈴女「でも悪いのは私なので・・・・・・」


主税「言いたいことは分かった。でもこのままやり過ごすのは俺は許さねえ。」


鈴女「どうするつもりなのですか?」


主税「俺が氷堂さんのいじめを止める!」


鈴女「無茶ですよ。もしかしたら鍛冶場さんも被害が及びますよ。」


主税「知らねえよ!自分のことは自分で何とかする!だから氷堂さんも今は俺を頼ってくれ!」


鈴女「・・・・・・自分勝手な人ですね。自分の身はどうなってもいいけど私は守るみたいな言い方じゃないですか。」


主税「しょうがねえだろう。俺バカだから。」


鈴女「・・・・・・分かりました。お願いしてもよろしいでしょうか。」


主税「まかせなって!でも、誰にいじめられているのか見当はついているのか?」


鈴女「えぇ。」


次の日、主税はその女子生徒について倫に話を聞いていた。


倫「その子、好きだった先輩が氷堂さんに告白して振ったのが許せなかったみたい。」


主税「完全な逆恨みじゃないか。」


倫「でもそんな話を聞いてどうするの?」


主税「簡単な話、そいつが氷堂さんをいじめているという証拠をつかむ。引っかかってくれたらこっちの勝ちだ。」


倫「そんなに氷堂さんのことが好きだったんだね~」


主税「バッ!違って!!俺はクラスの子がいじめられてんのを見て黙ってられないんだよ!」


倫「本当に変わんないね。正義感の強いところが。」


こうして主税は鈴女のいじめ撲滅作戦を決行することに


主税「(今日、氷堂さんは放課後空き教室に呼ばれていた。つまり、今日が一網打尽にするチャンス!)」


放課後、鈴女は言われた通り空き教室にやってきた。空き教室には3人の女子生徒がいた。倫に言われた主犯は真ん中に立っていた。


女子生徒A「あんた、氷嬢様って言われて調子乗っているでしょ。」


鈴女「・・・・・・。」


鈴女は黙り込んでいた。


女子生徒A「・・・・・・また無視?ありえなくない?こっちが説明しているの、うんとかすんとか言いなさいよ。」


鈴女は変わらず黙り込んでいた。


女子生徒A「ちっ、ホントムカつく。あんたをボコボコにしないと気が済まないわ!」


女子生徒が手を出し殴った。鈴女は殴られた衝撃で後ろに倒れた。


女子生徒A「そのすました顔をあざだらけにしてあげる!」


女子生徒が倒れている鈴女に再び殴りかかろうとした瞬間・・・・・・教室のロッカーが勢いよく開いた。


主税「はいそこまで~!お姉さん随分面白そうなことやってんね。」


ロッカーから主税がスマホを持って現れた。


女子生徒A「お前、隣のクラスの鍛冶場!?」


主税「今までの行動は全部録音と撮影されているから。」


女子生徒は主税からスマホを取り上げた。スマホにある音声データと写真を消した。


主税「ちなみに消しても別のクラスメイトにデータ送っておいたから。」


女子生徒A「は!?」


主税「これを生活指導の先生に送ったら停学処分だろうな・・・・・・」


女子生徒A「おい、鍛冶場を捕まえろ!口止めしてやる!」


しかし、取り巻きの女子は鈴女を立ち上げるのを助けていた。


女子生徒A「おい!何してんだ!?」


主税「悪いけどその二人は俺の味方だぞ。」


女子生徒A「なに!?」


女子生徒B「ご、ごめんなさい!!」


女子生徒C「これ以上氷堂さんをいじめることなんてできないよ。」


主税「指示は全部お前がやっていたことらしいな。つまり指示のないこいつらは氷堂さんには無害だ。」


女子生徒A「そうか、お前、氷嬢様のことが好きなんだな。だからこんな偽善者みたいなことをして株を上げようとしていたんだ。きっとそうだ!」


主税はゆっくりと女子生徒Aに向かって歩き出した。女子生徒Aはその気迫に後ずさりをしていた。壁に追い込まれ主税は右手を思い切りに壁に手を付けた。いわゆる壁ドンというやつだ。しかしラブコメの要素は全くなく主税は鬼気せまる顔で彼女を睨んだ。


主税「次同じ事したら社会的に抹殺してやる。それが嫌ならここから立ち去れ!!」


女子生徒はその場から一目散に立ち去っていった。


女子生徒B「ごめんなさい氷堂さん!」


女子生徒C「私たち逆らうことができなくて・・・・・・氷堂さんにつらい思いをさせてごめんなさい!!」


女子生徒二人は泣きながら鈴女に謝った。


鈴女「いえ、助けてくれてありがとうございます。」


女子生徒B「それを言うなら鍛冶場くんだよ。」


主税「お、俺はいじめが許せなくて・・・・・・その一心で動いちゃって・・・・・・」


女子生徒C「でもかっこよかったよ!」


主税は二人に言い寄られ焦りと同様で頭がこんがらがって口が回らなくなった。


帰りは鈴女と一緒に帰ることに、夜遅いので生徒はほとんどいない。


主税「わりぃ、ほんとうは無傷で解決しないといけないのに怪我せさちまって」


鈴女「大丈夫です。」


主税「そうだ、今日の晩飯はいじめに勝ったからトンカツとかどうだ?」


鈴女「いいんですか?そんな豪華な夕食で?」


主税「ケガを負わせたお詫びだよ。」


鈴女「そうですか・・・・・・ではお願いいたします。」


こうして二人でトンカツを食べることに決定した。次の日から鈴女に対するいじめはなくなったのであった。


第2話(完)

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