究極神剣の鍛冶師~呪ろわれた剣を合成しまくったら、神剣が出来てしまいました。神剣+32767は最強です。一振りで海が裂け、山が割れます~

喰寝丸太

第1話 究極神剣の鍛冶師

「おい、クラフト。呪いの剣を管理しとけ。お前の仕事はそれしかないんだから、しっかりやれよ」


 そう言われて木箱を渡された。

 木箱にはお札が貼られている呪われたの剣が10振り入っていた。


 俺はクラフト、見習い鍛冶師だ。

 鍛冶ギルドのアルバイトをして暮らしている。

 いま命令したのは鍛冶ギルドマスターのダサック。

 先月就任したばかりだ。


「あの封印のお札がもう無いんですけど」


 呪われた剣が手に入ると、浄化するまでは封印のお札を貼っておく。

 定期的にこれを貼り換えるのが俺の仕事だ。

 ダサックがギルドマスターになってから、お札が入ってこなくなった。

 それどころか浄化すら行われていない。


「つべこべ言うな。お前が何とかしろ」

「そんなこと言われても」

「とにかくなんとかしろ」


 ダサックは逃げるように去って行った。


「ちょっと待って」


 鈍い俺にもどんなことか分かる。

 ダサックが使い込んだんだ。


 元ギルドマスターに直訴したいが、大丈夫だろうか。

 首になったりはしないかな。

 ダサックが工房の親方に俺の悪口を吹き込んだりしたら、弟子入りが出来なくなる。

 ここで働いて実績を作り、紹介状を書いて貰うのが夢なんだ。


 5年も働いているけど潮時なのかな。

 いいや、誓ったんだ。

 故郷の村を救った冒険者キュウティナに、折れた剣の代わりを作るって。


 キュウティナはもう代わりの愛剣を見つけてしまっただろうか。

 俺は元ギルドマスターの所に行った。


「ダサックが酷いんです。封印のお札を買ってくれません」

「辛抱が足らんな。工房に入りたいなら我慢しろ。アルバイトで貯めた金があるだろう。自腹を切ってお札を買え」


 えっ、そんな。

 これも修行だとでも言うのか。

 これ以上言っても無駄なようだ。


「分かりました」


 どうしよう。

 俺は途方にくれた。

 そして、ある考えが浮かんだ。

 ダサックは呪われた剣の本数を管理しているんだろうか。


 俺は帳簿を調べた。

 やっぱりだ。

 数が少なくなっている。

 浄化されて、くず鉄になったと、記載されている。


 俺がどこかに訴え出たとして意見が通るかな。

 たぶん駄目だ。

 下手したら俺がやった事にされるかも。


 呪われた剣を捨てたりしたら駄目だよな。

 お札の効力が切れたら被害が出る。


 他人に迷惑を掛けるのは駄目だ。

 キュウティナに顔向けが出来なくなる。


 何とかしないと。

 自腹でなんとかなる金額じゃないな。

 これから雪だるま式に必要なお札は増えていくはず。


 俺は悩んだ。

 そして出た結論が2本を1本にするだった。

 剣の合成は良く行われる作業だ。

 +の値が大きくなるほど失敗する確率が高い。

 呪われた剣と言ったって、所詮-1から-10。

 独学で学んだ俺でも、合成に失敗する事はないだろう。


 俺は試しに-1の剣2つを手に取った。


「【合成】。上手くいった。【鑑定】」


 -2の剣が一つ出来た。

 よし、-1を全部-2にしてしまおう。


 100本ほどの-1の剣が-2に合成されたところで俺の魔力が尽きた。

 嬉しい誤算が3つある。

 +が大きいほど合成は失敗する。

 じゃあ-はどうかという成功確率が上がるようだ。

 その証拠に100本ほどやったが、全部成功した。


 2つ目の誤算は俺のレベルが上がったのだ。

 あれだけ合成すればそうなるよな。


 3つ目は貼ってあるお札が一緒に合成されて期限が伸びた。

 これで当分お札を買う必要がない。


 次の日から俺は呪われた剣を合成しまくった。

 もちろん、足りないお札は自腹で買った。


 そして、出来上がったのが、呪われた剣-32768。


「おい、呪われた剣だ。管理しとけよ」

「はい」


 ダサックに命令された剣を合成することにした。

 どうせ倉庫の中なんか見ないんだ。


「【合成】。【鑑定】。えっ、何だって?」


 驚いた事に呪われていた剣が+32767になっていた。

 俺はお札を恐る恐る剥がした。


 握った手も体も異常がない。

 それどころか力が溢れて来るようだ。

 +10以上になると名剣で。

 +100以上になると聖剣。

 +1000以上は神剣と呼ばれている。


 聖剣はこの国に一振りしかない。

 神剣は伝説で、保有している噂は聞こえて来ない。

 名剣クラスになると合成の成功確率はかなり低い。

 一から名剣や神剣を作った方が早い。


 それが3万2千だって。

 こんなの振るったら地形が変わるんじゃないだろうか。


 この剣をどうしよう。


「お前、ついにやったな」


 ダサックが倉庫に入ってきた。


「やったって何を」

「惚けるのか。お札と浄化の代金を着服しただろう。それに呪われた剣はどうした。捨てたのか。捨てたんだな」


 くっ、俺に罪をなすり付けるつもりだ。

 俺はこそっと神剣にお札を貼り直した。


「してません」

「そうか。お前は首だ。工房には回状を回しておくからな」


 もはや、ここは俺がいるべき場所じゃない。

 鍛冶師になる夢は絶たれたが、この神剣をキュウティナに届けよう。

 それで誓いは守られる。


「この呪われた剣は退職金代わりにもらっていきます」

「いいだろう。そんな物くれてやる」


 俺は鍛冶師ギルドを出た。

 上手くやったぞ。

 キュウティナを探す旅に出よう。

 神剣があれば、冒険者ギルドで依頼をこなせるはずだ。

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