現代の魔法の道具
ミンイチ
第1話
ある世界で、科学と魔法が同時に生まれた。
それらはともに人々に見つけられ、競うように発展していった。
科学で見つけられないものを魔法で発見したこともあれば、その逆で魔法で見つけられないものを科学で発見したこともある。
いつからか、科学と魔法は互いに支え合わなければ成立しないものとなっていった。
しかし、魔法には科学には無い欠点が存在していた。
それは、魔法を使うには素質が必要だったという点だ。
科学は、知識と資金さえあれば研究を行うことができるが、魔法は素質がなければほとんどの研究ができない。
かつては、ほぼ全ての人々がその素質を持っていたはずだが、時代が進み、科学が発展していくうちに人々の持つ素質の力が弱まっていき、そもそも素質を持っていない者も現れ始めた。
市民は魔法が使えないなら科学を使えば良いといった考えで暮らし始めた。
しかし、研究者たちはそうではなかった。
今までは、片方で研究に行き詰まるともう片方に助力を求め、研究を前に進ませていった。
それができなくなるからだ。
研究者たちはどうにかして、今後も魔法を使える方法を探し始めた。
しかし、それはうまくいかなかった。
いくつかの、魔法を残す方法を考え、それを実践したとしても、それがうまくいかないことが当たり前であり、成功したとしても、何かしら大きな欠点があった。
全ての研究者たちが諦めかけていた時に、ある古文書が見つかった。
そこには、別の世界で起きた、今この世界で起こっていることと似ている事例と、その解決策が書かれていた。
そこに書かれていた方法とは、全ての人の魔法の素質を消し去る代わりに、誰にでも使える魔法を使うことのできる道具を生み出す、というものだ。
使うための条件は、それに手を触れてどんな魔法を使いたいかと考えるだけど良いらしい。
生み出す道具の見た目はある程度操作できるようで、この文書においては大きな宝石が埋め込まれた指輪や、立派な杖のような国の権力を象徴するような物が多かった。
しかし、この世界においては国王というような存在はほとんど残っておらず、残っていたとしても、それほど大きな権力を持たなくなっていた。
そもそも、国王に連なるものしか使うことができないのならば、自分たちには使えないだろうと研究者たちは考え、自分たちに身近なものに似せて道具を作ることにした。
「自分たちに身近な道具」といっても、いろいろなものがあり、中には一般の人々には知られていない道具も多々あった。
それに加え、あまりにも魔法の道具だとわかりやすい見た目のものにしてしまうと、それを悪用しようとする者の手に渡りやすいのではとも考えた。
研究者たちは、「それを使うときは手で持つ(あるいは触る)」「一般の人々にも知られている」「それが魔法の道具であるとわかりにくい」ものを考え出した。
彼らはそれに似せて道具を作り、その似せる元の道具を世間に普及させた。
それはガラスでできた棒状のものであるため、“ガラス棒“ と呼ばれている。
それは現代においても、学校の理科の実験の時でさえ使われている。
しかし、魔法と化学との境界が曖昧になりすぎたゆえに、どのガラス棒が魔法の道具なのかは誰にも判断できない。
現代の魔法の道具 ミンイチ @DoTK
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