「加藤、昨日の漫画だけど……」

「今日はいないわよ。どこをどう見たら私と加藤さんを見間違えるよ」

 そうだった。ここにいたのは澤村スペンサー英梨々だった。

 わざわざフルネームでいうこともないのだが。

「そうだった。今日は家庭の予定でもう帰ったのだったな」

「そうよ」

 珍しく液晶タブレットを隣に置いて英梨々は漫画を読んでいた。

「漫画か。どうだ、それ面白いか?」

「ストーリーはあまり読んでいないからどうだか。私はね絵柄や描写を見ているの。タッチの研究も兼ねてね」

「なるほどな。流行りの絵柄や斬新なものとか、これから来そうなタッチとかだな。それもアリといえばアリだな。ストーリーが良くても絵が自分に合わないとそれ時点でアウトって良くある話だ」

「そういうこと。分かったら邪魔しないでね」

 うーん。取り付く島もない。つい最近まで消費型のオタクだった俺と違って、同じ漫画を読むのでも見方が違う。それは俺だって絵柄は多少は気にする。例えばギャグ漫画では綺麗な絵柄よりコミカルな方が楽しめたりな。

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