第15話

「シュトイベン司令長官……やはりここは出て決戦をしかけるしかありません!」

「ぐ……いや、我が艦隊はここにいるだけで効果を発揮しているのだ、それに、何度も言うように戦力比では我が方が劣勢なのだ……決戦は避けるべきだ」

名前を呼ばれたシュトイベン司令長官は振り返りながら言った。

ここはセクザン帝国海軍艦隊司令部の一室、豪華絢爛な装飾が様々な点に為されているが、どこか寂しさを感じさせるものがあった。


「しかし!それではこの劣勢はいつまで経っても解消されません!ならば、ここで決戦をしかけ勝利するしか挽回の手は……」

「クラウゼヴィッツ君、決戦にこだわらなくてもいいだろう。この前の大テリブン王国本土砲撃も成功したのだから、通商破壊や沿岸都市を砲撃していき敵を弱めれば……」

「弱める?!本土砲撃に成功したあとシャローパイル海戦が起こり我々は敗北したではないですか!弱っていくのは我々です!」

「い、いやあれは我々の戦術的勝利だ、敵巡洋戦艦を大破せしめた」

「そのかわり巡洋艦を3隻と駆逐艦を1隻失いましたがね……そして、それ以前にヘルゴーランド沖海戦でも負けたではないですか」

「あれは小競り合いだ。気にする必要はない」

「敵は巡洋戦艦まで出してきたんですよ!なにが小競り合いですか。こっちは巡洋艦を増援として送り出しただけで……」

「認めよう……あれは敗北だった」


「ああ、そうでした。今日ここへ来たのはこれを相談する為でした……」

クラウゼヴィッツ中将は一呼吸おき書類を数枚差し出して話し始める。

「シャローパイル海戦において我々の艦隊はその位置を特定されていました。そのせいで我々は敗北しました。これはおそらく暗号を解読されていたのではないかと推測します」

「……暗号を作り替えるのはとてつもなく大変な作業だぞ」

「いえ、違います。それを利用するんです。最新の戦艦2隻がありますよね、それを改装のため別の港に移送します。あえて少ない護衛で。それに改装のためなんですから敵は戦闘準備が整っているとは知りません。敵にとっては大きなチャンスです。逃す手はありません。当然敵艦隊はやってくるでしょう。そこをこちらも艦隊を出して迎え撃つのです」

「……ふむ、実際に暗号が解読されているか確かめれるな、悪くない作戦だ」

「もちろん私の考えた作戦は完璧ではないです。参謀の方にこの書類を提出する許可をください」

「うむ、よかろう」

シュトイベン司令長官は書類に印を押しクラウゼヴィッツ中将に返却した。




「ホーンビー司令長官!セクザン帝国海軍の通信が活発になっており、解読した結果、なんと最新鋭戦艦2隻が移送されるそうです!」

「ブラウン中将それは確かなのか?」

「ええ!セクザン帝国海軍の暗号を解読した名誉ある暗号解読部からの情報ですから」

「……国民は、マスコミはまたもや勝利を求めている。行って沈めるべき、か……」

「すぐに付近にいる潜水艦に偵察させます、戦艦が港を出たら確実ですね」

「ああ」

ホーンビー司令長官はもうすでにどの艦隊を出すべきか思案している。

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