第14話

船はセクザン帝国の北部の街に到着した。

もともと出発地からセクザン帝国と大テリブン王国へとゆく船は一隻のみだったため、目的地を選ぶことはできなかった。

だが、二人は満足だった。ベッセラーは別として。

セクザン帝国は赤道を超えてさらに南に行って赤道から離れているため、セプテントレオ島と同じくらいの寒さだった。

「へぇ、ここの建物は石造りが多いねえ」

「見てドレッド、レンガ造りも多いみたいよ、寒さに強いからかしらね」

「うーん、ここがセクザン帝国か……初めて来たがもっと、こう、大きな港が見たいなぁ」

とベッセラー。

3人とも寒さから着込んでいる。

「二階建てや三階建ても結構あるな」

これはドレッド。

「建築技術もあるってことかしらね」

これはメモン。

「さすが大国って感じだな」

これはベッセラー。


「ベッセラーさん、セクザン帝国の地理はどうなってるんだ?ここの地図は持ってなくて」

「あ、あたしも気になるー」

「うん、良い機会だし、セクザン帝国と大テリブン王国の位置関係もあわせて教えよう」

ベッセラーは一呼吸おいて、

「まずセクザン帝国は十字のようになっていて、右側が左側より大きくなっている。大テリブン王国はセクザン帝国の南西に海を挟んで位置していて、複雑な形をした左右に長い島国なんだ。ちなみにこの二つの国の間の海のことを中央海と呼んでいるんだ。地図を買ってきた。こんな感じだ」

ベッセラーが差し出した地図を二人はまじまじと見る。




「……さて、地理は分かったかな?これからのことなんだけど、俺はどうせならもっと大きい港がある街に行きたいんだ。君たちはどうする?」

「俺たちも着いていっていいか?この国を見てまわりたいぜ」

「あたしも賛成賛成、ついていくよ」

「よーしわかったぜ、目指すは、国で一番大きくて有名な港町ハンマーバーグへ!」

ベッセラーは気分が上がっている。



「……と、はしゃいだ所でハンマーバーグ行きの船便はなさそうだ……いくとしたら鉄道だな」

ベッセラーの気分はダダ下がりだ。

船着場に戻りハンマーバーグ行きの船を探したが見当たらなかったためだ。

「しかし、どうしてあんなにたくさんの漁船も港にいたんだ?」

ドレッドは疑問を持つ。

「……ああ、俺の推測だがなんらかの理由で漁に出れないんだろうな。今の時期魚がとれないはずがない」

ベッセラーは口角を下げながら言う。

「空飛んで魚取ればいいのに」

「無茶言うな。人間にはできねえよ」

「さ、ハンマーバーグへゆく方法を探さないとな。さすがに歩くのはつらそうだ」

「じゃ、鉄道はどうだ?この国の鉄道もみてみたい」

ドレッドは鉄道をすっかり気に入っている。

「私も乗りたいなー……この国なら乗れるのかな」

そうメモンがこぼす。

「……じゃ、船は諦めて鉄道を選ぼう。駅へ向かおう」

ベッセラーはまだしょげている。



「これがこの国の駅なんだねー」

「なかなか発展してるなぁ」

「セクザン帝国はこの世界で1.2位を争うくらいに発展してるからな。もちろん争ってる相手国は大テリブン王国とだ」

セクザン帝国北部の街の駅は一部が金色に光り輝いており(おそらく金メッキで)、荘厳な趣きがあった。

3人は駅の外から眺めている。

これは駅の周りが人でごった返ししているからである。

「さすが大国……人の移動が激しすぎるぞ」

とドレッド。

「それにしても獣人はぜんぜんいないねぇ」

「……これじゃあ到底列車に乗ることなんて無理だな……もう一度船を探した方が早いかもしれないな」

ベッセラーはまたもや諦めたように言う。



先ほどの船着場に戻りもう一度見渡す。

すると、

「ん?!この船は……俺が設計した船か!?なんと!こんなところで出会えるとは!」

ベッセラーは今までの顔色を変え、なかなかな大きさの船へ駆けていく。

「ああ、船長、久しぶりだ!」

「ベッセラーくん!船を買った時以来だな……会えるとは思わなかった」

二人は再会を喜びハグをし、会話を続ける。

「なあ船長、俺たちはこの国にきたばかりでね、何が起こってるか教えてくれよ」

「もちろんかまわんよ、それで、えーと何から話そうか」

「じゃあ漁船がこんなにとまってる理由を」

「それなら、今この国が大テリブン王国と戦争をしていて海上封鎖を受けて漁に出れないんだ」

「海上封鎖……か」

「あの、海上封鎖ってどうなってるんですか?」

ドレッドが口を挟む。

「どんな船があろうとも港を出て少しでも大テリブン王国に近づくと軍艦から砲弾が飛んでくるのだ。中央海を海上封鎖しているため輸出入ができず経済にもダメージがある。たまったものじゃないな……セクザン帝国海軍は大テリブン王国より劣勢だから艦隊保全主義をとり港から出ないんじゃ。一度負けると取り返しがつかないと考えているのかもしれぬ」


「ハンマーバーグへ行きたいんだ!戦争がいつ終わるかわからないんだから今進みたいんだ。頼むよ船長」

「うーーむ、だがこの船を設計した恩義があるからな、しょうがない、行ってやろう!だが、これっきりだぞ。次はないからな」

「おお、ありがたいことだ、感謝するよ船長、ドレッド!メモン!行ってくれるぞ!」

ドレッドとメモンはえ、と声をそろえ、そして船長に感謝した。

「さぁ船に乗り込め、行き先はハンマーバーグ、錨をあげるぞ!」

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