ある日突然…

にれふ

第1話

「最近めっちゃ肩がこるんだよねぇ」

友達と話してる女子高生。


右肩でしょ?

霊が憑いてるから。


「年のせいかな?左膝が痛くてかなわないよ」

少しお腹が出てるサラリーマン。


違うよ。

霊のせいだよ。


僕には見えるんだ。

ある日突然見えるようになったんだ。


元々は僕も信じてなかったよ。

霊の存在なんかさ。


だから見えない人や信じてない人が軽い気持ちで心霊スポットに行くのはわからなくもない。


でも今は違う。

ハッキリと見えるんだ。


だから僕は止めたんだ。


言い出しっぺはお調子者の太一だった。


「今から例の廃病院で肝試ししようぜ」


難色を示したのは奈津美だ。


「えー、あそこヤバくない?出るって噂だし」


噂じゃない。

出るって言うよりいるんだよ。

しかもいっぱい。

止めるべきだ。


「あの病院はまずい。行くのはやめた方がいい」


僕は良かれと思って言ったのに雄二は


「もし何か出たら俺らが守ってやるよ」


なんて気にもとめない。

奈津美の前でカッコつけたかったんだと思う。


「もうこんな時間だし…」


渋る奈津美に僕も賛同しようとした時に


「まだ21時だぜ。ちょっとくらい、いいじゃん」


と言った太一に雄二が被せた。


「決まり!今から行こう」


結局みんなで廃病院に向かうことになった。

途中コンビニで懐中電灯を買って病院を目指す。


怖がる奈津美に対して雄二は運転をしながら、俺から離れなければ大丈夫とか俺は霊感があるから大丈夫なんて適当なことを言ってた。


霊感があるなら、あそこのヤバさはわかるだろ。


「今からでも引き返さないか?」


僕が提案したタイミングで病院に着いてしまった。


うわぁ。

いっぱいいる。


自称霊感のある雄二が


「今のところ何も感じないから大丈夫」


なんて言ってみんなで車から降りた。


「おーし。俺が先頭で行くわ」


太一を先頭に奈津美を挟んで雄二、その後ろから僕という並びで病院に入った。


入った途端に奈津美は


「何かイヤな感じがする」


とビビりまくった。


その感覚は正しいよ。

霊がまとわりついてる。


僕には見えるんだ。

もちろんそんな事は奈津美に言えない。


「もう、そろそろ帰らないか?」


僕は提案したけど雄二が


「全然大丈夫だよ。ほら病室も回ってみよう」


なんて言うし太一はどんどん先に進んだ。


病棟は霊の溜まり場みたいになっている。

流石に太一も感じたらしい。


「ちょっと鳥肌たってるわ」


うん。

完全に囲まれてる。


「そ、そうか?俺は大丈びだけど」


口が回ってない。

雄二も何となくは感じてるはずだ。


「もう嫌だ。怖い」


奈津美が泣き出した。


「奈津美が泣いてるし帰ろう」


僕は諭すように言った。


「奈津美がそんなに怖がるなら帰ろうか」


雄二がここでもカッコつけて太一も賛同した。


ホッとした。

何事もなく帰れるかもしれない。


そう思った時だった。

特にタチの悪い霊が奈津美の右足首を掴んだ。


「きゃあぁぁ!」


奈津美の叫び声を合図にみんなの恐怖心に火が着いて一斉に走り出した。


雄二は一目散に逃げ出して太一と奈津美もその後を追う。

僕は一応奈津美の後ろに回ってあげた。


雄二が運転席に、太一が後ろの席に乗り込んだ。

最後に助手席に乗り込んだ途端に奈津美が文句を言う。


「置いてくなんてひどい!」


恐怖心に火が付いてる雄二は聞く耳を持たず車のエンジンをかけようとした。


でもかからない。

霊たちが邪魔してるから。


「あれ?あれ?」


焦る雄二に急かす太一。


霊が離れた。

やっとエンジンがかかった雄二はアクセルを踏み込んだ。


「危ない!止まれ!」


僕は叫んだけど遅かった。


猛スピードで病院を飛び出した車は横から来たダンプとぶつかって大破した。


後ろの席にいた太一とシートベルトをした奈津美は何とか息がある。


雄二は…


エアバッグは反応したけどシートベルトをしてなかったのが良くなかった。

完全に死んでしまってる。


雄二は霊になってしまった。


「あれ?健吾?どうして?」


雄二も見えるようになったらしい。

自分の状況を把握できずに僕に話しかけてきた。


僕も以前は全然霊なんて見えなかった。

でもある日突然見えるようになったんだ。


あれはバイクでツーリングしていた時だ。

山道でスピードを出し過ぎてカーブを曲がり切れずにバイクごと転落した。

助かりようもなかった。


それから僕は見えるようになったんだ。

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ある日突然… にれふ @NIrefu

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