第21話 分身体と次の目的地へ(訂正版)

 流さんも満足したようだ。俺の横で弾んでいる。


「いや~素晴らしいお湯でした。分身体を作った後、一緒に入ってもよろしいでしょうか?オールで入っていても!」


 もう...好きなだけ入って下さい。


「後でお湯を濾過して、温度も適温にしておくね。さっきと同じくらいの温度でいいのかな?」


「お風呂のお湯を綺麗にして頂けるとは!ありがとうございます!分身体と今日は、パーティーナイトです!わっはっはは!」


 昭和の親父みたい...俺世代じゃない?流さんって。


 でも...こんなに喜んでくれるとは思っていなかったから...なんだか嬉しい。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 更に女性陣も皆な「キャッキャ、ウフフ」と言いながら、お風呂から上がってきた。


 全員が更に、綺麗になった感じがする。髪の艶が全然違う。そして皆の表情もニッコニコだ。


 パラクードと俺の奴隷達との壁も、無くなったような気がする。


 お風呂上りに簡単な食事と、キンキンに冷えたビールで乾杯をした。


 さて皆も、飲んで騒いで満足したようだ。この宮殿の2階で休ませてもらうことにした。


「悪いが流さん...分身体の作成を頼む。ただ...無理しなくていいからね。お風呂は濾過して、ご希望の41度にしておいたから。ゆっくりと浸かってね」


「まかして下さい。一体ならあっという間です。その後は、パーティータイムでアゲアゲです!」チャラ男っぽい言い方で返事をしてきた。


 さあ寝よう。疲れた。明日はコロに向かって出発だ...。動物たちも満足にえさや水を与えられていない様だ。早く満足させてあげられるような環境に整えてあげないと。何はともあれ、寝よう...。


 皆、おやすみなさい...。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「う~ん」朝陽が眩しい!すがすがしい朝だ。


 せっかくお風呂があるんだ。朝風呂だ!


 皆をおこさないように、そっと扉を開け、階段を降り、お風呂場に向かった。


 男湯に向かって歩いていると、男性用の脱衣場から出て来た、流さんとばったりと出くわした。


 今日は朝から、色々な人と出くわす日だな。


 俺に気が付くと流さんが「ご主人様おはようございます」と挨拶をしてきた。


「ああ、おはよう流さん。お風呂で一夜を明かしたのかい?」


「はい!忘れられない夜となりました...」そう俺に言ってきた。


 なんだか...意味深な言い方をする。


「じゃあ、俺もお風呂に入って来るね」と流さんに伝え脱衣場の、のれんをくぐった。脱衣場で洋服を脱いでいると流さんがお風呂から出てきた。


「ご主人様おはようございます」


「ああ、おはよう...って流さん...増えたのね。どっちが分身体なの?」


「私たちは、すべてが本体であり、逆説的に言えば...すべてが分身体です」


 哲学か!


 まあいいか。同じ思考を持っていてくれれば...問題無いしな。


 それに頭部部にある角の形が、さっきの流さんと違う。


 角の先端が2という形になっている。 


 ということはさっきの流さんは、流さんNO.2かなーと、そんなことを思いながら浴場に行くと「ご主人様、おはようございます」そう、流さんが俺に挨拶をしてきた。


 流さん、結局...分身体を何体作ってくれたの?まだ...この繰り返しは続くの?



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 お風呂から出て会議室に向かうと、何人かが起きてきた。皆ぐっすりと眠れたようだ。


 流さんが自分の後ろに、2体を引き連れて俺の元にやって来た。


 流さんに言わせると、「昨日2体分身体を作成しました。ただし違いが見分け辛いと思うので、角の先端を数字に変形させてあります。そこで見分けを付けて下さい」と念話を送って来た。


 確かにマスター流さんの横にいる2体の角の先端が、1、2の形になっている。


 違いが分かりやすい。これからはマスター流さんなど、区別して呼ぶようにしよう。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 エルス達もちょうど到着したようで、昨日とは違う顔が4人ほど増えていた。エルスを含め獣人が7人となった。バロン、ルネッタも連れて来てくれた。


 そのうちの2人は、俺たちが他のエリアを回りやすいようにと、元暗部と現役の暗部の2人を連れ来てくれた。地理に詳しく、その土地の事情を熟知した者だと言って、紹介をしてくれた。


「よろしくお願いします」


 スッと俺の後ろに現れた。


 蝙蝠コウモリ族のルーメイと名乗った。獣人族の暗部的な役割を担うという。


「蝙蝠族だから昼間は苦手なの?」と聞いたが、そんなことは無いらしい。「どちらかといえば暗闇に紛れるのが得意です」と言った。


 スレンダーな女性で、すっと目鼻が通った美人だ。落ち着いている雰囲気があり、見た感じは20代後半で、控えめな印象を受けた。


 武器はチャクラムやダガーを使いこなすらしい。


 隠密行動や危険察知能力に優れ、罠の解除もできる。エルスが「一人は罠解除ができる者がいた方がいいです」とメンバーに加えてくれた。


 最後はエルスの父親エルム。


 エルスに族長の座を譲り、日がな一日、趣味の盆栽をいじって過ごしている様だ。今回はボケ防止のため、参加するとのこと。


 そうはいっているが、俺の鑑定がエルムに対して反応を示している。ここにいる獣人族の中で、一番強いのがエルムだろう。見た目は顔にしわがあり、にこやかな笑顔で尻尾と豹耳のある爺さん。


 そんなエルムが俺の傍に寄って来て、話かけてきた。


「いやはやレン様。お風呂は最高です。キンキンに冷えたビールも。もうやめられませんぞ...ほっほほほほ」


 エルムはしわしわな顔を、更にしわしわにした。


 身体的な実力と隠密行動はまだまだ衰えていない様だ。さらに他のエリアの主要メンバーにも顔が利く。その土地の情報が得られやすいなどメリットが高い。


 こんな実力者たち2人なら、「戦の間」に連れて行きたいだろう。だがあえてこちらに回してくれることに感謝だ。エルムありがとう。


 さあ、俺たちも次の目的地、酪農地帯コロに向けて出発するか。はやる気持ちを抑え、俺たちはコロに向けて旅立った。

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