人骨ピアノ
美作為朝
シャルル=ルイ・アノン
私の手元には古びたピアノ教則本が置かれている。
その教則本を見ながら、通っていたピアノ教室のことをここに書き綴ろうと思う。
そう、それはもう遠い昔と言っても良いだろう。
ネットもPCもスマホなんて一切なかった時代の話。
今では楽器を習うと言えば、通いやすい大型商業施設の楽器店に併設された防音がばっちりの小部屋でプライバシーも守られつつ習うのが一般的だろう。
私のころは違った。
普通の防音設備もない宅地の応接間でアップライトのピアノが二台並べられて音大出の人物が教えていた。
私が通っていたのはそういうピアノ教室だった。
教則本も流行の曲が白鍵を中心としたキーに書き換えられた教則本ではなく、名前からして
子供が聞いて知っているメロディなどかけらもない曲ばかりを無理やり弾かされていた。
私の父は
ところがある日、競馬かボーナスか賞与かなにかわからないがサラリーマンにしてはちょっとした大金を手にしなんと、オルガンを我が家に買い入れた。
ピアノでなくオルガンというところが父の限界点だが、オルガン代をさらにギャンブルに
当時幼い息子を音楽に触れさせたいという淡い夢か希望を持っていたのかもしれない。
このオルガン購入に一番喜び感激したのは母である。
兄はもう中学生という自我がしっかりしだした扱いにくい年頃だったので私がオルガンを弾く、いや正確には楽器を弾けるようになるのが役割となった。
母はあっという間に数ヶ月前に引っ越してきたという近所のピアノ教室を見つけてくるとペコペコ頭を下げ月謝を払い私を通わせることにした。
そのピアノ教室は
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