泡沫の魚
ももちよろづ
泡沫の魚
一八六五年 七月 三日
土佐
同年 同月 同日
土佐勤王
以蔵ノ 自白ニ
◎ ◎
ふたたびと 返らぬ
今は
- 武市 瑞山 -
君が
消えにし
- 岡田 以蔵 -
◎ ◎
「百一、百二……!」
土佐、武市道場。
儂は、
「精が出よるな、以蔵」
「武市先生!」
道場の
「
「わぁ、
「疲れたやろ、ちっくと休めや」
先生と、
外は、えい天気で、庭は、夏の草の
パシャン、と池の
この握り飯、中身は何やろう?
具が知りとうて、先に
「ははっ、毒でも入ってると思うたか?」
「
儂は、
「頬っぺたに、米
「えっ?」
先生は、儂の頬に付いた米粒を
鯉が、口をパクパク開けて、寄って来る。
「鯉、大きいですにゃあ」
「おう、池に入れて、もう何年になるがか」
先生は、
「以蔵は、
これから、まっこと強うなるぜよ」
「本当ですきに!?」
先生に
「……儂が、国の為に立ち上がったら、
剣を振るうてくれるか?」
先生が、急に声の調子を落とした。
「はい」
「危険な仕事に、なるぜよ?」
「先生の為なら」
「役人に
「ごうもん?」
「痛いで?
以蔵は泣き
「泣かんし!」
ぷぅ、と頬を膨らます。
ベチン!
「いっで!いっ」
中指で、でこを
「はぁ……、この
「先生ッ!」
「ははっ、済まにゃあ」
そう言うて、先生は、頭を
「痛うても、口を割らんか?」
「先生を売る位なら、儂は、舌を
「約束や」
小指を絡ませる。
「指切りげんまん、
「えい子や」
満足気に笑う先生。
「じゃあ、儂は、会合に行くきに」
「お
「おまんが聞いても、
留守番しいや」
「解りますき!」
「ほう、言うてみ?」
「えっと、じょう……い?」
「……外国人を追い払い、日本を守るんぜよ」
「
「じゃあ、
「行ってらっしゃい」
先生の背中は、
何とは無しに、庭を
台所から、飯炊きの女中さんが、
ざぶん、と池に桶を
「鯉、どうするぜよ?」
「
「食うんか!?」
「へえ、
「先生が?
鯉、あげに
「
桶を
その晩、先生の
捌きたての鯉は、まっこと、
何でか、ちっくと、
泡沫の魚 ももちよろづ @momo24rose
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます