part7〜不穏と成功〜


「はい、この辺での目撃情報が多数。」


一時期撮影から離脱した俺は、捜査を開始していた。

翔兄さんの車という足を借りながら、転々と近くの住宅街を聞き込みしてゆく。

そんな中、気掛かりな情報を掴んだ。


「近くで殺人事件......ですか?」


「そうですね......最近物騒で困ります。」


聞き込みにアタリが入ったのは、それを初めて二時間とちょっとだった。


「具体的にどんな事件が、教えて貰っても?」


「はい、確か、殺されたのは普通のサラリーマンで、切りつけられて殺されたとか......あとはその傷口が大きいから長物の近接器で切り付けられたんだろうって話です」


「成程......ありがとうございます!それでは!」


長物の近接武器を扱い、しかもそれが刃物であるならば、人物はだいぶ絞れてくる。

"あの組織"関与であるなら尚更だ。

"あの組織"で長刃物を使っていた人物はトップ十の中でも三人、薙刀を扱う"テリス・リガティ"、刀と銃を同時に扱う"スレイン・g・アルバ"、戦闘斧を扱う"スチレット"の三人。

この中の一人が今回の敵であるならば、厄介極まりない。

俺と同じく組織の元メンバーであり、殺人の技術は超一流。

だけでなく、彼らは昔組織ではトップに入っていた人間。

組織内では自由に武器を選び、訓練することが許されていた。

だが、そんな中でも大半が銃とナイフを選ぶ中、彼らはそんな特殊近接武器を選び、組織のトップに上り詰めた実力を持つ。

あいつらが相手なら、流石に俺も手こずるかもしれない。

すると、

けたたましい音を鳴らしながらスマホが震える。

着信相手を確認した俺は電話を取った。


「蒼、何か掴んだか?」


「あぁ、つかんだよ......」


掴んでいた情報をある程度翔兄さんに伝え終わると、兄さんは難しそうに顔を顰めて、しまいには唸り声を上げた。

 

「そうか......他に警察の協力でデータベースを見せて貰ったが、最近此処らでは連続殺傷事件が起こっているらしい。」


「へぇ、その犯人が、今回手紙を寄越した奴であり、"あの組織"の元メンバーってわけか」


「とりあえず迎えに行く、そろそろ配信も始まるはずだ。蒼、発砲を許可する。しかし、射殺は許可しない。彼女らを守ってやれ」


「了解」


刹那、プツンという音が静かに鳴り、通話は途切れた。


「これは、イヤな予感がするんだよなぁ」


こんな日の俺の予感は外れたことがない

そんな予感、と言うか悪寒レーダーが反応している、警戒しつつ、俺は翔兄さんを待った。


「ついた。とりあえずはここで......」


あのあと、翔兄さんの迎えの車に乗り込んだ俺は、百合香さんと連絡をとりつつ、ホテルへ帰ってきた。


「ん?......」


そこで俺は、違和感を覚える人影を目にする。


薄手の灰色ジャンバーを着た一人の青年?らしき人物だ。

よく見ると裾の部分が膨らんでいる。

しかし、俺はその膨らみの正体を見抜いた。


あれは、太刀だ。


しかし、考えていても始まらない。

俺は車のドアを勢いよく開けて飛び出した。


「おい蒼!?どうした!?」


「おそらくあいつが黒幕だ!警察への通報を頼む!仕留められたら仕留めるが、無理な場合たのんだ!」


兄さんへ最低限のことを告げ、俺は走りつつ、ホルスターに指をかけ、Glock18cのセーフティーレバーを解除した。

もう既にやつはホテルの裏口近くまで歩いている。

行かせはしない!


直後、乾いた発砲音が鳴り響く。


「来ると思ったぜ......クソ野郎。」


しかし、いや、案の定と言うべきか


「ほう、元"第三世代最強"が何故此処に?まぁいい、貴様は今相手にすると不都合だからな」


「だからって、俺が素直にはいそうですか、って行かせると思うか?」


「そうじゃないならたとえ貴様でも切り伏せて進む」


「そうかそうか、よくわかった」


刹那

ほぼ同時に放たれた轟音が辺りを震わせる。

目の前から迫り来る閃光を体の正中線をずらして回避する。

しかし、瞬間的な踏み込みと同時に


「貰ったァ!刹那ァ!」


鋭い風音が頬を凪いだ。

奴の持ち武器。太刀による一閃である。

太刀相手に近接戦闘は自殺行為。

即座にそう判断した俺はバックステップを取り、現状況からの脱却を試みる。と、同時に俺はGlockを高速で抜き放った。

ずっしりと重い数発の発砲音が轟き三発の弾頭が"奴"を襲う......が......


次の瞬間


甲高い金属音と共に三発の弾頭は消えていた。

そうこいつ、あの一瞬で三発の直前距離まできた弾頭の軌道を、刀の縁をぶつけて変えたのである。


簡単に逃してはくれなさそうだ。しかも、さっきから段々と踏み込みのギアが上がってきている。


しかも、最近訓練すらまともに行っていなかった体では流石に奴の踏み込みに追いつくことはできない


ならば!

俺は瞬時にホルスターから電磁特殊警棒を抜き放ち、直後、刀とぶつかり合う。

しかし、防御とまでは行かなかった。

電磁警棒が真っ二つに切られてしまったのである。

しかし、それで勢いが衰えた。凶刃が、俺を捉えることは無かった。


瞬時に距離を取った俺は使い物にならなくなった警棒を相手にフルスイングで投げつける。


「お土産だ!くれてやる!」


ある程度の速さで投げつけられたはずの警棒を軽々しく回避した"奴"は再び鋭い踏み込みを見せた。


しかし、想定内だ。


やつが間合いに入った刹那。


轟音と共に血飛沫が舞った。


「な......に......?」


奴は何が起きたか理解できていなかった。

そう、気がついた時には、俺のGlockから放たれた凶弾が、奴の脇腹を抉っていたのだから。


「お......まえ......な......何をした?」


途切れ途切れの言葉で、奴は俺に問いかける。


「何って?簡単さ、テメェが見えないような速度で早撃ちしただけだよ」


そういって確保しようと、近づいたその時だった。


「ッ.......!?」


なんとなく殺気のようなものを感じた俺が素早くその場から飛び去る。


刹那、オレンジ色の閃光が風切り音と共に高速で飛来し、地面を少し抉った。


それに合わせるように、"奴"がその場から走り去る。


「逃すか!」


俺はGlockの標準を合わせて速射したが、刀と回避を器用に使い分けた"奴"に阻まれ、そのまま"奴“は姿を消した。


「チキショウ......逃がした......」


しかし、おそらくは実行役であろう"奴"が負傷したんだ。一応は撃退成功。恐らく当分は大丈夫......と、思いたいのだが、後ろから飛んできた狙撃が気掛かりだ。


「あの狙撃を見た感じ、初心者だ。殺気を隠しきれていないし、さっきのは命中していても致命傷からは外れていた。どうかすると擦りだった可能性もある......避ける必要無かったな、あれ」


とは言え、念のためだ。

俺はスマホを取り出して、百合香さんと翔兄さんに電話を掛けた。


「あっもしもしーーーーーーーーーーーーー


あとがき

みなさんこんばんわReitoです。投稿が遅れ気味で申し訳ありません!今回は今作初の戦闘シーン!宵月こと長月君の早撃ち技術を描きました。

そして次回予告〜

宵月こと長月が謎の人間と戦闘を繰り広げている間。もう一つの舞台も動きます。moon night3期生初の企業案件、果たして成功なるか!?

次回〜もう一つの戦場〜乞うご期待!

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