波乱の企業案件編

part4〜それが私の夢だから〜


「ふぅ、ここがVIPルームかぁ」


宵月さんに案内されて、私達は取材兼宿泊予定のVIPルームに訪れて、機材のセッティングを行っていた。


「すいません。私の仕事なのに手伝ってもらってしまって......」


「いいんですよ......ディレクターさん達には私達お世話になってますし......」


申し訳なさそうに頭を下げる宵月さんに宮坂さんは微笑みながら言った。

すると、宵月さんのスマホが音を立てて鳴る。

宵月さんは慌ててスマホを取ると、何度かうなづきながら、話を聞いていた。


「一ノ瀬Dからみたいね......機材のセッティングも終わったし、私達は少し休憩しましょう......」


「そうですね......」


宵月さんが慌ただしく部屋を出たため、それを見送った私達は、同じくmoon night3期生のタレントと一緒に談笑していた。


「そういえば、改めて思えば紅月ちゃんとかとあんまり話してなかったね!」


岩崎さんがそう言ったのが話の始まりだった。


「そういえばそうね、改めてよろしく!紅月ちゃん!」


「は......はい、よろしく.....お願いします.....」


やっぱり人と話すのは慣れないな

やはり、過去をフラッシュバックしてしまうのだろう。なんとかしようと考えてみても、なかなかトラウマというのは人の心から離れない。


「紅月ちゃんって確かまだ高校一年だっけ?」


岩崎さんに痛いところをつかれ私は少しピクリと震えた。

「学校」

あの場所は、地獄だ。

それを察してくれたのか、宮坂さんが話題を変えた。


「紅月ちゃんまだ若いでしょ?何か夢とかあるの?」


夢......?

私は夢なんて、考えたこともなかった。

全てが妹優先。全てが、私を除く家族優先で、そのために奴隷のように使われた私には、夢なんて考える暇は無かった。


「夢......ない.......です」


「そう?私はちょっと大きめの夢があるんだぁ」


「え?なに?宮坂ちゃんの夢?聞きたい!」


私が夢はない、そう伝えると、微笑みながら宮坂さんはそう言った。

それに乗っかり、岩崎さんも楽しそうに問いかける。


「私の夢はねぇ〜"Vtuberで最高の歌姫になる"ことかなぁ」




「歌姫!?いいじゃん!面白そう!」


宮坂さんのその夢を聞いて、岩崎さんは飛び跳ねるようにして声を上げた。

 

「ほら、祈里、落ち着いて?」


それを宮坂さんがそっと宥める。


「私元々は、歌手になるのが夢だったんだ......だけどね.......オーディションに落ちちゃって、だから、このVtuberの世界で!最高の歌姫になるって決めたんだ!それが私の"夢"だから」


私はその時、ハッとした。

なぜこの時まで気づかなかったのだろうか?この人達がmoon nightの中でも人気を博している、その理由に......

目標を持っているから

それが理由ではないか?

目標を決め、それに向かってひた走る姿に、ファンのみんなは胸を打たれたのではないか?果たして、自分にその姿はあっただろうか?


無かった


そんな姿を見せたことはなかった。

私も何か、夢を見つけたい。

どうすれば見つかるのだろうか?


「紅月ちゃん?どうかした?」


「ひゃい!?いえ......なんもないです」


いきなり岩崎さんに声をかけられ、変な声をあげてしまった。

夢は自分で見つけるものだし、ここは離さないでおこう。

いつか私の夢は見つかるのだろうか?


ただ、目標は出来た。

これからの活動の目標は......


「夢を、みつけること」


あとがき

皆さんこんにちは!Reitoさんです!今回投稿がおくれて誠に申し訳ございません!いやぁ〜やはり学生は忙しいですね......なかなか執筆の時間が取れません。今回は緋色が目標を見つけるのと、姫奈が夢を暴露するシーンがありましたね!この先のストーリー、それが大きく関わる事件が起きる!?乞うご期待!


次回

〜降りかかる不穏〜

ではまたみなさん次回お会いしましょう!

good-by!

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