Pixie・Reborn
蓮司
1日目
「残念ですが、あなたは妖精になってしまいました。」
「…………………はい?」
急に医者に告げられた妖精宣告。
なんだそりゃ!!
陽性じゃなくて!?
え、ふざえてる?何言ってんの?この医者。
………いや、めっちゃ真顔。からの曇りなき眼。
やめろ!そんな目で見るな!俺が悪かった!疑って悪かったよ!!そんな綺麗な目で俺を見るな!疲れた体が眩しい視線を浴びて震えてるぅー!
あー、ガタガタガタガタガタガタガタ。(震度2)
―――その時。
【パァァァァァァァァキラキラァ】
「………ん!?」
なんか空から人が降りてきたんだが。
「妖精になった貴方をお迎えにあがりました。」
え!?竹取物語かな!?なに、妖精ってそんなに偉いの?でへへっ!(照)
…じゃなくて!何この状況!?俺どこに連れていかれんの!?
「さぁ、妖精になったのならば一緒に天へ行きましょう。」
「え、なんで?(純粋な疑問)」
「妖精界のルールなどをお勉強しなくてはいけないのです。空の飛び方なんて分からないでしょう?」
そう言いながらそいつは俺の背中を指差す。
そこには小さい綺麗な白い羽が。
「なぁぁぁぁぁんじゃこりぇゃぁぁぁぁぃ!?」
「羽です。」
「分かっとるわぁい!!」
「まぁ、その羽は形だけなので飛べはしないんですけどね。」
「なんなんだよっっ!!」
「さ、もう人間ではないのですから妖精として一緒に天でお勉強しましょう。」
「え、急すぎない?俺、まだやり残したことが…」
「友達は少なく彼女なんていない、貯金も底を尽きている貴方が生きていて良いことなんてないでしょう?(間2秒)」
「ちょぉぉっと言い過ぎじゃなぁい!?」
「天では妖精の友達ができるかもしれませんよ?
妖精となる素質が認められた逸材ばかりですので、とても可愛い彼女だって…」
「よし。行こう。今すぐ行こう!」
まんまと話に乗せられた俺は今の生活を全て捨ててキラキラプリティ妖精ちゃんになることを決めた。
「ん、でも天なんてどうやって行くんだ?」
「階段です。」
「阿呆か!何年かかるんだよ!」
「では、エスカレーターを。」
「んんんん、このエスカレーター遅すぎない!!?歩いた方が早いんだけど!?」
「では、エレベーターを。」
「ねぇ、最初から出してくんなぁい!?」
こいつの相手、相当疲れるぞ。
体力を総動員してツッコミをさせおる。
むむ!こいつ……ニヤニヤしてやがるっっ!!
むかつくーー!!
―――――ズンチャカランタンポヨヨンゴス♪
「………………え、エレベーターの音キモくね?」
「さぁ着きましたよ。降りてください。」
「え、無視?」
「…ここが今日から貴方の学校です。」
「ん、ぴく、り…ぼん?う、英語が読めねぇ!」
校門らしいものに英語で何か書いてあるが俺は英語が読めない。
多分この学校の名前だろう。
しばらく歩くと校舎が見えてきた。
三階建ての校舎だが、サイズがとても大きい。
全ての物体が俺の2倍はある。
まるで子供に戻ったような感覚だ。
そして地面はもふもふしていて…。
…ん?もふもふ!?
「この学校周辺は子供たちが転んでも痛くないように雲を敷いております。」
そうか。俺は立派な成人済み男性だけど、ここでは子供扱いなんだな。
まぁそうだよな。俺は妖精になってからまだ1時間も経っていない。
つまり俺は今、妖精の赤ちゃんなんだ。
今から輝かしい人生、いや妖生を歩むんだ!
輝かしい未来に元気な産声だってあげちゃうんだぜ!
「ぅぅ、……うぉぎゃぁぁぁぁ!」
「静かに。」
「あ、はい。」
「ここでは、一人一人にあだ名という名のコードネームが付けられます。」
「えぇ〜だっせいのは嫌だぜ?」
「大丈夫です。3つの選択肢から選んでください。」
「おっ!選べんの!?俺、"たっちゃん"とか女の子に呼ばれてみたかったんだよなぁ。甲子園に連れてって〜みたいな!?」
「はい、この中から選んでください。」
・トールキャラメルスチーマーウィズホワイトモカシロップウィズエクストラホイップクリーム
・激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム
・ふかふか
「………は?」
絶望的ネーミングセンスだ。
終わっている。この中から選べと!?
なんだこいつ、真面目な顔してとんでもねぇ選択肢を出てきやがった。
「なんだこれ!ふざけてんのか!?」
「いいえ、大真面目です。我が校の校長先生がこの選択肢を作ったのです。従わなければ校長先生が大泣きしてしまいます。」
くそっ。どんな校長だよ!
こいつらは俺にキラキラな青春を送らせる気はないらしい。
しょうがない。
消去法で一番マシなのを選んでおくか。
「………………ふかふかで。」
「はぁい!かしこまりぃ〜♪」
物凄く嬉しそうだ。腹立つ。
「だが!!!!"ふ"を取って欲しい!!」
「……"かか"ということですか?」
「あ、一つだけ取ってくれ。」
「……かふか、ですか?」
「あぁ。それならなんかカッコイイ気がする。」
「小癪な抵抗ですね。」
「しょうがないだろ。他が論外なんだよ。」
「校長先生に許可をいただけたら良いですよ。」
「よし!!!!!(全力のガッツポーズ)」
後日知ったが、校長は事情説明後、2秒で「いいよ〜」と返事をしたらしい。
意外とちょろい。
だが、校長がカタカナの方がかっこいい!と駄々を捏ねて俺のコードネームは「カフカ」になった。
なんだこいつ。厨二病かよ。(特大ブーメラン)
「そして、一人一人に超能力が与えられます。」
「うぉぉぉぉ!超能力!?きたー!そうそう!そういうのを待ってたんだよー!あ、でもどうせあれだろ?変なのしかないんだろ?」
「あなたの超能力は『オーバーロード』。」
「……え。めっちゃかっこよくね?強そう!
ちなみにどんなことが出来るんだ?」
「触った電子機器を全て壊すことができます。」
「最っっっっ悪じゃん。」
「立派な超能力ですよ?」
「ニヤケながら言うな。どうすんだよ!電子レンジも使えねーじゃんか!」
「ここでは学生寮にある食堂を使っていただくので電子レンジは必要ありませんよ?」
「だとしてもじゃんーー?」
「これは校長がランダムで…」
「またあいつかよ。」
なんだランダムって。適当かよ。
酒飲みながら決めたんか。
くそー、俺はハズレ超能力ってことかぁ…。
俺はがっくり項垂れた。
――「とりあえずもう夜ですから、今日は学生寮を案内して終わりです。明日からは授業が始まりますので時間に遅れないように。」
なんやかんやあってもう日が沈んでいるな。
そういえばここは人間界より少し時間の流れが早い気がする。
2倍くらいのスピードで時間が経っている気がするがここにはどこにも時計がない。
現実を忘れさせるためか、それとも他に理由があるのか。
どうでもいいが、こんなふざけた所から早く出られるならそれに超したことはない。
「ここが、カフカさんの部屋です。」
案内されたところはまだ電気はついておらず、ヒンヤリして、しーんと静まり返っている。
今日はいろいろあって疲れたのでさっさと寝てしまおう。
俺は環境が変わると疲れるのだ。
無理をして体調を崩す前に寝てしまいたい。
電気をパチッとつけると……そこには人影が。
「あ。」
「うぉぉぉぉぉ!!?誰だ!!」
「その方はコードネーム、マグナス。貴方のルームメイトです。」
「ルームメイト!?てっきり一人部屋かと…」
「いえ、2人部屋です。残念。」
「なんだ残念って!?ま、いっか。もう俺は寝るから自己紹介はまた明日。」
「あ、マグナスです。よろしくお願いします。」
「ねぇ、話聞いてた?あ〜、カフカです。よろしく。」
「俺の超能力は…」
「分かった!分かった!!俺もう眠いの!寝させてくれ〜!!」
「あ、うん、分かった。ごめんなさい。どうせ俺の話なんて…」
一人でぶつぶつと呟き始めた。ちょっと怖い。
大丈夫かな。このルームメイト。
だが俺は眠気が頂点に達している。
今すぐ寝ないと寝ぼけて何を言い出すか分からない。
サッとベッドにスライデングダイブして眠りにつく。
目を閉じると3秒で就寝。
スヤァァァァァ。
【バキッべキッドカッズンチャッ】
なんの音か考えたくないな。
そういえばあいつの超能力、聞いてなかったな…。
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