(仮題)17歳。貰って失くしてまた貰う。

のぼりふじ

第1話 マリーゴールド

俺、君犂藜はその日、全てを失った。


まさかあんなことが起きるだなんて…


「れ~い~早く帰ろうぜ~」


「あと持っていくだけだから、もう少し待ってくれ」


「いそげよ~」


友人、小倉海音の要望通り早歩きで担任のもとへ日誌を届ける。


「…不備はなし、と。終わりだ君犂。気をつけて帰れよ」


「はい、ありがとうございました」


そう言って海音の待つ校門へ駆け出した。


…海音のそばに一人いるが気にしないでおこう。


「待たせてすまん」


「いいっていいって。あ、そだ。梅雨も来るけどいいよな?」


「ん?ああ。大丈夫だぞ」


「今日はお邪魔させてもらいます」


「…邪魔すんなら帰ってくれ」


「分かりました…ってなんでやねん!」


「ナイスノリツッコミ!」


「藜はほんとそれ好きだよな」


「あたりめぇよ!」


「私と会うたびにこれって...ふふっ」


と、いつもの新喜劇のノリをしながらも友人とのカラオケを楽しんだ。


数時間後、すっかり日も落ち、梅雨の門限が迫っていたこともあり、お開きとなっ

た。


「あ゛~喉いてえ…騒ぎ過ぎたかもなぁ」


そう言いながら家路についた。


すると家の方から点滅する赤い光と穏やかな明かりと共に騒々しい声と嫌なにおいが

する。


先ほどバイクに乗った暴走族が横を通過したため、また近くで暴走族が暴れて…なんて考えていると電話が鳴った。


家賃の納入以外では何の音沙汰もない人だ。


家賃は昨日収めたから違う…じゃあなんだ?と思いつつ電話に出る。


「大家さん?何事で「ききき、きみすきくん!いまどこに?!」…家の近くですけ

ど…」


と言いながら最後の曲がり角を曲がった。


家を目視したところで大家さんと声が被った。


「「…家がもえてる」」

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