第30話 2度目の会談
「今日の夜、昨日の場所でよろしくね」
「了解です」
俺たちは最後にこんな会話をしてから壇上から降りる。これは秘密の会談だから、誰にも言うな。とハンドサインで言われた。
ハンドサインって遠くの人に伝えるのに楽でしょ?だからある程度の基礎がある人なら戦闘時のサインなんかも見抜ける人いるし意外と秘密にするには向いてなかったりもする。
今お昼。ここから何して過ごそう。挨拶は子供だから王族だけしかしてないし暇。
ルカさん社交に戻っちゃったし、誰か話せる人いないかな?今度は男の子がいい。もう女は懲り懲りだ。こんな感じで人を探していたら声をかけられた。
「ねえ、君アルフくんだよね」
俺は声をかけた人物を見て目を疑った。
「殿下、お初にお目にかかります。アルフ・グラートです」
「そんな堅苦しくしなくていいよ。同い年なんだから」
「お気遣いありがとうございます」
「いいよ。じゃあ、裏庭に出ようか?」
「はい」
俺たちはほとんど人の来ることのない裏庭に移動した。ここなら誰にも話を聞かれないね。と言っていた。
「ところで殿下、お話とは?」
「竜馬でいい?」
ルカさん、説教時間倍ね。
「人前でなければ」
「そう、じゃ、竜馬って呼ばせてもらうよ。そのかわり私のこともルディって呼んでくれ」
「流石にそれは」
「じゃあ、ルディ殿下でいいから名前で呼んで」
「それならまだ」
「俺たちは名前で呼び合う仲だから友達な」
「友達、ですか?」
「そう、君演奏し終わった後ひどい仕打ち受けてない?周りの反応悪かったでしょ?すごい悪口言われてた」
「知らなかったです。俺はお披露目の時からですから気にしなくて大丈夫ですよ」
「やっぱり、お披露目の時のは本人だったんだね。一部の噂だけど、あの時は本人じゃなかったんじゃないかって言われてたんだよ。で、魔力の質が変わった理由は?これだけは答えて」
「失われた魔道具、古代魔道具を使っているからです。この左耳のピアスがそうです。ルカさんがくれました。誰も使う人がいないからって」
「そうゆうことだったんだね。楽器の演奏の仕方から見ると同一人物なんだけど魔力が全くの別物だったから」
「俺の魔力怖くないんですか?」
「フツーに考えて怖かったら声かけられない」
俺はこの言葉を聞いて安心した。誰かにこの魔力が怖くないと言ってもらうたびに心が救われる気がする。
こんな俺にも優しくしてくれる人がいるのは嬉しかった。殿下や陛下の場合はルカさんから話を聞いてこの国から出したくないだけかも知れないけど。
「学園、同じところ行けるといいな」
「そうですね、俺が頑張んないと同じところには行けないので俺、頑張って勉強しますね」
「俺よりも頭が良さそうなやつに頑張るとか言われたくない」
「殿下の方が頭がいいので安心してください」
「私は実技が好きだな。そこそこ強いから覚悟してろよ」
「はい、俺も毎日鍛錬を怠らずに頑張りますね」
「そうしてくれ」
子供相手に負けてるようじゃ魔王領なんてとてもでもいけないと思うがな。多分この話も王国が知ってるだろう。
俺はこの後パーティーの最後まで殿下と話して終わった。殿下は意外と面白いお方だったな〜
そして今度は陛下との会談
「こんばんは」
「おう、よくきたな」
「で、今日はなんのようで?」
「新たな情報はないかと聞きにきた。ありますよ勿論」
俺はそう言って紙の束と魔道具を取り出す。朝から酔ってましたもんねえ。途中から寝てましたし。そう思いながら順番に音を流していく。
「今日もご苦労じゃった。で渡した魔道具だがあれは魔力量を増やす魔道具だ。其方があんなにやすっちい物を依頼したおかげで金が余っておっての。これを渡しても褒美代の半分くらいなのだが他にはいらんのかね」
「今度魔王領にいくことになってるのは知ってますか?俺もそれに参加するのでなるべく武器が欲しいところだったんです」
「そう言うことだったのか。最近武器が やけに売れておると思ったが竜馬くんの仕業であったか」
「俺だけじゃないと思います」
こんな話をしながら情報交換をしていれば時刻はもう真夜中
「時間が時間ですのでそろそろ失礼します」
「明日は息子の訓練に付き合って おくれ」
「はい、俺も楽しませてもらいます」
「やけに素直じゃな」
「あはは」
苦笑いを浮かべ俺は会談室を後にした。
「なぜ勝てぬのだ」
今、パーティーの最中なはずなのに俺と殿下は訓練場にいた。パーティーの最中なのに、心の中ではエンジョイしてるけど。
ルディ殿下は息を乱しているが、俺は汗一つかいていない。その理由は俺が最小限の動きで殿下の剣をかわしているから。俺が反撃する前に試合が終わってしまう。
そんな殿下に俺から特別アドバイス!
「ルディ殿下は剣を振る時に無駄な動きが多いです。その為相手に動きを予測されてしまうのです。それに注意してもう一度やってみましょう」
「わかった」
おおう、だいぶ良くなったね。この動きなら俺もちょっと疲れちゃいそうだ。剣を振る時に大きく振りかぶる人が多いが、連続で攻撃するときはなるべく小さな動きで早く動かすのがいい。そうすると相手に次の行動を予測されずに済むからだ。実際にこれは対人戦だけでなく魔物との戦闘でも役に立っている。
殿下は飲み込みが早いから、いろんなことをすぐに覚えてしまう。これだけ飲み込みが早ければ教える方も楽しいってわけ、
「今のはどうだった?」
「さっきより良くなりました。今度はスッテプで動きを予測されないように気をつけてくださいね。それと後一戦やったら休憩するのはどうでしょう?」
「いい考えだ。この試合が終わったら一緒にお茶でもしようじゃないか」
「はい、そうしましょう」
俺は一戦交えた後お茶の準備を始めた。今日持ってきてるのはハーブティーとクッキーだけだったが休憩にはなるだろう。
「殿下もしよければこのまま食べませんか?」
俺は地面にレジャーシートなる布を広げ、ハーブティーやクッキーを出した。
「たまにはそうゆうのもいいかも知れぬ」
「そうですね。こうしていると気が楽になります」
俺はハーブティーを入れ終わると殿下に差し出し、クッキーを一枚手に取ってハーブティーを一口飲んで見せた。これは毒味、自分も同じのを飲んでいるので大丈夫だという示し方だ。これは基本的なマナーだから早く覚えろと言われたっけ?
「お、このクッキーうまいな」
「確かクッキーにチョコレートを混ぜて焼いたものだったと思います。最近いろんなのを作ってたのでわかんなくなってしまいました。俺が食べたのは普通のでしたから」
「いろんな味を焼いたんだな」
「うん、いろんなの焼いた。肉も焼いた」
「今肉の話はしてないな」
「そうですね」
そう言って俺と殿下は笑った。2人で話しているのはとても楽しい。この前の件でも今回の件でも周りからいい評価を受けられなかったみたいだから同学年の子と仲良くなれて俺は嬉しかった。殿下も立場上信頼できる人の前にしか出してもらえないので友達はいないんだとか。婚約を迫られることはあるらしいけど。俺もあったわ!
俺はそれに対してこう答えた。
「俺たちによってくる理由が地位、金が欲しいだもんね。怖くて近づこうと思えなくなる。お陰で女性恐怖症だ」
「それはそうだ。たまに醜くない奴がいるがそれもごく一部だ。でも、身分が上がるとそうゆうのは少ない。婚約の座の奪い合いはすごいが」
「結局貴族は大変ってことですね」
「じゃ、もうそろそろ休憩終わりにして模擬戦やろう。先生」
「せ、先生?」
「先生じゃなくて師匠が良かった?」
「どっちも遠慮したいですね」
「どっちかで言わせてもらうよ」
俺たちはまた模擬戦を開始した。ルディ殿下はだいぶ動きが早くなり、狙いもいい意味で正確になっている。問題は、スッテプ踏むと次の行動が予測されてしまうところ。スッテップ踏んでても剣は素早く動かせたらいいのに、バックステップ踏んだ後の胴がガラ空き。
次ステップ踏んだらお腹に手刀でも入れてやろうか?
バックステップ踏んだな〜そして胴がガラ空きになった。俺はそこに急接近し、手刀を入れる。
「っ……」
「バックステップ踏んだ後の胴がガラ空きだよ」
「うぅ、頑張ります」
〈1時間後〉
「上手にできてるよ。そろそろ休憩にしよっか。水分補給も含めて」
「これ終わったら、アクロバット対決しよう」
「アクロバット対決?」
「バク転とかスワンとか捻りとかそれをやるためのところを俺のために作ってもらったんだ」
「やりたいです」
「やろうね」
俺たちは休憩が終わり、模擬戦の片づけをしたらアクロバット対決?をしに行った。
そこにはいろんなものが置かれていた。アクロバット対決って体操のことか。何かと思って身構えていた。
「じゃあ、アップして準備できたら言ってね」
「うん」
俺は軽く準備をする為にフロアに上がった。単発の前宙や宙返りをやって硬さを確かめる。これなら大丈夫そうだ。
「「準備できた」」
声は持ったな。では始めだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます